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山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2020.12.9

2020年12月9日    担当:新藤

Contact Tracing Assessment of COVID-19 Transmission Dynamics in Taiwan and Risk at Different Periods Before and After Symptom Onset
出典: JAMA Intern Med. 2020; 180(9): 1156-1163.
著者: Hao-Yuan Cheng, MD, MSc; Shu-Wan Jian, DVM, MPH; Ding-Ping Liu, PhD; Ta-Chou Ng, BSc; Wan-Ting Huang, MD; Hsien-Ho Lin, MD, ScD; for the Taiwan COVID-19 Outbreak Investigation Team
<論文の要約>
【Importance】
COVID-19の感染性は十分には理解されていない。感染動態の理解は有効な感染抑制政策の推進と評価をすすめるうえで重要である。

【Objective】
COVID-19の感染動態の記述と、濃厚接触した時期(発病者が発病前後何日目か)による感染性の評価

【Main Outcomes and Measures】
インデックス・ケースへの異なる曝露期間と曝露環境(家庭内、家族、施設)での二次発病率。

【Results】
100人のCOVID-19確定例を登録し、中央値44歳(11-88歳)で、44人が男性であった。彼らへの2761人の濃厚接触者のうち、22人が二次発病者として確認された。全体の二次発病率は0.7%(95%信頼区間:0.4-1.0%)であった。インデックス・ケースが発病して5日以内に曝露を受けた1818人では二次発病率1.0%(0.6-1.6%)であったが、発病6日目以後に曝露を受けた852人では二次発病者0%(0-0.4%)であった。発病前に曝露を受けた299人で二次発病率0.7%(0.2-2.4%)とリスクがあった。曝露環境別では、家庭内4.6%(2.3-9.3%)、家庭外家族感染5.3%(2.1-12.8%)が医療施設やその他の環境に比べ高率であった。年齢別ではインデックス・ケースが40-59歳では1.1%(0.6-2.1%)に対し60歳以上では0.9%(0.3-2.6%)であった。

【Conclusion and Relevance】
この研究では、発病前あるいは発病初期のCOVID-19患者の感染性が高く、流行阻止のためには有症者の発見・隔離のみでは不十分で、ソーシャル・ディスタンシングのようなより一般性の高い方策を要する。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■台湾社会はデジタル化が進んでいるため、高精度の接触追跡および積極的疫学調査が可能であったのだろう。
    ■医療施設での濃厚接触の定義はその他の曝露環境での定義と異なるため、曝露環境間で二次発病率を比較するのは注意が必要ではないか。医療機関ではインデックス・ケースとのわずかな接触も濃厚接触とみなすため、二次発病率は過小評価になりやすいのではないか。 - 医療施設ではより精密な曝露の程度を測定できる環境にある(また、医療施設ではほかの環境よりも厳重な感染対策が必要である)ため、ほかの環境と定義を分けたと考えられる。 - 定義が異なるうえ、医療施設では曝露ウインドウ期間の正確性が担保されていないため、曝露環境間での二次発病率の単純比較にはあまり意味がないかもしれない。
    ■Table.1における二次発病率は粗の数値が表示されているが、調整が必要ではないか。 - 二次発病率の定義に基づき粗のデータで算出している(インデックス・ケース、2次症例ともにPCRでの確定例であるため因果関係は明らか)。


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