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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2020.3.11

2020年3月11日    担当:長野

Effect of Wearable Technology Combined With a Lifestyle Intervention on Long-term Weight Loss The IDEA Randomized Clinical Trial
~ ウェアラブル機器と生活習慣介入の組合せが長期的な体重の減少に及ぼす影響:IDEAランダム化比較試験 ~
出典: JAMA. 2016 Sep 20;316(11):1161-1171
著者: Jakicic JM, Davis KK, Rogers RJ, King WC, Marcus MD, Helsel D, Rickman AD, Wahed AS, Belle SH.
<論文の要約>
【重要性】
肥満の蔓延に対処するには、効果的な長期治療が必要である。身体活動と食事に関するウェアラブル技術は数多くあるが、これらが減量の改善に効果があるかどうかは不明である。

【目的】
標準的な介入と比較して、ウェアラブル機器を導入した介入がより大きな体重減少をもたらすという仮説を検証する。

【デザイン・セッティング・参加者】
ピッツバーグ大学で実施され、2010年10月から2012年10月までに471人の成人参加者が登録し、2014年12月までにデータ収集が完了したランダム化比較試験。

【介入方法】
参加者は低カロリーの食事を取り、規定の身体活動を増加させ、グループカウンセリングセッションに参加した。6ヶ月の時点で、介入に電話カウンセリング、テキストメッセージ、およびWebサイト上の研究資料へのアクセスが追加された。6ヶ月の時点で、標準介入群にランダム化された参加者は、ウェブサイトを使用して食事と身体活動の自己報告を開始し、ウェアラブル機器介入群にランダム化された参加者には、食事と身体活動をモニタリングするためのウェアラブルデバイスと付随するWebインターフェイスが提供された。

【主要アウトカム】
主要アウトカムである体重は、6ヶ月間隔で24ヶ月に渡り測定され、主要な仮説では、24ヶ月で2つの群間の体重の変化を比較した。副次的アウトカムには、体組成、体力、身体活動量、食事摂取量が含まれた。

【結果】
ランダム化された471人の参加者(BMI:25〜40kg /m2未満、年齢:18〜35歳、非白人28.9%、女性77.2%)のうち、470人(標準介入群237人、ウェアラブル機器介入群237人)が介入を開始し、74.5%が研究を完了した。ウェアラブル機器介入群では、ベースラインの体重は96.3 kg(95%CI:94.2-98.5)であり、24ヶ月の体重は92.8 kg(95%CI:90.6-95.0)であった。標準介入群のベースラインの体重は95.2 kg(95%CI:93.0-97.3)で、24ヶ月の体重は89.3 kg(95%CI:87.1-91.5)であった。24ヶ月での体重変化は、群間で顕著に異なった(差:2.4 kg [95%CI:1.0-3.7];P = .002)。両群で、体組成、体力、身体活動量、食事が大幅に改善されたが、群間で顕著な違いはなかった。

【結論】
BMIが25以上40未満の若年成人では、標準的な介入にウェアラブル機器を導入すると、24ヶ月間の体重減少が少なくなった。身体活動をモニターし、フィードバックを提供するデバイスは、標準的な介入による減量アプローチよりも利点がない場合がある。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■本研究のRCTは綿密な研究設計の上で、十分な数の対象者の身体活動量やカロリー摂取量が2年間にわたって適切に計測されており、既存研究と比較してもウェアラブル機器を用いた生活習慣介入による減量効果に関して、正しく検証が出来ていると考えられる。
    ■ウェアラブル機器を併用した介入が標準的な介入よりも減量効果が少なかったという本研究の結果は、ウェアラブル機器による全ての介入の有効性を否定するものではなく、どのような対象者に、どのような形でこれらの機器を利用すれば効果が出るのかについて、更なる検証を行うべきだという必要性の提起に繋がっている。
    ■本研究の対象者に設けられた身体活動量やカロリー摂取量の基準が高く、全員が基準を正確に遵守できていたかは疑わしい。また、その遵守の程度が介入結果にも大きな影響を与えていたと考えられる。そのため、身体活動量やカロリー摂取量が対象者の中でどの程度遵守されていたかについては、詳細に検討すべきである。
    ■本研究結果において、なぜ標準介入群の方がウェアラブル端末併用群よりも良好な結果が出たのかについては深く検討されておらず、それらを明らかにするために、各介入群における参加者の心理的側面を含めた評価や、各介入群における体重増加群または減少群の特徴を比較するなどで、結果に差が出た原因について検討する必要がある。


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