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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2019.10.30

2019年10月30日    担当:浦中

Nurse Practitioners, Physician Assistants, and Physicians Are Comparable in Managing the First Five Years of Diabetes
~ 糖尿病の最初の5年間の治療管理において、ナースプラクティショナー、フィジシャンアシスタント、および医師は同等である ~
出典: The American Journal of Medicine.2018 Mar;131(3):276-283.e2.
著者: Yang Y, Long Q, Jackson SL, Rhee MK, Tomolo A, Olson D, Phillips LS.
<論文の要約>
【背景】
米国において糖尿病などの慢性疾患患者のプライマリケア提供者は不足しており、その担い手としてナースプラクティショナー(NP)とフィジシャンアシスタント(PA)に関心が向けられている。NPとPAの活用が、プライマリケア提供者の不足に対する解決策になり得るが、彼らが提供するケアの質は十分に明らかにされていない。本研究の目的は、糖尿病患者のNP、PA、および医師(MD)による治療管理について比較することである

【方法】
研究デザインは、後ろ向きコホート研究である。退役軍人保健局の全国的なデータベースを用い、2008年に新たに糖尿病と診断され、2008年から2012年までの継続的なプライマリケアを受け、その75%以上がNP、PA、MDのいずれかに受診した退役軍人を調査対象とした。NP、PA、またはMDが治療管理する患者の5年間、診断時、初回と2回目の経口薬の開始時、およびインスリン開始時のHbA1cを目的変数とし多変量回帰分析を行った。

【結果】
19,238人の患者のうち、95.3%が男性、77.7%が白人で、平均年齢は68.5歳だった。患者はそれぞれ14.7%がNP、7.1%がPA、および78.2%がMDによって治療管理されていた。多変量回帰分析の結果、MDと比較して、NPおよびPAの患者の初回(7.5%-7.6%)および2回目(8.0%-8.2%)の経口薬の開始時のHbA1c値に有意差はなかった(すべてP > .05)。NPの患者は、MD(9.7%)よりも低いHbA1c値(9.4%)でインスリンを開始していた(P <.05)。

【結論】
退役軍人保健局のNPとPAが、診断時および4年間の治療期間中に糖尿病の治療管理においてMDと同様に実践できることが示唆された。NPとPAの活用する退役軍人保健局モデルは米国のプライマリケア提供者の需要を満たすのに広く有用であるかもしれない。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■プライマリケア提供者の3群の比較を行っているが、診断後と4年後のHbA1c値の差といった患者個人内の経時的な変動も評価した方が良いのではないか。
    ■単変量解析において3群のHbA1c値の中央値を用いて比較分析している。診断時のHbA1c値においてMDの外れ値はNPやPAより高値であるように確認できる。平均値を用いた比較の分析結果も示した方が良い。元々HbA1c値が高かったり、複雑な疾患を持っていたりする患者がMDに割り当てられていた可能性も考えられる。
    ■インスリン導入の際のHbA1c値の基準や糖尿病治療に関するガイドラインについての説明があるとなお良かった。診断後の血糖管理では患者のアドヒアランスも大いに影響するかもしれない。
    ■薬剤の非劣性試験は、薬剤を臨床的に意義があるかの基準を設定して評価するが、薬効のみならず安価であることや、副作用が少ないといったオプションも含めた評価が必要となる。本研究もNPに関するMDとの非劣性試験という点で類似している。


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