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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2019.2.27

2019年2月27日    担当:山口

Low bone mineral density in elite female athlete with a history of secondary amenorrhea in their teens
~ 10代での続発性無月経歴があるエリート女性アスリートの低い骨密度 ~
出典: Clinical Journal of Sports Medicine.2018;0:1-6
著者: Sayaka Nose-Ogura, Osamu Yoshino, Michiko Dohi, Mika Kigawa, Miyuki Harada, Takeshi Kawahara, Yutaka Osuga, Shigeru Saito
<論文の要約>
【目的】
10代の間の続発性無月経が、20代の女性アスリートの骨密度(BMD)に影響を及ぼすかどうかを判断すること。

【デザイン】
独自の研究

【設定】
国立スポーツ科学センター

【対象者】
20歳以上のエリート女性アスリート210人

【主要評価項目】
対象者の過去(10代)及び現在の月経周期。トレーニング時間、疲労骨折の病歴、及び受けたホルモンの血液検査に関する情報。腰椎の骨密度は二重エネルギーX線吸収法(DXA法)で評価した。低BMDはZスコア≦-1と定義し、単変量および多変量ロジスティック回帰分析により、20代のアスリートにおける低BMDへの関連要因を調べた。

【結果】
合計39名(18.6%)の女性アスリートが低BMDを有していた。10代での続発性無月経[オッズ比(OR), 7.11, 95%信頼区間(CI), 2.38-21.24; P <0.001]と現在のボディマスインデックス(BMI) (OR, 0.56, 95% CI, 0.42-0.73; P <0.001)が、多変量ロジスティック回帰分析における低BMDの独立した関連要因であった。10代および20代で続発性無月経のあった人、20代のみに続発性無月経があった人、定期的な月経のある人の平均Zスコアはそれぞれ-1.56±1.00、-0.45±1.21および0.82±1.11であった。

【結論】
女性アスリートにおける10代時での少なくとも1年間の続発性無月経および現在のBMIは、20代における低BMDと強く関連していた。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■女性トップアスリートを対象に行った10代の続発性無月経とBMDとの関連についての研究であり、意義深いが、競技成績との関連についての検討があればさらに論文の価値が上がると考えられる。確かに、競技成績をどのような指標を用いるのかなど難しい点はある。しかしながら、続発性無月経のアスリート群よりも正常な月経周期のアスリート群の方が、競技成績が有意に優れているとなれば、指導者やアスリートに対して説得力のある示唆となる。一方、逆の結果が出た場合には、治療や指導の方法をさらに検討する必要が生じるであろう。
    ■BMDに影響を与えているのは、遺伝や負荷(体重)、エストロゲンなどであるが、カルシウムやビタミンDの摂取といった栄養摂取も含まれる。したがって本研究においても栄養状態についての調査および解析上の調整が必要と考えられ、今後の課題であろう。
    ■対象者の競技、種目の人数に偏りが見られた。論文の研究の限界においても一部記述があったが、衝撃性スポーツと非衝撃性スポーツに分けて評価を行うことができなかった。また、柔道やレスリングなど体重制がある競技が含まれていなかった。日本のトップアスリートがトレーニングを行う国立スポーツ科学センターで実施された調査であることを考えれば、対象者を広げることも可能であったように思われる。
    ■多変量ロジスティック回帰分析において、説明変数として何を投入したのかという記述が明記されていなかった。方法もしくは表において、詳しい記述されるべきである。


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