PAGE TOP

国立大学法人

山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2020.6.17

2020年6月17日    担当:須田

Effect of Low-Fat vs Low-Carbohydrate Diet on 12-Month Weight Loss in Overweight Adults and the Association With Genotype Pattern or Insulin Secretion
~ The DIETFITS Randomized Clinical Trial ~
出典: AMA. 2018;319(7):667-679. doi:10.1001/jama.2018.0245 Last corrected on April 24, 2018.
著者: C Christopher D. Gardner, PhD; John F. Trepanowski, PhD; Liana C. Del Gobbo, PhD; Michelle E. Hauser, MD; Joseph Rigdon, PhD; John P. A. Ioannidis, MD, DSc; Manisha Desai, PhD; Abby C. King, PhD
<論文の要約>
【背景】
食事療法は、減量を成功させる鍵となる。しかし、人々にとって1つの食事戦略が他の食事戦略よりも常に優れているということはない。先行研究では、遺伝子型またはインスリン-グルコース代謝が食事の影響を修正する可能性があることが示唆されていた。

【目的】
健康的な低脂肪(HLF)食と健康的な低炭水化物(HLC)食の体重変化への影響を検討し、遺伝子型パターンまたはインスリン分泌がそれらの影響に関連しているかを検討する。

【デザイン/セッティング】
2016年に参加者は12か月間のHLFまたはHLCの食事グループに無作為に割り付けられた。また、この研究では3つの一塩基多型遺伝子座の応答性パターンまたはインスリン分泌(INS-30:グルコース負荷後30分のインスリンの血中濃度)が減量に関連しているかどうかの検定も行った。健康教育者は、12か月にわたって実施された22の食事固有の小グループのセッションを介して、HLF(n = 305)およびHLC(n = 304)の参加者に行動修正の介入をした。セッションでは、長期的に維持できる脂肪や炭水化物の最低摂取量を達成する方法に焦点を当て、食事の質に注目した。

【参加者】
イギリスの22地域から募集された263,540人(女性:106,674人(52%)、平均年齢52.6

【主要アウトカム】
CVDと癌の発生、CVD及び癌による死亡、全原因による死亡

【参加者】
減量効果との交互作用をもつ要因を調査する食事療法(DIETFITS)の無作為化臨床試験には、BMI 28〜40の糖尿病のない18〜50歳の成人609人が登録した。試験の登録は2013年1月29日から2015年4月14日、最終フォローアップの日付は2016年5月16日であった。

【結果】
無作為化された609人の参加者(平均年齢:40 [SD:7]歳、57%の女性、平均BMI、33 [SD、3]、244人[40%]は低脂肪遺伝子型、180人 [30%]は低炭水化物遺伝子型;平均ベースラインINS-30、93μIU/ mL)のうち、481人(79%)が試験を完了した。HLFとHLCの食事療法では、それぞれ12か月の主要栄養素分布が炭水化物で48%vs 30%、脂肪で29%vs 45%、タンパク質で21%vs 23%でした。12か月後の体重変化は、HLF食の-5.3 kg対HLC食の-6.0 kgであった(グループ間の平均差、0.7 kg [95%CI、-0.2〜1.6 kg])。食事と遺伝子型の交互作用に有意性はなかった(P = 0. 20)。また12か月の体重減少について食事とインスリンの分泌(INS-30)の交互作用にも優位性はなかった(P = 0.47)18の有害事象と2つの重篤な有害事象が食事群に均等に分布していた。
【結論】
この12か月の減量研究では、健康的な低脂肪食と健康的な低炭水化物食の間において体重の変化に有意差はなく、遺伝子型パターンもベースラインのインスリン分泌も減量に対する食事の影響と関連していなかった。これらの2つの一般的な減量ダイエットアプローチにおいて、もともと提示されていた2つの仮説要因はどちらも、どのダイエットが誰に適しているかを見極めるのに役立たなかった。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■この研究の参加者は、栄養士の頻回の指導により野菜を多く摂取し、添加糖・精製された粉・トランス脂肪酸・加工食品を最小限にし、家庭で調理した食事を中心にすることを徹底していた。さらには継続参加率も高いため、ほとんどの参加者が減量に成功していた。本研究においては、この介入を最後まで遂行し、全体的に大きな減量を実現した事自体も評価に値すると考える。
    ■個人の遺伝子やインスリン分泌によって減量効果が変わると示す先行研究では、徹底した食事制限についての調整までは出来ていなかったため、これらの原因により差があるという結果が出ていた可能性がある。しかし、本研究では先行研究での限界点だった食事の調整を厳格に実施した上で介入を実施したため、より確実性の高い研究結果であると言えるだろう。
    ■本研究の対象者は、教育レベルが比較的高く、経済的にも裕福で高品質の食材を確保するための地理的条件も確保されていた。また対象者は、メディア広告や研究室グループが配信した電子メールに対して反応し、参加している人々であるため、裕福でかつ健康的なダイエットに興味や関心がある集団に対する研究といえる。そのため、本研究結果を一般化することは、限界がある。


前のページに戻る