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社会医学講座 | 山梨大学医学部

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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2019.2.20

2019年2月20日    担当:池谷

Paternal Depression Symptoms During Pregnancy and After Childbirth Among Participants in the Growing Up in New Zealand Study
~ ニュージーランドの成長調査における妊娠中および産後の父親のうつ症状 ~
出典: JAMA Psychiatry 2017;74(4):360-369
著者: Lisa Underwood,karen E.Waldie,Elizabeth Peterson,et al
<論文の要約>
【重要性】
出産前および産後のうつは一般的であり、女性とその子どもたちの予後不良に関連することが知られている。しかし、周産期の男性でうつ病の症状に関するエビデンスはほとんどない。

【目的】
パートナーが妊娠し、その後出産した男性のうつ症状に関連する特徴を特定すること。

【デザイン、セッティング、参加者】
縦断コホート研究は、パートナーが妊娠中および子どもが産後9ヵ月時に面接を受けた3,523人のニュージーランドの男性の人口統計学的に多様なサンプルからデータが提供された。参加者は、パートナーが2009年4月25日から2010年3月25日までの間に妊娠している女性で、ニュージーランドの成長調査に登録されていたコホートから抽出された。データ分析は2015年9月1日から2016年1月8日まで実施された。

【主要アウトカム、測定】
うつ病の症状はエジンバラ産後うつ病自己評価票(Edinburgh Postnatal Depression Scale)と、9項目患者健康調査票(9-item Patient Health Questionnaire)を用いて測定された。うつ症状は、それぞれ12点と9点よりも高いスコアとして定義された。

【結果】
出生前の面接での参加者の平均年齢(SD)は33.20(6.25)歳(範囲:16-63歳)であった。出生前の父親のうつ症状は82人の父親(2.3%)に見られ、自覚的ストレス(オッズ比[OR]:1.38,95%信頼区間[95%CI]:1.30-1.47)、パートナーの妊娠中の不健康状態(OR:2.06,95%CI:1.18-3.61)と関連があった。産後の父親のうつ症状は153人の父親(4.3%)に見られ、妊娠中の自覚的ストレス(OR:1.12,95%CI:1.08-1.17)、産後9ヵ月時点で母親との関係がない(OR:6.36,95%CI:2.28-17.78)、産後9ヵ月時点での不健康状態(OR:3.29,95%CI:2.10-5.16)、産後9ヵ月時点で失業状態(OR:1.86,95%CI:1.11-3.10)、うつ病の既往(OR:2.84,95%CI:1.69-4.78)と関連があった。

【結論と適用可能性】
妊娠中の父親は、ストレスを感じたり、不健康である場合、うつ病のリスクがある。うつ症状の悪化の割合は産後の期間でより高く、そして不利な社会的・人間関係要因と関連していた。うつ病の症状のリスクが最も高い父親と、介入(出産前または産後)のターゲットにするのに最も良い時期を特定することは、男性と彼らの家族に有益であるかもしれない。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■追跡調査は産後9ヵ月で実施されているが、なぜ9ヵ月時点で調査したかの理由は明記されていない。ニュージーランドの母子保健体制を理解することで分かることかもしれないが、理由が記載されていると海外の読者にもより分かりやすかったのではないかと考える。
    ■うつ病とアルコール消費に関しては因果関係を示唆するエビデンスが報告されているが、本研究の結果では子どもの父親が妊娠中または産後に飲酒を止めたか減らした場合、出生前のうつ症状オッズ比の方が、産後うつ症状のオッズ比より大きかった。この結果は非常に興味深い結果であり、様々な要因があると考えられるが、この点の考察について、筆者の考えを知りたいと思った。
    ■表1(各変数とPADSおよびPPDSに関する単変量と多変量の解析結果)には、統計解析の結果は記載されているが、対象者の各変数の内訳(n数と割合)の記載がない。各変数におけるカテゴリーの対象者の分布を確認することは重要であると考えられることから、n数と割合の記載もあった方が、より本研究結果への理解が深まるのではないかと考える。


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