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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2022.2.2

2022年2月2日    担当:齊藤

The association of COVID-19 infection in pregnancy with preterm birth: A retrospective cohort
study in California
~妊娠中のCOVID-19感染と早産との関連について:カリフォルニアにおける後向きコホート研究~
出典: Lancet Reg Health Am. 2021 Oct; 2: 100027. Published online 2021 Jul 30. doi: 10.1016/j.lana.2021.100027
著者: Deborah Karasek, PhD, MPH, Rebecca J. Baer, MPH, Monica R. McLemore, PhD, MPH, RN, FAAN, April J. Bell, PhD, MPH, Bridgette E. Blebu, PhD, MPH, Joan A. Casey, PhD, Kimberly Coleman-Phox, MPH, Jean M. Costello, Jennifer N. Felder, PhD, Elena Flowers, PhD, RN, Jonathan D. Fuchs, MD, MPH, Anu Manchikanti Gomez, PhD, MSc Kayla Karvonen, MD Miriam Kuppermann, PhD, MPH, Liang Liang, PhD, Safyer McKenzie-Sampson, MSPH, Charles E. McCulloch, PhD, Scott P. Oltman, MS, Matthew S Pantell, MD, MS, Xianhua Piao, MD, PhD, Aric A. Prather, PhD, Rebecca J. Schmidt, PhD, Karen A. Scott, MD, MPH, FACOG, Solaire Spellen, MPH, Jodi D Stookey, PhD, Martha Tesfalul, MD, Larry Rand, MD, and Laura L. Jelliffe-Pawlowski, PhD, MS
<論文の要約>

【はじめに】
多様な人種・民族を含む集団や慢性疾患を持つ人々の集団における、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と早産又は早期出産との関連についての我々の理解は限られている。

【方法】
2020年7月から2021年1月までの間にカリフォルニア州人口動態統計局の出生証明書に記録された出生(n=240,157)の集団におけるCOVID-19と早産(PTB)との関係について研究を行った。出生を分類するために妊娠周期の産科的に最良な推定妊娠期間を用いて、集団を、妊娠早期の早産(VPTB、<32週)、妊娠後期の早産(PTB、< 37週)、早期の出産(早期満期)(37、38週)、正期産(39-44週)に分け、これらはそれぞれ乳児の健康と発達に対して独立したリスクを与えるとした。またこれとは別に、我々はPTB及びVPTBと、COVID-19診断、高血圧、糖尿病、肥満との組み合わせの関係についても算出した。

【結果】
出生証明書上でCOVID-19診断を受けた出産者は、2020年7月から2021年1月までの間全ての人種/民族の集団で増加し、その割合はアメリカインディアン/アラスカ先住民(12.9%)、ハワイ先住民/アジア・太平洋諸島系アメリカ人(11.4%)、ラテン系アメリカ人(10.3%)の順で高かった。またCOVID-19診断は、VPTB (aRR1.6、95%CI[1.4、1.9])、PTB(aRR1.4、95%CI[1.3、1.4])、早期の出産(aRR1.1、95%CI[1.1,1.2])のリスク上昇と関連があった。人種/民族や保険のステータスによる全体的な関連付けの効果修飾はなかった。さらにCOVID-19診断は、高血圧、糖尿病、あるいは肥満の集団におけるPTBのリスク上昇に関連していた。

【解釈】
大規模な人口ベースの研究においては、特に医学的な併存疾患を持った人々の集団で、COVID-19診断はVPTB、PTB、及び早期の出産のリスクが増加した。COVID-19変異株の蔓延増加を考慮して、ワクチン接種などの予防措置は妊婦が優先されるべきである。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■本研究はCOVID-19感染が蔓延した一時期についてのみの研究であり、感染していない人の早産のリスクがCOVID-19感染の発生以前と比較して変化したのかの記載がない。もし感染していない人の早産のリスクが上昇していた場合は、COVID-19感染によって早産のリスクが上昇したとは必ずしも言えない為、これも本研究の限界であると考えられる。
    ■本論文では、COVID-19感染が早産をもたらすメカニズムについての記載が明確でない。Discussionにて早産をもたらした原因として、「隔離政策や、経済の不確実性、失業、立ち退き、食糧不安、育児負担の増加などの併発」が挙げられているが、変異株の発生などに伴い、他にもCOVID-19感染が早産をもたらす更なる原因がある可能性がある。
    ■本研究では出生証明書に記載されたCOVID-19診断結果を用いている。日本では出生証明書にこういった情報は記載されていないが、カリフォルニア州などでは出生証明書にCOVID-19診断結果だけでなく、ワクチンの接種記録なども記載されている。


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