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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2019.6.19

2019年6月19日    担当:田中

Child mortality in England compared with Sweden: a birth cohort study
~ スウェーデンと比較したイギリスの子どもの死亡率:出生コホート研究 ~
出典: Lancet 2018; 391: 2008–18
著者: Ania Zylbersztejn, Ruth Gilbert, Anders Hjern, Linda Wijlaars, Pia Hardelid
<論文の要約>
【背景】
イギリスにおける乳幼児死亡率はスウェーデンと比較すると2倍高い。不利な出生時の特徴と社会経済的要因がこの違いを説明する程度を明らかにすることを目的とした。

【方法】
2003年1月1日から2012年12月31日までに単胎で出生したコホートをイギリスの診療記録とスウェーデンの出生記録を入院記録と死亡記録とでリンクさせた全国統計を使用した。我々はアウトカムとして日齢2~27、日齢28~364、1~4年の死亡原因を分析した。我々は、3つの年齢層のすべてにおいてスウェーデンと比較したイギリスのハザード比を推定するためにコックス比例ハザード回帰モデルを当てはめた。モデルは、出生特徴(在胎週数、出生体重、性別、先天異常)、社会経済要因(母の年齢と社会経済的地位)で調整した。

【結果】
イギリスのコホートは3,932,886の出生と11,392の死亡、スウェーデンのコホートでは1,013,360の出生と1,927の死亡を含んだ。調整前のイギリスとスウェーデンを比較したハザード比は、日齢2~27が1.66(95%CI:1.53~1.81)、日齢28~364が1.59(95%CI:1.47~1.71)、1~4年が1.27(95%CI:1.15~1.40)であった。日齢2~27におけるイギリスの死亡の過剰リスクは、77%が出生特徴によって、3%は社会経済的要因によって説明された。日齢28~364では68%が出生特徴によって、11%は社会経済的要因によって説明された。1~4年では調整後も両国間で有意差は認められなかった。

【解釈】
スウェーデンと比較したイギリスの過剰な子どもの死亡率は、イギリスにおける出生時の好ましくない特徴が大きく影響していることが示された。社会経済的要因は、不利な出生特徴と生後1ヵ月以降の死亡率上昇との関連性を通じてこれらの違いに寄与した。イギリスでの子どもの死亡率を減少させるための政策は妊娠前と妊娠中の女性の健康を改善し、社会経済的不利益を減少させることによって不利な出生特徴の減少に最も大きな影響を与える可能性がある。

【結果】
5年間の追跡結果の結果、2,430人が死亡(496人はCVDに起因、1,126人は癌に起因)し


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■他国間のデータベースは異なる部分も多く、比較することはなかなか難しいことだと思われる。限界はあるものの、異なる2国の国内データベースを使用し比較した方法は、大変参考になる方法を学ぶことができた。
    ■限界で述べられているが、本研究では民族についての情報がなかった。移民が多い国であり民族によって様々な背景が異なると考えられることから、母親の特徴についても、妊娠前、妊娠中の健康状態が異なるかもしれない。今回は情報がなく不明であるが、民族も考慮した結果を知りたいと思った。
    ■限界で述べられているが、社会経済的指標がイギリスでは地域レベルである一方で、スウェーデンでは収入による個人レベルであり、両国で異なっている。今回の結果では、社会経済的要因と乳幼児死亡率との関連が明らかになった。イギリスでは11%、スウェーデンでは3%が社会経済的要因によって説明されたが、その寄与する意味はもしかしたら少し異なる可能性が考えられる。


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