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山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2019.9.11

2019年9月11日    担当:大友

Survival time and differences between dementia with Levy bodies and Alzheimer’s disease following diagnosis: A meta-analysis of longitudinal studies.
~ レビー小体型認知症とアルツハイマー病における診断後の生存期間と相違:縦断的研究のメタ解析 ~
出典: Ageing Research Reviews 50(2019)72-80
著者: Christoph Mueller, et, al
<論文の要約>
【目的】
レビー小体型認知症(DLB)とアルツハイマー病(AD)の生存期間を比較している全ての縦断的研究のエビデンスを総括する。

【方法】
臨床的に診断されたDLBとADの生存期間を比較した研究のシステマティックレビューとメタ解析を行った。開始時から2018年5月まで、主要な電子データベースのシステマティックな検索を行い、縦断的コホート研究を特定した。変量効果メタ解析を行い、生存期間と死亡の相対リスクを算出した。

【結果】
全体で認知症患者22,952例を含む研究11件を特定した。患者の内訳は、DLB患者2,029例(平均診断年齢 76.3歳;女性47%)、AD患者20,923例(平均診断年齢 77.2歳;女性65.1%)であった。診断後の平均生存期間はDLBが4.11年(SD±4.10)、ADが5.66(SD±5.32)年で、DLBが1.60(95% Cl:-2.44~-0.77)年短かった(p<0.01)。死亡の相対リスクはDLBがADよりも1.35(95% CI:1.17~1.55)高かった(p<0.01)。生存期間の差は追跡期間、診断時年齢、性別、認知スコアによって説明できなかった。

【結論】
ADに比較してDLBは死亡率が高く、生存期間が短いという一致したエビデンスを認めた。このことは、すべてのステークホルダーに重要であり、研究をDLBまで拡大することの重要性を強調している。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■I2統計量について:  統計学的異質性(Heterogenety)とは、研究ごとの効果のばらつきを統計学的に検討することである。Q統計量、I2統計量を用いる。  帰無仮説は全ての研究で、効果は一定である。  Q統計量(Cochrane’sQ)   Q=ΣWi(個々の研究の効果量-統合された効果量)2   Wi:個々の研究の重み付けで、分散の逆数 Q統計量はカイ2乗分布に従うので、そこからp値を得る。有意であると異質性ありとなる。ただしQ統計量は、研究数やサンプル数の影響を多分に受ける。そこで、I2統計量も併記することが推奨される。   I2={Q-(K-1)}X100/Q ,K-1:自由度(研究数-1) I2の値によって、0~25%:異質性なし、25~50%:中等度、50~75%:強い、75%~: とても強い。(Higgins et al,2003) 本研究はI2=99%と異質性が強いので、サプリメントテーブルに感度分析があるものの、メタ解析をメインに出していいのか疑問が残る。
    ■本論文は診断時からの生存時間を検討している。論文では思い出しバイアスや認知機能のバリエーションがあることから、症状出現時を起点とするよりは良いとして採用している。しかし論文の限界1に記載がある通り、DLBでは診断されるまでに1年以上かかったり、違う診断がつけられていたりする。ただDLB、ADにせよ、症状出現時あるいは確定診断時を起点としてもその後の生存期間には曖昧さが残る。
    ■DLB、ADいずれにせよ、本論文においては、死亡原因が不明である。結論に診断後の病的期間や短い生存期間の要因を検討することがステークホルダーにとって重要と記載があるが、診断後のADと比較した転帰や死因も重要と思われた。


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