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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2021.11.17

2021年11月17日    担当:小野

Childhood obesity and dental caries: an ecological investigation of the shape and moderators of the association
~子どもの肥満とう蝕:関連の形状と因子に関する生態学的研究~
出典: BMC Oral Health (2020) 20:338
著者: Vahid Ravaghi, Amir Rezaee, Miranda Pallan and Alexander John Morris
<論文の要約>

【背景】
食事の糖分という共通の危険因子があるにもかかわらず、肥満とう蝕の関連性はいまだに不明である。イングランドの児童を対象に,肥満とう蝕の関連性を生態学的研究によって調査した。

【方法】
イングランドの下層区分の地方自治体326か所のデータを分析した。肥満とう蝕に関するデータは2014/15~2016/17年のNational Child Measurement Programmeと2016/17年のNational Dental Epidemiology Programmeから取得した。分数多項式モデルを用いて、肥満とう蝕との関連性の形を調べた。また一人親、民族、フッ化化合物の修飾効果についても検討した。

【結果】
2次分数多項式モデルは、肥満とう蝕の関連性について線形モデルよりも優れた適合度を示さず、線形モデルの方が適していることが分かった。調整前は有意な関連性があったにもかかわらず、貧富の差の影響を調整すると、肥満とう蝕の有病率との間に関連は見られず(coefficient=0.2, 95% CI - 0.71, 0.75)、肥満と重症度との間にも関連は見られなくなった(coefficient=0.001 95% CI - 0.03, 0.03)。完全調整モデルでは,民族としての白人の割合または水道水にフッ素が添加された地域にいることが、う蝕の減少と関連していた。肥満とう蝕の関連性は、貧富の差、白人の民族性、ひとり親の影響によって緩和されていた。

【結論】
肥満とう蝕の関連性は線形であり、いくつかの人口統計的要素により緩和された。結果として、肥満やう蝕を減らす介入は、特定の人口グループに大きなインパクトを与える可能性がある。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■今回の調査では地域ごとにおけるう蝕と肥満との関連性を調査しており、個人レベルでのう蝕と肥満との関連性を推定することができない。そのため、本研究の結果をそのまま個人レベルで考察することは難しく、今後は個別レベルを対象とした研究による確認が必要である。
    ■本研究のなかで、う蝕と肥満の関連においては貧困による影響が大きいということが分かった。先行研究では貧困を含め調整因子を十分に考慮せずにこれらの関連について検討をしていたため、今後の研究においては本研究と同様に貧困を考慮に入れて解析を行う必要がある。
    ■本研究は生態学的研究であり、解析により得られた結果の解釈においては生態学的誤謬に注意しなくてはならない。考察においてこれらの誤謬の可能性についての記述があまり見られず、誤った解釈を導く可能性をもう少し論じることが出来るとよかった。


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