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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

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2019年12月11日    担当:須田

Association of Smoking Cessation With Subsequent Risk of Cardiovascular Disease
~ 禁煙と循環器疾患のその後のリスクとの関連 ~
出典: JAMA. 2019;322(7):642-650. doi:10.1001/jama.2019.10298
著者: Meredith S. Duncan, Matthew S. Freiberg, Robert A. Greevy Jr, Suman Kundu, Ramachandran S. Vasan, Hilary A. Tindle
<論文の要約>
【背景】
禁煙後のCVD(循環器疾患)リスクの時間的経過は明らかになっていない。試算では元喫煙者のリスクは5年のみと考えられていた。

【目的】
禁煙後の年数とCVD発症との関連を評価する。

【方法】
2015年12月まで追跡された、ベースライン時にCVDではないFramingham研究参加者(元のコホート:1954-1958年の間に実施された4回目の調査に参加、子孫コホート:最初の調査1971-1975年)から前向きに収集されたデータの後ろ向き解析。

【曝露】
自己申告による喫煙の有無、禁煙後の経過年数、喫煙中の累計たばこpack year。

【主要アウトカムと測定】
CVD(心筋梗塞、脳卒中、心不全または心血管系死亡)。主要解析には、両方のコホート(プール)が含まれ、ヘビースモーカー(20pack year以上)について行った。

【結果】
参加者8,770(元のコホート:n = 3,805;子孫コホート:n = 4,965)人の平均年齢は42.2歳(SD 11.8)で、45%が男性だった。そのうち喫煙経験者は5,308人で、ベースラインの喫煙累計(pack year)の中央値は17.2(四分位範囲:7~30)だった。ヘビースモーカーは2,371人(追跡中に禁煙した元喫煙者406例[17%]、現喫煙者1,965人[83%])だった。追跡期間中央値26.4年以上で、初回CVDイベント発生は2,435件だった(オリジナルコホート1,612件[うちヘビースモーカー665例]、子孫コホート823例[同430例])。プールコホートにおいて、現喫煙者と比較して禁煙5年以内の者のCVD罹患率は有意に低いことと関連していた(罹患率は現喫煙者11.56/1,000人年(95%信頼区間[CI]:10.30~12.98)、禁煙5年以内の者6.94/1,000人年(同:5.61~8.59、群間差:-4.51、95%CI:-5.90~-2.77)。また、CVD発症リスクが低いこととも関連していた(ハザード比[HR]:0.61、95%CI:0.49~0.76)。非喫煙者と比較して禁煙者は、プールコホートにおいて禁煙後10年から15年の間でCVDリスクの増加と有意に関連しなくなった(非喫煙者の同罹患率、5.09/1,000人年(95%CI:4.52~5.74)、禁煙後10~15年、6.31/1,000人年(95%CI:4.93~8.09)、群間差:1.27[95%CI:-0.10~3.05]、HR:1.25[95%CI:0.98~1.60])。

【結論】
ヘビースモーカーにおける禁煙者と現在の喫煙者と比較すると禁煙5年以内のCVDリスクが低いことと有意に関連していた。しかし、非喫煙者と比較して、禁煙5年後の元喫煙者のCVDリスクは、有意に上昇したままだった。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■本研究結果は、非喫煙者と比較して、20Pack Year以上のヘビースモーカーは禁煙しても禁煙後10年~15年後のCVD発症リスクは高いという結果であった。本研究では、より少ないpack year喫煙者の禁煙後のCVD発症リスクの結果は示されていないが、より少ない状況の影響も見ることができると20Pack Year未満の喫煙者への禁煙指導に役立つエビデンスになると思われる。
    ■筆者らも限界で、たばこの種類について考慮できていないことを挙げているが、最近では、ニコチンやタールの量が異なる紙巻たばこに加え加熱式たばこなど、多岐にわたる種類のたばこが存在している。そのため、今後はたばこの種類や内容をも考慮した詳細な調査が必要になると考えられる。
    ■本研究では、禁煙した理由には言及されていない。禁煙の理由としては、健康づくりのために禁煙したケースや、病気ために禁煙したケース、その他様々あると考えられるが、病気のために禁煙した場合は、すでに健康状態が良好ではなく、CVD発症リスクが高い状態にある人もいる可能性が考えられる。よって、禁煙理由についての情報があり、それを考慮した解析ができると、さらに興味深い結果が得られたのではないかと思われる。


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