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山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2020.2.3

2021年2月3日    担当:岡

~ 高齢者の転倒リスクを軽減するためのトレッドミルトレーニングへの非没入型仮想現実機器の追加(V-TIME):ランダム化比較試験 ~
出典: Lancet 2016; 388: 1170–82
著者: Anat Mirelman, et al
<論文の要約>
【背景】
加齢に伴う運動および認知障害は、死亡の原因である転倒のリスクを高める。転倒の重大な影響のために、多くの介入が提案されてきたが、この研究では運動機能と認知機能の両方を対象とした統合アプローチにより転倒を防ぐことを目的としている。トレッドミルトレーニングと非没入型バーチャルリアリティ(VR)を組み合わせることによりトレッドミルトレーニングだけの場合より、認知的側面からの安全な歩行や動きによる転倒率の低さにつながるという仮説を立てた。

【方法】
このランダム化比較試験は、5か国(ベルギー、イスラエル、 イタリア、オランダ、および英国)にわたって実施した。 研究前の6か月間に2回以上の転倒の履歴に基づいて転倒のリスクが高く、さまざまな運動および認知障害のある60〜90歳の成人を、コンピューターベースの割り当てを使用してランダムに割り当て、6週間のトレッドミルトレーニングとVRまたはトレッドミルトレーニングのみいずれかを実施した。無作為化は、患者のサブグループ(転倒歴のある高齢者、パーキンソン病など)や性別によって層別化された。グループ 割り当ては、オンサイト調査手順に関与していない第三者によって行われた。どちらのグループも、週に3回、6週間トレーニングすることを目的としており、各セッションは約45分間続き、構造化されたトレーニングの進行は参加者のパフォーマンスレベルに合わせて個別化された。VRシステムは、モーションキャプチャカメラとコンピューターで生成されたもので構成されシミュレーションは大画面に投影された。これは、高齢者の転倒リスクを軽減するために特別に設計されたもので、障害物、複数の経路、およびステップなど気を散らすものである。主なアウトカムは、トレーニング終了後6か月間の転倒の発生率とした。 修正ITT集団で実施され、安全性は、治療を受けているすべての患者を評価した。

【結果】
2013年1月6日から2015年4月3日までの間に、302人の成人がトレッドミルトレーニングとVRグループ(n = 154)またはトレッドミルトレーニングのみのグループ(n = 148)のいずれかにランダムに割り当てられた。 282人(93%)の参加者からのデータは、事前に指定された修正された方法(修正ITT)によるものである。 トレーニング前の転倒の発生率は、両方のグループで同様であった。 トレーニング後6か月で、トレッドミルトレーニングとVRのグループでは、トレーニング前よりもインシデント率が大幅に低下しましたが、トレッドミルトレーニングのみのグループではインシデント率は大幅に低下されなかった。 トレーニング終了後6か月で、転倒の発生率も、トレッドミルトレーニングとVRグループの方がトレッドミルトレーニンググループよりも大幅に低下した。トレーニングに関連する重大な有害事象は発生しなかった。

【結論】
転倒のリスクが高い高齢者の多様なグループでは、トレッドミルトレーニング+VRグループはトレッドミルトレーニングのみの場合と比較して転倒率が低下した。 Funding:欧州委員会(European Commision)


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■トレッドミル+VRトレーニングのグループではトレッドミルトレーニングのみのグループと比較して、3つのサブグループのうちパーキンソン病の方に強い転倒予防効果があった。なぜパーキンソン病の人々に効果が強くあったとのかというメカニズムのディスカッションがあると良かった。
    ■MCIなどの軽度認知機能の低下の方々に対して、転倒歴の聴取やトレーニング後の転倒回数などのカウントの信憑性は妥当性があるのか。(思い出しバイアスの懸念) →家族の聞き取りやウエアラブルなどの機器を使用してもよかったのではないか。
    ■トレーニングは6週間 週3回研修センターで実施したのですが、研究センターに行くまでの過程で様々な効果(外出の機会や歩行量向上など)が考えられるが、それらの効果に関しては考慮されてないのではないか。


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