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山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

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2019年7月17日    担当:岩淵

:Is late-life dependency increasing or not? A comparison of the Cognitive Function and Ageing Studies (CFAS)
~ 介護依存の割合は増加しているか(CFASの比較) ~
出典: Lancet. 2017 Oct 7;390(10103):1676-1684.
著者: Kingston A, Wohland P, Wittenberg R, Robinson L, Brayne C, Matthews FE, Jagger C
<論文の要約>
【背景】
高齢者世代コホートの間で介護度がどう変化したかについては、ほとんどわかっていない。1991年と2011年時点で65歳の高齢者が異なる介護度で生活する年数を推定すること、将来のケアの需要について新しい予測を立てることを目的とした。

【方法】
この住民を対象とした研究では、2つの認知機能と高齢化の研究(CFAS IとCFAS II)において、3つの地域(ケンブリッジシャー、ニューカッスルとノッティンガム;英国)でGPと恒久的に紐づけされた高齢者(65歳以上)を比較した。これらの調査は、20年間隔(1991と2011)で実施された。 GPはコンタクトを取るための対象者リストを提供し、翌月に亡くなった人、もしくは予後1ヶ月以内の人を除外するよう求められた。ベースラインのインタビューは、地域やケアホームで実施された。参加者は年齢で層化され、書面によるインフォームドコンセントが得られた後のみに、インタビューは実施された。収集された情報は、基本的な社会人口統計的変数、認識機能、尿失禁、自己申告による日常生活動作(ADL)を含んだ。CFAS Iを1991年コホート、CFAS IIを2011年コホートとした。そして、両方の調査は4段階の介護度( 高い介護度:24hケアが必要、中程度の介護度:毎日ケアが必要、低い介護度:毎日はケアを必要としない、自立)の有病率の推定を提供した。それぞれの介護度の年数は、サリバンの方法によって計算された。将来的な社会的ケアの需要を推定するために、年代、性別それぞれの介護度の割合は、2014年の英国人口予測に適用された。

【結果】
1991年から2011年の間で、65歳からの生存年数において、低い介護度で過ごした年数の有意な増加がみられた(男性1.7年[95%CI 1.0–2.4]、女性2.4年[1.8–3.1])、そして、高い介護度で過ごした年数の増加がみられた(男性0.9年[0.2–1.7]、女性1.3年[0.5–2.1])。男性の平均余命の伸びた年数のうち、大部分は自立(36.3%)もしくは低い介護度(36.3%)だったのに対し、女性は大部分が低い介護度(58.0%)で、自立はわずか4.8%だった。ケアホームで生活する中程度~高い介護度の高齢者の割合は大幅に低下していたが、もしこれらの介護度とケアホームの割合が将来も変わらないのであれば、更なる人口の高齢化は、2025年までに更に71215人分のケアホームを必要とするだろう。

【考察】
現在、平均して、高齢者は男性で2.4年、女性で3.0年間、かなりの介護を必要としながら過ごす。そして、大部分は地域で生活するだろう。これらの知見は、無償の介護の大部分を提供する高齢者の家族に対する多くの示唆を含む、一方で、政府やケアプロバイダーが将来の高齢人口のケアに必要な資源の計画や資金提供に貴重な新情報も提供する。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■1991年と2011年で、65歳からの平均余命における自立と要介護状態で過ごす年数が男女別で示され、差が見られたが考察では触れられていない。もともと女性の方が平均余命は長く、伸びた年数分の年齢も高いため、加齢に伴う認知機能や身体機能の低下がより強く影響したのではないかと考えるが、筆者らの考えも知りたかった。
    ■2025年までに71,215人分の介護施設の枠が必要であることなど、イギリスの今後の高齢化社会の予測が具体的に数値で示されており、どこに課題があるのが明確に示されているところが良いと考える。また、自国であるイギリスの医療制度や医師教育、高齢者の介護の状況を熟知するのみならず、他国でのナーシングホーム医等の高齢者介護における対策も調べた上で丁寧に考察がされている点も素晴らしく、我々も参考にすべきものと考える。
    ■要介護の各項目について、オッズ比は図で示されているが、該当者の内訳(n数や割合)の記載 本文中にもないため、あるとより分かりやすいと考えられる。


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