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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2020.6.3

2020年6月3日    担当:松岡

Potential impact on prevalence of obesity in the UK of a 20% price increase in high sugar snacks: modelling study
~ 高ショ糖菓子で20%価格が上昇したときの、潜在的な肥満への影響:英国のモデル研究 ~
出典: BMJ 2019;366:l4786
著者: Carlos A Celis-Morales, Donald M Lyall, Paul Welsh, Jana Anderson, Lewis Steell,
<論文の要約>
【背景】
高ショ糖菓子の価格が20%上昇したときの潜在的なBMIと肥満の有病率への影響を推定する。

【方法】
デザイン:イギリスの一般成人を対象としたモデル研究 参加者は36 324世帯の家計データ(UK Kantar FMCG、2012/1~2013/12)を用いた。データは高ショ糖菓子の価格が20%上昇した時の購入したエネルギー量の変化を推定するために使用した。2 544人の食事と栄養の調査(the National Diet and Nutrition Survey、2012~2016年)の成人データがBMIおよび肥満の有病率の変化を推定にするのに用いられた。1人あたりの効果(アウトカム)は3カテゴリーの高ショ糖菓子(1:菓子類[チョコレートを含む]、2:ビスケット、3:ケーキ)の価格が20%上昇したときの家庭で購入したエネルギー量である。価格上昇による健康アウトカムは体重、BMI(25未満、25以上30未満、30以上の3グループに分類)そして肥満の有病率の変化とした。結果は世帯収入とBMIで層別解析した。

【結果】
全ての世帯収入を対象にした解析では、20%高ショ糖菓子の価格が上昇したときの、平均の摂取エネルギー量の減少は、8 900 kcal [95%CI; 4 200, 13 100]であった。体重減少の静的モデルを使用した場合、BMIは全ての参加者で平均0.53 [95%CI; 0.06, 1.01]減少すると見積もられた。1年後のイギリスの肥満の有病率は2.7% [95%CI; 1.7, 3.7]減少する可能性が有り、20%の価格上昇によるエネルギー購入への影響は、肥満の低所得世帯のグループに最も大きく、肥満ではない高所得世帯のグループに最も小さかった。

【結論】
20%高ショ糖菓子の価格上昇により、エネルギー摂取量、BMIそして肥満の有病率を減少させることができる。この研究結果はイギリスでの状況を反映しており、加糖飲料の価格を同様に上昇させたモデルの2倍だった。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■高ショ糖菓子を食べる量は高所得者でも低所得者でも大きく変わらない為、値上げは、低所得者にとって負担が大きくなる可能性が有る。必需品と考えると、不公平感を感じるかもしれないが、それが健康格差にも貢献している可能性が有る。また、嗜好品と考えると理解されやすい。
    ■実際にこのような政策を行う場合に、税金にしてしまうと、メーカーは売り上げが落ちるだけで、何もメリットがない。イギリスの減塩の取り組みでは、メーカーにインセンティブがあったという話もある。一方で、日本でたばこの値上げを行う場合には、タバコを栽培する農家への配慮も大きな課題となる。
    ■今回の論文では、高ショ糖菓子を3つに分けているが、おそらく価格帯や平均的なエネルギー密度などで分類することで、メインアウトカムのBMIをより正確に推定したと考えられた。


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