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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2019.3.20

2019年3月20日    担当:小林

Plasma tea catechins and risk of cardiovascular disease in middle-aged Japanese subjects: The JPHC study
~ 中年日本人被験者における血漿茶カテキンと心血管疾患のリスク:JPHC研究 ~
出典: 出典:Atherosclerosis 277 (2018) 90 97
著者: Ai Ikeda, Hiroyasu Iso, Kazumasa Yamagishi, Motoki Iwasaki, Taiki Yamaji, Tsutomu Miura, Norie Sawada, Manami Inoue, Shoichiro Tsugane, on behalf of the JPHC Study Group
<論文の要約>
【背景と目的】
緑茶を飲むことの潜在的な利点が心血管疾患の発症を減らすために示唆されているが,これまでの研究では血漿茶カテキンと心血管疾患のリスクとの関係が調査されていなかった.

【方法】
前向きネステッドケースコントロール研究を実施し,心疾患・脳卒中・がんの既往がない40069歳の男女29,876人のコホートにおいて血漿茶カテキンと脳卒中および冠動脈性心疾患(CHD)のリスクとの関連性を検討した.参加者の調査は完了しており,1990年から1994年の間に血液サンプルを提供し,2008年まで追跡された.脳卒中については1:1(n=1132)で,CHDについては1:2(n=418)で対照をマッチングさせた.合計1132人の脳卒中症例と209人のCHD症例が解析に含まれた.

【結果】
男性または女性のいずれにおいても,血漿茶カテキンと脳卒中またはCHDの発症率との間に有意な関連性は認められなかった.しかし,血漿中の高レベルのエピガロカテキンガレート(EGCG)が,禁煙男性における脳卒中リスクの低下と関連していることが分かった.検出不能レベルに対する最高レベルのEGCGの調整オッズ比(95%CI)は,0.53(0.29-0.98)であった.男性喫煙者における同比較でのORは1.23(0.7502.16)であった.脳卒中に関連して,検出不能レベルと最高レベルのEGCGにおいて,喫煙状態による有意な相互作用が認められた(相互作用に関するp値:p=0.09).

【結論】
血漿中の茶カテキンは脳卒中またはCHDのリスク低下と関連していなかったが,男性の非喫煙者において脳卒中リスクに対する茶カテキンによる保護効果が示唆された.


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■2004年と2008年の血漿茶カテキンの最小検出測定値に大きな違いがあったが,この違いは結果の信頼性に関わるため,測定差の理由やそれに対する考察について記載があるとよかった.
    ■ベースラインの質問表において緑茶の摂取量をどのように調査したかについては,表2の結果に深くかかわるため,より詳細な記載があると良かった.また,カテキンを含むお茶以外の食品の影響についてももう少し考察があるとよかった.
    ■ネステッドケースコントロール研究が行われており,ベースラインで血液採取を含む調査がされていることから,リコールバイアスのリスクを軽減でき,因果関係が論じやすい.更に,緑茶摂取量に関しては自己申告ではなく,血漿中のカテキン濃度を調査していることは研究の妥当性を向上させている.


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