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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2018.1.23

2018年1月23日    担当:佐藤

Development and validation of a Hospital Frailty Risk Score focusing on older people in acute care settings using electronic hospital records an observational study
~ 電子カルテを使用した急性期医療の高齢者を対象としたフレイルリスクスコアの開発と検証-観察研究 ~
出典: Lancet 2018; 391: 1775 82
著者: Thomas Gilbert*, Jenny Neuburger*, Joshua Kraindler*, Eilis Keeble, Paul Smith, Cono Ariti, Sandeepa Arora, Andrew Street, Stuart Parker, Helen C Roberts, Martin Bardsley, Simon Conroy
<論文の要約>
【背景】
高齢者の医療機関の受診は世界的にみても増加している。フレイルの高齢者や不良な転帰となる高齢者を、日常診療で集積しているデータから同定できるか確立することを目的とした。

【方法】
ICD-10を基にしたHospital Frailty Risk Score の開発と検証のために3段階のアプローチを実施した。1つ目は、75歳以上で高度医療を受けており、フレイルに関連する診断を受けている入院患者のグループをクラスター分析から同定した。2つ目は、前述のグループを特徴づけるICD-10を基にしてHospital Frailty Risk Scoreを開発した。3つ目は、別のコホート集団で、このスコアが有害な転帰をどの程度予期できるのか、また他のフレイルツールと同様に類似したグループを同定できるかを検証した。

【結果】
スコア開発用のコホート集団から(n=22139)、フレイルの診断を受けた高齢者は区別できる集団を形成し、非選択的入院が高値であった(次点のグループ<2年間で23.0日入院>と比較して33.6日入院)。検証用の全国コホート(n=1013590)において、低リスクスコアの患者429762名(42.4%)と比較して、高リスクスコアの患者202718名(20.0%)は、30日死亡率(オッズ比 1.71、95% CI 1.68-1.75)、長期入院(6.03, 5.92-6.10)、30日以内の再入院(1.48, 1.46-1.50)のオッズ比が高かった。これら3項目の個体間のc統計量(例:model discrimination)は、0.60、0.68、0.56であった。Hospital Frailty Risk Scoreは二値FriedスケールおよびRockwood Frailty Indexと中程度の一致を示した(κスコア 0.22, 95% CI 0.15-0.30, と0.30, 0.22-0.38)。またRockwood Frailty Indexとは中程度の一致を示した(Pearsonの相関係数 0.41 0.38-0.47)。

【解釈】
Hospital Frailty Risk Scoreは、フレイルのスクリーニングおよび予後不良リスクのある患者群とフレイルに対するアプローチが有益な患者の同定に対し、低コストで体系的な方法を病院と医療機関に提供する。

【資金調達:国立衛生研究所】



<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■本研究では、スコア開発用コホートの対象者としてSouthampton、LeicesterまたはNottinghamに住む者をランダムに採用しているが、地域特性(例:Leicesterは多民族都市となっており、人口の36.1%をエスニック・マイノリティが占め、その中で約30%はインド人になる)に関しては、記載がなく一般化可能性についての明記があると良いのではないか。
    ■Hospital Frailty Risk Scoreのスコアのつけ方は、appendixに記載されていたが、概要だけでも本文中に明記されていても良いのではないか。また、ICD-10のコード別に一定の点数が付与されているが、点数の付与の基準が明確になると良いのではないかと考える。
    ■本研究では、Hospital Frailty Risk ScoreはICD-10のコードすなわち診断名に依存するものであるが、同一疾患患者でも投薬や治療法が異なることがあるため、その点には留意する必要があると考える。


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