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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2020.9.9

2020年9月9日    担当:太田

Association of Step Volume and Intensity With All-Cause Mortality in Older Women
~ 高齢女性における歩数と歩行強度の全死亡への関与 ~
出典: JAMAInternMed.doi:10.1001/jamainternmed.2019.0899 PublishedonlineMay29,2019.
著者: I-MinLee,MBBS,ScD;EricJ.Shiroma,ScD;MasamitsuKamada,PhD;DavidR.Bassett,PhD; CharlesE.Matthews,PhD;JulieE.Buring,ScD
<論文の要約>
【目的】
高齢者においても一日当たりの歩数の増加は全死亡の減少に関連していることを明らかにする

【デザイン】
前向きコホート

【セッティング】
1992-2004年に行われたWomen’s Health Study (WHS)の終了者

【対象者】
2011-2015年に7日間の装置装着に同意した18289人のうち、装置を完璧に装着できた16741人。

【主要アウトカム】
全死亡

【結果】
 潜在的な交絡因子を調整したところ、1日あたりの歩数で四分位に分けた中央値2718、4363、5905、8442歩のそれぞれに対応した全死亡のハザード比は1.00 (基準), 0.59 (95% CI, 0.47-0.75), 0.54 (95% CI,0.41-0.72), 0.42 (95% CI, 0.30-0.60)であった (P < .01)。

【結論】
この結果は1日10000歩の歩行など達成しえない多くの高齢者にとって朗報である。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■ 対象者になぜ女性だけのセットを選んだのか。 女性だけに限った検討をしたかったのではなく、今回はたまたまWHSのデータを扱えたのだろう。男性にこの結果を当てはめるために考慮する点は、男女の違い、たとえばホルモンの関与、喫煙、現役時の就労内容。人種の違いにも考慮が必要。この結果を臨床に応用するにはさらなる検討が必要。
    ■ 4つのモデルの中で著者のグループが最も強調したい結果はどれだろうか。 考えられる全てを調整したモデル3のみでなくモデル1,2,3に分けたのはどうしてだろうか。モデル4はモデル2をもとに調整しているのでモデル2にもっとも思い入れがあるのかもしれない。結論は歩数と全死亡との関連を述べているのでモデル4は主な結果ではない。しかし著者らが計画段階で示したかったのは強度よりも歩数が重要ということかもしれない、主題と【目的・結論】に微妙な差異を感じる。
    ■ 歩数とケイデンスという同じものではないが関連するものである 歩行分析ではケイデンスは1分間あたりの歩数をさす。自転車競技では1分間あたりの回転数を意味する。著者は歩数がのびると強度がますと指摘している。強度の指標にケイデンスを用いているが、ケイデンスがあがれば歩数は逆に減少するかもしれない。また歩幅も変わる。 この研究が明らかにした、強度にかかわらず歩数が全死亡の減少に有効で、歩数は計測しやすく動機付けにも有用である、という結果は臨床でも有用。 様々なケイデンスが集計されているが、それらの特徴は検討されていない。


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