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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2020.6.23

2021年6月23日    担当:松岡

Associations of cereal grains intake with cardiovascular disease and mortality across 21 countries in Prospective Urban and Rural Epidemiology study: prospective cohort study
出典: BMJ (Clinical research ed.), 372, m4948.
著者: Swaminathan, S., Dehghan, M., Raj, J. M., Thomas, T., Rangarajan, S., Jenkins, D., Mony, P., Mohan, V.,    Lear, S. A., Avezum, A., Lopez-Jaramillo, P., Rosengren, A., Lanas, F., AlHabib, K. F., Dans, A., Keskinler,    M. V., Puoane, T., Soman, B., Wei, L., Zatonska, K., … Yusuf, S.
<論文の要約>
【目的】
Prospective Urban and Rural Epidemiology(PURE)研究において,精白穀物(refined grain),全粒穀物(whole grain),白米(white rice)の摂取量と,心血管疾患,総死亡,血中脂質,血圧との関連を評価する。

【デザイン/セッティング】
研究デザインは前向きコホート研究(PURE study)で、21カ国の148,858人を9.5年(中央値)追跡した。曝露の算出は精白穀物、全粒穀物、白米の摂取量を評価するために、国別に検証された食物摂取頻度質問票が用いられた。主要アウトカムは全CVD関連イベント数とした。穀物摂取量と死亡率、主要CVD、およびそれらの複合項目(全CVD関連イベント)との関連について、医療センターによる階層をランダム効果として考慮した多変量Coxフレイルティモデルにより評価した。

【結果】
ベースラインで心血管疾患を有する者を除外した137 130人を解析対象とした。フォローアップ期間中、これらの参加者の9.2%(n=12 668)がイベントを発症した。精白穀物の摂取量が最も多いカテゴリー(350 g/日以上または約7皿/日)は、摂取量が最も少ないカテゴリー(50 g/日未満)と比較して、総死亡(ハザード比1.27、95%信頼区間1.11~1.46、P for trend=0.004)、主要心血管疾患イベント(1.33、1.16~1.52、P for trend<0.001)、およびCVD関連のイベント(1.28、1.15~1.42、P for trend<0.001)のリスクが高かった。精白穀物の摂取量が多いほど、収縮期血圧が高かった。全粒穀物や白米の摂取量と健康アウトカムとの間には、有意な関連性は認められなかった。

【結論】
精白穀物の摂取量が多いことは、死亡率および主な心血管疾患イベントのリスクが高いことと関連していた。世界的に見て,精白穀物の摂取量を減らすことを検討すべきである。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■本研究では白米は心血管疾患のリスクと関連が無かった。白米は一般的には精白穀物と同様に心血管疾患のリスクを高めると考えられている。また著者らも白米摂取を推奨していないため、慎重な解釈をした方が良いかもしれない。
    ■全粒穀物が心血管疾患のリスクを下げるというエビデンスは非常に多いが、本研究では確認できなかった。全粒穀物の研究は欧米中心だったが、アフリカ、アジアが加わったため、これまでの研究と本研究では全粒穀物の摂取範囲に大きな違いがあったためと考えられる。
    ■21カ国の地域横断コホートであることは本研究の強みである。その一方で食文化や社会経済学的指標が大きく異なる集団を追跡しているため、残差交絡の可能性など、弱みとなっている可能性もある。


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