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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2020.7.15

2020年7月15日    担当:田中深雪

Association of Maternal Social Relationships With Cognitive Development in Early Childhood
~ 母親の社会関係と幼児期の認知発達との関連 ~
出典: JAMANetworkOpen.2019;2(1):e186963
著者: Eun Kyong Shin, PhD ; Kaja LeWinn, ScD ; Nicole Bush, PhD et al
<論文の要約>
【重要性】
この研究はさまざまなタイプのソーシャルネットワーク構造が子どもの初期の認知発達にどのように関連しているかを調べるものである。

【目的】
社会的関係と構造が初期の認知発達とどのように関連しているかを評価し、母親のソーシャルネットワークの変化が子どもの初期の認知発達パターンを変えるかどうかを明らかにすること。

【デザイン、セッティングおよび参加者】
このコホート研究は、テネシー大学ヘルスサイエンスセンターの1082組の母子と神経認知の発達と学習に影響する条件と初期の子どものデータを使用して、さまざまなレベルの複雑さのネットワーク(トライアド、家族、近所)、母親のIQ、出生体重、年齢、父親の教育レベルを調整した後の子どもの認知能力との関係を調査した。最終モデルは世帯の貧困レベルを合わせて調整した。データは2006年12月から2014年1月まで収集し2018年10月から11月まで分析した

【曝露】
子どもと母親の関係、子どもと母親と父のトライアド、家族の環境、子どもの住居ネットワーク、母親の社会的支援ネットワーク、近隣ネットワーク

【主な結果と測定】
ベイリー乳児発達スケール(BSID)を使用した2歳児の認知発達の測定

【結果】
参加者1082人のうち544人(50.3%)が男児で703人(65.1%)がアフリカ系アメリカ人であった。平均(SD)年齢は2.08(0.12)歳であった。大家族は初期の認知発達と負の関連がありBSID係数スコアが平均2.21ポイント減少した(95%CI、0.40〜4.02、P = .01)。 母親のソーシャルサポートネットワークのサイズは、BSID係数スコアの平均0.40ポイントの増加(95%CI、0.001〜0.80、P = .05)と積極的に関連した早期認知発達であった。多くの隣人を知ることは、初期の認知発達と統計的に有意に関連しておらず、BSID係数スコアが平均1.39ポイント増加した(95%CI、-0.04〜2.83、P = .06)。

【結論と関連性】
母親の社会的関係が子どもの認知発達との関連、および母子父のトライアドを超えた社会的関係が子どもの認知発達と有意に関連していた。この研究は子どもの健康転帰に対する環境の影響、特に初期の子ども認知発達が主養育者のソーシャルネットワークと関連していることを明らかにした。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■主養護者のソーシャルネットワークは妊娠中、産後など時期により変化するものと考えられる。このためいつの時点でのソーシャルネットワークなのかが明らかになると良いのではないか。
    ■家族のサイズは6人以上を大家族と定義している。世帯規模変数の平均(SD)は4.37(1.51)人であることから6人以上と定義したと推察できるが記載があるとさらに理解しやすいのではないか。
    ■多変量解析において、当初は子どもの性別、出産時の在胎週数、母乳育児、出生体重、母親の喫煙、母親の教育レベルなど、他の可能性のある交絡因子を試行が、偏回帰係数が主要変数に対し実質的に影響を与えなかったためモデルには含めなかったとある。N数か1,000以上であることからも調整変数として投入した結果を示した方が解釈上よいのではないか。
    ■家族構成が調査結果に影響を与えるのではないかと考えられる。祖父母との同居があるのか、子どもが多いのか等の記載があると良いのではないか。


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