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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2020.7.1

2020年7月1日    担当:前嶋

Hospital revisits within 30 days after discharge for medical conditions targeted by the Hospital Readmissions Reduction Program in the United States: national retrospective analysis
~ アメリカの病院再入院削減プログラムの対象となった病状の退院後30日以内の再診察:全国的なレトロスペクティブ分析 ~
出典: BMJ2019;366;i4563
著者: Rishi K Wadhera, Karen E Joynt Maddox, Dhruv S Kazi, Changyu Shen, RobertW Yeh
<論文の要約>
【目的】
再入院削減プログラムHospital Readmissions Reduction Program(HRRP)の対象となる病状について、入院後30日以内の総再診回数の変化を明らかにすること。

【デザイン】
後ろ向きコホート研究

【セッティング】
2012年1月1日から2015年10月までの間に心不全、急性心筋梗塞、肺炎で入院したメディケア(保険制度利用者)患者。

【対象者】
65歳以上のメディケアの有料サービス利用患者。

【主要アウトカム】
HRRPが対象とした病状での入院後、退院してから30日以内の総再診回数、および再診の種類:救急科を経て治癒退院、経過観察での入院(再入院には至らない)と再入院。患者のサブグループ(年齢、性別、人種)も再診察の種類ごとに評価した。

【結果】
我々の研究コホートには2012年1月から2015年9月の間に入院した計3,038,740件が含まれていた。心不全が1,357,620件、急性心筋梗塞が634,795件、肺炎が1,046,325件。退院後の総再診患者を数えると、対象疾患の退院患者100人あたりの再総診の数は、研究期間中増加した(退院患者100人あたりの月の増加数は0.023回(95%信頼区間0.010-0.035))。この変化は、救急科への治療と退院の月の訪問数の増加(0.023(0.015から0.0.32))、および経過観察での入院数(0.020-0.025)の増加によるものであり、再入院の減少(-0.023(-0.035- -0.012))によって部分的にのみ相殺された。経過観察での入院の増加は白人よりも非白人患者が目立っていた。対象疾患の退院後30日以内の死亡率には有意な変化は見られなかった(-0.0034(-0.012-0.0054))。

【結論】
研究期間中、米国におけるHRRP対象疾患患者の30日以内の総再診回数は増加した。この増加は、退院後の救急科への訪問、経過観察での入院の増加によるものであり、再入院減少を上回った。再入院の減少は退院計画やケアへの移行の改善に起因しているが、我々の結果はこれらの減少は病院や臨床医が、30日以内に救急科や経過観察として再入院してしまう患者を治療する努力を高めていることによるのではないかと示唆した。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■ 白人に比べて非白人で経過観察からの入院が多かった。この理由について、本文中では特に言及されていない。非白人の貧困者が多いからかもしれない。これには有意な差があり、本文中で筆者らの考察が欲しい。
    ■ 肺炎、急性心筋梗塞よりも心不全の再入院率が高かった。この理由について本文中では言及されていなかい。心不全は管理が難しい慢性疾患であるため、この結果となったのだろう。
    ■ HRRP導入後の約4年間で、退院後30日以内の死亡率に変化は無かった。導入前後の再入院に至らなかった患者の死亡率を比較した先行研究では、HRRP導入後の方が死亡率が高いという結果が報告されていた。HRRP導入は患者のためになっているのだろうか。入院中のケアの質、退院後の疾患管理について変化があったかという調査が今後行われることを期待する。


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