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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2020.11.11

2020年11月11日    担当:山口

Development and initial validation of the COVID Stress Scales COVID
~ ストレス尺度の開発と初期妥当性検証 ~
出典: Journal of Anxiety Disorders 72(2020) 102232
著者: Steven Taylora, Caeleigh A. Landryb, Michelle M. Paluszekb, Thomas A. Fergusc, Dean McKayd,Gordon J.G. Asmundsonb
<論文の要約>
【背景】
研究や臨床観察からパンデミック時には多くの人がストレスや不安に関連した反応を示すことが示唆されている。不安がウイルスの発生に対する反応を形成する上で果たす役割、つまりそれが感染を緩和する行動と感染の拡大を促進する行動の両方を形成することを考えると、公衆衛生の意思決定者(政策立案者)、医療関係者(保健当局)、医療提供者が、現在のCOVID-19の危機に対する心理学的な反応の性質と程度を理解することが重要であり、COVID-19に関連するストレスおよび不安関連症状の信頼できる尺度を開発することが急務である。

【目的】
COVID-19に関連するストレス症状の特徴を測定するために、36項目からなるCOVIDストレス尺度(CSS)を開発し、その信頼性、妥当性を検討した。

【方法】
データは、カナダと米国で、2020年3月21日から4月1日までの間に、民間のQualtrics社によってウェブパネルのサンプリングを使用して参加を募った。最終的なサンプルは 6,854 人の成人(米国:3,375 人、カナダ:3,479 人)であった。測定項目は、関連する文献を検討し、健康関連の不安に関する専門家に相談し、53項目が構築された。以下の5つの尺度を用いて収束性妥当性及び弁別性妥当性を評価した。Patient Health Questionnaire-4 (PHQ-4; Kroenke, Spitzer, Williams, & Lowe, 2009), Short Health Anxiety Inventory (SHAI; Salkovskis, Rimes, Warwick, & Clark, 2002), Obsessive Compulsive Inventory-Revised (OCI-R; Foa et al., 2002),Xenophobia Scale (XS; van Zalk, Kerr, van Zalk, & Tattin, 2013), Marlowe Crowne Social Desirability Scale Short Form (MCSD-SF; Reynolds,1982).

【結果】
PHQ-4のカットオフ値(Kroenke et al., 2009)によると、カナダと米国の一般集団サンプルの28%が不安感が高く、22%が臨床的に有意な抑うつ症状を経験していた。 COVID-19のストレスおよび不安症状を評価する5つの尺度に対応する安定した5因子解が同定された。(1) COVIDの危険性と汚染に対する恐怖、(2) COVIDの経済的影響に対する恐怖、(3) COVIDの外国人恐怖症、(4) COVIDの強迫的な確認と安心感の追求、(5) COVIDのトラウマ的ストレス症状である。各尺度は信頼性と妥当性の様々な指標で良好な結果を示した。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■本研究は民間会社を利用し、ウェブパネルのサンプリングを利用して参加を募っていることから、対象者が日頃から健康等に関心がある、インターネット環境があるなどの一定の条件を満たしていることが考えられ、それらのバイアスについては考慮されていないため、そのことが結果に少なからず影響を与えている可能性が考えられる。CSSの弁別的妥当性が確認できた。
    ■CSSの各尺度について、一般的な不安とうつ病との相関の差の検定(弁別的妥当性)が検討され、ほとんどの尺度において、現在の不安との相関が現在のうつ病との相関よりも有意に大きかったことが示されていた。不安とうつ病は、関連はあるものの違うものとして検討されるべきものであることが改めて確認された。
    ■この研究で開発された尺度(CSS)が、「どのような人が安全行動をとる可能性が高いかを予測するための研究にも利用することができる」と考察されていたが、コロナ禍の社会でどのような形で実際に活用され、貢献していくのかが課題であると考えられる。


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