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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2020.10.14

2020年10月14日    担当:浦中 桂一

Annals of Internal Medicine. 2018;169:825-835. doi:10.7326/M17-1987
~ 医師、ナースプラクティショナー、またはフィジシャンアシスタントが管理する糖尿病患者の中間アウトカム コホート研究 ~
出典: Annals of Internal Medicine. 2018;169:825-835. doi:10.7326/M17-1987
著者: George L. Jackson, Valerie A. Smith, David Edelman, Sandra L. Woolson, Cristina C. Hendrix, Christine M. Everett, Theodore S. Berkowitz, Brandolyn S. White, Perri A. Morgan
<論文の要約>
【目的】
医師、NP(nurse practitioner)、PA(physician assistant)のプライマリ・ケア提供者(primary care providers; PCP)間で糖尿病の中間アウトカムが異なるかを明らかにする。

【デザイン】
米国退役軍人保健局(VA)の電子カルテのデータを用いたコホート研究

【セッティング】
VA のプライマリ・ケア施設 568 施設

【参加者】
薬剤治療を受けている18歳以上368,481人の糖尿病患者

【主要アウトカム】
 PCP(2012年に患者が最も頻繁に受診した提供者)の職業と、ヘモグロビンA1c(HbA1c)、収縮期血圧(SBP)、低密度リポ蛋白コレステロール(LDL-C)管理の状況を、連続値および二値で表現した。2013年の測定値平均に基づいて計算した。コホートで特性のバランスをとるためにPCPタイプの逆確率を用いた。連続値アウトカムの解析には階層的混合効果モデルを用い、二値アウトカムに対してはロジスティック回帰モデルを用いた。

【結果】
 PCPsは医師(n=3487)、NPs(n=1445)、PAs(n=443)で、それぞれ74.9%、18.2%、6.9%の患者を担当した。医師と比較してHbA1c値は、NPsでは-0.05%(95%信頼区間:-0.07%~-0.02%)、PAsでは0.01%(信頼区間:-0.02%~0.04%)だけ異なった。SBPの差はNPsで-0.08mm Hg(CI:-0.34~0.18mm Hg)、PAsで0.02mm Hg(信頼区間:-0.42~0.38mm Hg)であった。LDL-Cについては、NPsでは0.01mmol/L(信頼区間:0.00~0.03mmol/L)(0.57mg/dL[信頼区間:0.03~1.11mg/dL])、PAsでは0.03mmol/L(信頼区間:0.01~0.05mmol/L)(1.08mg/dL[CI、0.25~1.91mg/dL])の差であった。これらの差はいずれも臨床的に重要と考えられなかった。

【結論】
 糖尿病のアウトカムに付き、3つのタイプのPCPsの間で臨床的に有意な変動は認められず、医師、NPs、およびPAsが達成する慢性疾患アウトカムは同様なのかもしれないことが示唆された。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■表1の患者属性で重み付けされていない割合、NPsと医師、NPsとPAs、医師とPAsの差についての詳細な説明がなかった。差の算出方法に付き説明があると結果がより解釈しやすかった。
    ■傾向スコアの重み付けやアウトカムに関する多変量解析モデルに投入された変数(調整変数含む)についての詳細な説明があれば、より深く分析方法の適否を評価できた。
    ■対象で男性の割合が圧倒的に多い。PCP自身の属性については調査できなかったことが研究の限界として示されている。PCPsの性別や経験年数も治療結果に交絡していると考えられる。医療提供者のジェンダーを測定することは規制されているかもしれない。
    ■NPやPA養成のための教育コストや期間、給与を調査し、プライマリ・ケアで医師の代わりを果たすことの利益も将来は評価されていくべきである。


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