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山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2020.10.7

2020年10月7日    担当:小村

Non-GABA sleep medications, suvorexant as risk factors for falls: Case-control and case-crossover study
出典: PLoS ONE 15(9): e0238723, https://doi.org/10.1371/journal.pone.0238723 September 11, 2020
著者: Yoshiki Ishibashi, Rie Nishitani, Akiyoshi Shimura, Ayano Takeuchi, Mamoru Touko, Takashi Kato, Sahoko Chiba, Keiko Ashidate, Nobuo Ishiwata, Tomoyasu Ichijo, Masataka Sasabe
<論文の要旨>
本研究の目的は,非ガンマアミノ酪酸(GABA)睡眠薬であるスボルキサントとラメルテオンの使用に関連した転倒リスクを検討することであった。このケースコントロール・ケースクロスオーバー研究は,東京都千代田区の九段坂病院で実施した.転倒患者325例と,性と年齢でマッチさせた対照群1295例を対象とした.症例群の選択基準は、2016年1月から2018年11月までの間に初めて転倒した入院患者とし、対照群の選択基準は、2016年1月から2018年11月までの間に入院し、転倒しなかった患者とした。投与された催眠薬は、スボルキサント、ラメルテオン、非ベンゾジアゼピン系、ベンゾジアゼピン系、漢方薬に分類された。ケースコントロール研究では、ロジスティック回帰モデルで年齢、性別、臨床科、転倒リスクスコア、入院期間を調整した。ケースコントロール研究では、多変量ロジスティック回帰により、スボルキサント(オッズ比[OR]:2.61、95%信頼区間[CI]:1.29-5.28)、非ベンゾジアゼピン系薬剤(OR:2.49、95%CI:1.73-3.59)、ベンゾジアゼピン系薬剤(OR:1.65、95%CI:1.16-2.34)の使用は、転倒のOR増加と有意に関連していた。しかし、ラメルテオン(OR:1.40、95%CI:0.60-3.16)および漢方(OR:1.55、95%CI:0.75-3.19)の使用は転倒のOR増加と有意な関連はなかった。ケースクロスオーバー研究では、スボルキサント(OR:1.78、95%CI:1.05-3.00)および非ベンゾジアゼピン系薬剤(OR:1.63、95%CI:1.17-2.27)の使用は転倒のOR増加と有意に関連していた。いくつかの感度解析でも同様のパターンが観察された。スボルエキサントは転倒のORを増加させることが示唆された。この結果は様々な解析において頑健である。本研究は、非GABA系催眠薬であるスボルレキサントにも転倒リスクが存在することを示しており、適切な評価のもとで慎重に催眠薬を処方する必要があることを示した。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■先行研究の弱みであった転倒症例の不足を、ケースコントロール研究行うことで解決していた。Rare outcomeに対するお手本のような研究デザインであった。
    ■逆に、本研究の弱みである未測定交絡に対しては、感度分析に加えて、異なる仮定を用いたデザインを設計することで対応していた。
    ■ケースクロスオーバー研究における解析対象者の記述統計を充実させると研究結果の解釈が容易だったかもしれない。
    ■欠損値に関する記載を充実させると研究結果についてより詳細に解釈することができたかもしれない。
    ■転倒の時間や内服期間についての情報をより詳細に集めると、研究結果の解釈が容易になったかもしれない。


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