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山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2021.3.3

2021年3月3日    担当:長野

Effect of a Behavioral Intervention for Underserved Preschool-Age Children on Change in Body Mass Index: A Randomized Clinical Trial
~ 十分なサービスを受けていない就学前の子どもに対する行動介入のBMIの変化に対する効果:ランダム化比較試験 ~
出典: JAMA. 2018;320(5):450-460. doi:10.1001/jama.2018.9128
著者: Shari L Barkin, William J Heerman, Evan C Sommer, Nina C Martin, Maciej S Buchowski, David Schlundt, Eli K Po'e, Laura E Burgess, Juan Escarfuller, Charlotte Pratt, Kimberly P Truesdale, June Stevens
<論文の要約>
【重要性】
肥満の有病率と慢性疾患のリスクも高い、十分なサービスを受けていない集団の子どもにとって小児期の肥満の予防は重要である。

【目的】
 肥満のリスクのある就学前の子どもの36か月にわたる成長曲線(BMI、キログラム単位の体重をメートル単位の身長で割った体重として計算される)に対するマルチコンポーネント行動介入の効果を検証すること。

【デザイン・セッティング・参加者】
ランダム化比較試験では、テネシー州ナッシュビルのサービスの行き届いていないコミュニティから610組の親子を、健康行動か学校準備の36か月の介入に割り当てた。適格とされた子どもは3~5歳であり、肥満のリスクはあったが肥満ではなかった。研究への登録は2012年8月から2014年5月に行われ、2015年10月から2017年6月までに36か月のフォローアップが行われた。

【介入】
介入(n=304組)は、36か月の家族ベースのコミュニティ中心のプログラムであり、毎週12回のスキル構築セッションと、それに続く9か月間の毎月の電話、そして動機づけを提供する24か月間の持続可能フェーズで構成された。対照群(n=306組)は、ナッシュビル公立図書館が実施した36か月間の6つの学校準備セッションで構成された。

【主要アウトカム測定】
主要アウトカムは、36か月にわたる子どものBMIの軌跡であった。事前に指定された7つの副次的評価項目には、親が報告した子どもの食事摂取量やコミュニティセンターの使用が含まれていた。多重比較のために、Benjamini-Hochberg法で修正を実施した。

【結果】
参加者は主にラテン系(91.4%)であった。ベースラインの子どもの平均(SD)年齢は、4.3(0.9)歳であった。51.9%が女性であった。世帯収入は、56.7%の家族で25,000ドル未満であった。36か月の時点で、子どもの平均(SD)BMIは、介入群で17.8(2.2)、対照群で17.8(2.1)であった。主要アウトカムとしての36か月にわたるBMIの軌跡に有意差はなかった(P=.39)。介入群の子ども(1227 kcal/d)は、対照群の子ども(1323 kcal/d)と比較して平均カロリー摂取量が低かった(調整後差-99.4 kcal [95%信頼区間:-160.7〜-38.0];修正後P=.003)。介入群の親は、対照群の親よりも子どもと一緒にコミュニティセンターを使用した(介入群56.8%、対照群44.4%)(相対リスク1.29 [95%信頼区間:1.08〜1.53];修正後P=.006)。

【結論】
36か月のマルチコンポーネント行動介入は、テネシー州ナッシュビルの十分なサービスを受けていない就学前の子どものBMI軌跡を対照群と比較して改善しなかった。他のタイプの行動介入や、他の都市の実施で有効かどうかは、さらなる研究が必要である。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■本研究では、子どものBMIの変化をメインアウトカムとしているが、介入は親子を対象に実施しており、親のベースラインBMIは高値(介入群29.8、対照群29.4)である。そのため、介入の効果が保護者にも見られたのか否かについても検討することも有益であると考える。
    ■本研究では、長期間(36か月)の介入では効果が認められなかったと結論付けているが、短期的(3ヵ月)での介入効果は認められている。短期間での介入研究としては成功したと考えられる。
    ■副次的評価項目において、カロリー摂取量が減少し、タンパク質の割合が増加している。また身体活動の機会も増加している。このことから筋肉量が増加した可能性が考えられ、BMIの変化に影響したかもしれない。評価項目に体組成を含める必要があると考える。


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