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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2021.9.8

2021年9月8日    担当:岩淵

Parental education and cancer mortality in children, adolescents, and young adults: A case- cohort study within the 2011 Italian census cohort.
出典: Cancer. 2020;126(21):4753-60.
著者: Alicandro G, Bertuccio P, Sebastiani G, La Vecchia C, Frova L.
<論文の要約>
【背景・目的】
若年性がんの治療の進歩により、生存率は著しく改善された。しかし、すべての家族がそのよう な病気に求められる負担に対処するためのリソースを持っているわけではない。この研究は、小児、青年、若年成人における親の学歴とがん死亡率との関連を評価することを目的とした。

【デザイン・セッティング・対象者】
2011 年イタリア国勢調査コホート(20 歳未満かつ 6 年間追跡)の 10,964,837 人からサンプリングされたがん症例 1889 人と非がん症例 108,387 人に基づくケースコホート研究。死亡率比(MRR)は、ポアソン回帰モデルを用いて、学歴が高い(国際標準教育分類[ISCED]レベル 5-8)親、学歴が中程度([ISCED3-4)の親をもつ場合と、学歴が低い(ISCED レベル 3 未満)親を持つ場合を比較して推定した。

【結果】
追跡期間を通して、親の学歴:低(684)、中(858)、高(347)のがん症例が登録された。全ての新生物での MRR は、親の学歴が低い場合と比較して、中程度で 0.92(95%信頼区間[CI]0.83-1.03)、高い場合で 0.83(95%CI:0.72-0.95)であった。親の学歴が高い場合、全ての新生物での MRR は、小児で 0.88(95%CI、0.69-1.11)、青年で 0.87(95%CI、0.70-1.06)、若年成人で 0.64(95%CI、0.50-0.83)だった。

【参加者】
イギリスの22地域から募集された263,540人(女性:106,674人(52%)、平均年齢52.6

【結論】
高度な教育を受けた親を持つ小児、青年、若年成人ではがん死亡率が低下した。このことは学歴の低い親をもつ子どもたちの治療を最適化するためのさらなる取り組みを提唱する。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■本研究は、若年性がんという事象が発生する確率が極めて小さい事象についての調査するにあたり、大規模な国勢調査を使用したケースコホート研究という形をとっており、また非症例(コントロー ル) の設定や分析も含めて模範的な手法を用いており、研究デザインとして優れている。
    ■限界で触れられてはいるが、対象者の病期は、予後や家族の社会生活全般にも影響を及ぼす可能性があるため、病期も含めた検討ができるとより深い考察が得られたかもしれない。
    ■イタリアの医療体制について、地域による差の他に、無償の公立病院(予約から診察までが長い※ 緊急の場合は別)以外に、実際には無償ではない私立病院(予約から診察までが短い)が存在している。治療プロトコールが統一されていたとしても、初期診断や増悪時のアクセスで影響を及ぼしたかもしれない。


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