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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2019.10.16

2019年10月16日    担当:佐藤

Major causes of death in preterm infants in selected hospitals in Ethiopia (SIP): a prospective, cross-sectional, observational study
~ エチオピア(SIP)の選ばれた病院の早産児の主な死因:前向き、 横断的、観察研究~
出典: Lancet Glob Health 2019; 7: 1130–38
著者: Lulu M Muhe, Elizabeth M McClure, Assaye K Nigussie, Amha Mekasha, Bogale Worku, Alemayehu Worku, Asrat Demtse, Beza Eshetu, Zemene Tigabu, Mahlet A Gizaw, Netsanet Workneh, Abayneh Girma, Mesfin Asefa, Ramon Portales, Tiruzer Bekele, Mesele Bezabih, Gesit Metaferia, Mulatu Gashaw, Bewketu Abebe, Hailu Berta, Addisu Alemu, Tigist Desta, Rahell Hailu, Goitom Gebreyesus, Sara Aynalem, Alemseged L Abdissa, Riccardo Pfister, Zelalem Tazu Bonger, Solomon Gizaw, Tamrat Abebe, Melkamu A Berhane, Yonas Bekuretsion, Sangappa Dhaded, Janna Patterson, Robert L Goldenberg,
<論文の要約>
【背景】
世界的に5歳以下の死亡数の中で新生児死亡が47%を占めている。新生児死亡の1/3以上は早産合併症によるものである。新生児死亡の原因やその因子を理解することは、死亡率減少のための介入を同定するため必要である。そこでエチオピアの産後28日の早産の新生児における死亡の主原因を明らかにすることを目的とした。

【方法】
エチオピアの5か所の病院で前向き研究、横断研究、観察研究を行った。研究参加者はそれらの病院で生まれた早産の新生児で、妊娠期間37週未満である。妊娠期間が信頼できなかった場合や、人工妊娠中絶を試みた結果に誕生した新生児に関しては除外している。データとしては母体歴と産科歴、母体と新生児の医学的な状態、臨床検査が収集された。研究参加者で死亡した新生児に対しては、死後調査(剖検と最小限の侵襲的組織検査)のために両親から同意を得た。

【結果】
2016年7月1日から2018年5月31日までの間、4919人の早産の新生児がこの研究に参加し、3852人がNICUに入った。この内、出生後28日で1109人(29%)が死亡した。441人(40%)の剖検と126人(11%)の最小限の侵襲的組織検査が行われている。1109人の主な死亡原因は、呼吸窮迫症候群(502人 [45%])、敗血症、肺炎、髄膜炎(新生児感染症331人 [30%])、新生児仮死(151人 [14%])であった。低体温症が最も多い早産時の合併死因であった(770人 [69%])。在胎28週までが最も死亡率が高く(104人中89人 [86%])、次いで28週から31週(952人中512人 [54%])、32週から34週(349人中1975人 [18%])、35週から36週(1888人中159人 [8%])であった。

【解釈】
3つの状態(呼吸窮迫症候群、新生児感染症、新生児仮死)が、エチオピアの早産の死亡全体の89%を占める。これらの状態を予防、治療するためには介入を拡大することが必要となる。またこれらの予防、治療には、効果的かつ安価な介入の開発を目的とするさらなる研究が必要である。 【資金調達:ビル&メリンダゲイツ財団】


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■本研究で選択した病院は比較的高次の病院のため、今回の対象者は選択バイアスがかかっており、死亡率を過小評価している可能性がある。そのため、本論文の結果をエチオピア全体に一般化することは難しいのではないか。
    ■今回の早産児の死因分布を先進国の死因分布と比較することで、より問題が浮き彫りになるのではないか。一部の先進国のデータが提示されてはいるものの、より深い考察が必要と思われた。なお日本における新生児死亡の死因は、先天奇形、周産期の特異的な呼吸障害、不慮の事故の順に多い(早産と正期産を含む)。
    ■本研究では、正期産の早産の新生児を対象としており、死産については対象外としている。しかし各国での死産の定義は必ずしも統一されておらず、出生直後の死亡も死産として扱われていることもある。そのため国際的な比較をする際は、母子保健上の指標として提唱された周産期死亡率((妊娠満22週以後の死産数+早期新生児死亡数)÷(出生数+妊娠満22週以後の死産数)×1000)を算出して比較したほうが良いのではないか。


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