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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2020.7.21

2021年7月21日    担当:新藤

Evaluation of telephone first approach to demand management in English general practice: observational study
出典: BMJ 2017; 358: j4197.
著者: Jennifer Newbould, Gary Abel, Martin Roland, et al.
<論文の要約>
【Objective】
General practitioner(GP)に受診を希望するすべての患者が、対面診療の予約をする前に電話でGPと相談する方法であるtelephone first approach(電話方式)の評価をする。

【Design】
定期的なヘルスケアデータ、全国調査データ、および一次データを用いた時系列および横断研究

【Participants】
電話方式を採用している147の一般診療施設と、イングランドにおける10%の無作為抽出された施設との比較

【Intervention】
2つの民間企業によって提供された、電話方式の業務計画や導入に対する管理サポート

【Main outcome measures】
●電話方式を採用している59施設の相談件数、および総相談時間(コントロールなし)
●Patient experience(GP患者調査を用いて電話方式採用施設とコントロールを比較)
●二次ケア利用および利用コスト(hospital episode statisticsを用いて、電話方式採用施設とコントロールを比較)
●主要解析はintention to treatで、電話方式に関する企業の規定に厳格に従ったとみなせる施設に限定した感度分析を併せて実施

【Results】
電話方式導入後、対面診療は大幅に減少した(調整後変化率:‐38%、95%信頼区間:-45%~-29%、p値<0.001)。電話相談が平均12倍増加した(1204%、633%~2290%、p<0.001)。電話相談、対面診療とも平均時間は減少したが、GP診療の総時間は平均8%増加した(-1%~17%、P=0.08)。ただしこの推定は不確実性が高い。上記の平均値は施設間変動をマスクしており、実際には大幅に業務量が軽減した施設と逆に増加した施設が混在している。GP患者調査で得られたイングランドの他施設との比較では、電話方式採用施設は診療までの時間の評価に大幅な改善を認めた(20.0%、18.2~21.9、p<0.001)。逆にわずかに悪化した項目も複数見られた。電話方式導入後、入院率が2%上昇した(1%~3%、p=0.006)。また、初期には救急受診率変化はなかったが、上昇したのち、年率2%減少した(1%~3%、p=0.005)。二次ケアの総コストは小幅増大した。

【Conclusion】
電話方式は一般診療における多くの問題の解決策となりうることを示した。この方式は全患者や全施設に適するわけではなく、受診デマンドへの万能薬でない。この方式がコストや二次ケアを平均的に抑制するという主張を支持するエビデンスは得られなかった。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■電話方式導入後に(初年の)二次ケア受診がやや増加したことは、電話相談により適切な救急受診が増加したとみなすよりも、医療経済学的に好ましくない結果と解釈する。二次ケア増加の理由や、増加を招いた個々の受療行動プロセスはこの論文からは分からない。
    ■患者の健康アウトカムは測定していないが、電話方式導入により患者が健康問題についてより早く相談する機会を得たことで、トリアージ効果やなんらかの健康アウトカム改善に寄与しうるのではないか。
    ■混合効果モデル解析結果で言及されているようにGP施設間のheterogeneityが高く、患者特性や医師の経験年数など本研究では測定されていない多くの因子が施設間でのアウトカムの大きなばらつきに影響を与えているかもしれない。
    ■医療者の業務負担軽減や医療費抑制のエビデンスは示されなかったが、今後(成功事例の検証などによる)洗練したシステム構築やICT発達により、医療経済の面でも改善の余地はありうるだろう。


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