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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2021.10.20

2021年10月20日    担当:向山

Social isolation and its psychosocial factors in mild lockdown for the COVID-19 pandemic:
a cross-sectional survey of the Japanese population
~ COVID-19パンデミック時の自粛生活における社会的孤立とその心理社会的要因:日本人を対象とした横断的調査 ~
出典: BMJ Open 2021;11:e048380
著者: Nagisa Sugaya ,Tetsuya Yamamoto , Naho Suzuki, Chigusa Uchiumi
<論文の要約>
【目的】
本研究では、日本におけるCOVID19による「自粛生活」期間中の社会的に孤立した人々の社会人口統計学的、行動的および心理的特徴を調査した。

【デザイン】
横断研究

【セッティング】
日本で緊急事態宣言が最初に適用された7都道府県

【参加者】
緊急宣言が最初に適用された7つの都道府県に住む11,333人(女性52.4%、46.3±14.6歳)。オンライン調査は、緊急事態宣言の最終段階である2020年5月11日から5月12日までの間に実施した。

【主要アウトカム】
Lubben Social Network Scale(LSNS-6)

【結果】
男性(95%CI 1.60〜1.98)、中年層(95%CI 1.55〜1.93)、および低収入(年間世帯収入<200万:95%CI 2.29〜3.54)が社会的孤立を予測することがわかった。学生であることは社会的孤立に対する保護因子だった(95%CI 0.26から0.62)。社会人口統計学的特性によるLSNS-6の各項目の比較では、男性は個人的な問題に対して相談する相手(95%CI -0.37〜-0.28)や助けを求める相手(95%CI -0.39~-0.30)が少ない傾向にあり、中年層は友人のソーシャルネットワークが少ないことがわかった。さらに、社会的孤立は、身近な人々とのオンラインのやり取りの減少(95%CI -1.28~-1.13)および自粛生活での楽観的思考の減少(95%CI -0.97~-0.86)と関連していた。

【結論】
我々は、自粛生活下での社会的孤立に関連する社会人口統計学的および心理的特徴を特定した。これらの結果は、パンデミック時の精神衛生を維持するために、社会相互作用を改善するための介入が必要となる集団を特定するための有用な資料となることが期待される。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■対象者について、無作為抽出でなかったため、偏りが生じている可能性がある。また、今回の調査はオンライン調査であったため、インターネット環境が整っている対象者に偏りが生じている可能性がある。
    ■調査データについて、社会人口統計データに医療従事者であるかどうかの質問項目があったのにも関わらず、結果に反映されていない。本人または家族が医療従事者であることが社会的孤立にどのように影響するかは検討する余地がある。
    ■結果について、社会的孤立(LSNS₋6)の各項目と社会人口統計データとの検定(t-test, ANOVA)を行っているが、3群以上の変数における多重比較の結果(post-hoc test)が明記されておらず、分かりにくかった。また、今回は社会人口統計データの各項目と社会的孤立との多変量ロジスティック回帰分析の結果が示されていたが、社会人口統計データの各項目の相互作用や相乗効果により社会的孤立がどの程度変化するかを検討することができればより深い考察が行えたかもしれない。
    ■今回得られた結果について、調査対象が都市部であったため、地方での調査を行った場合には結果が異なる可能性がある。また、今回の結果は、緊急事態宣言が発令されてからの社会的孤立に対する短期的影響を検討しているが、社会的制約が長期に及んだ場合には結果が異なる可能性がある。


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