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山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2022.3.9

2022年3月9日    担当:宮内

Gut dysbiosis promotes M2 macrophage polarization and allergic airway inflammation via
fungi-induced PGE
~腸内細菌の異常は、真菌によるPGE₂を介してM2マクロファージの分極とアレルギー性気道炎を促進する~
出典: Cell Host Microbe. 2014 January 15; 15(1): 95–102. doi:10.1016/j.chom.2013.12.010.
著者: Yun-Gi Kim, Kankanam Gamage Sanath Udayanga, Naoya Totsuka, Jason B. Weinberg, Gabriel Núñez, and
Akira Shibuya
<論文の要約>

【目的】
抗生物質(Abx)投与により誘発された腸内細菌叢の異常が、肺のマクロファージの極性をM2表現型に移行させることにより、アレルギー性気道炎症を促進することを報告する。

【デザイン】
マウスを用いた動物実験

【結果】
Abx投与マウスに由来する肺胞マクロファージの移植は、アレルギー性気道炎症を増加させるのに十分であった。Abx投与により腸内常在菌Candidaが過剰増殖し、血漿中のPGE2濃度が上昇し、肺でのM2マクロファージ極性が誘導された。シクロオキシゲナーゼ阻害剤であるアスピリンとセレコキシブによるPGE2合成の抑制は、Abx投与マウスのM2マクロファージ誘導を抑制し、アレルギー性気道炎症細胞浸潤を減少させた。

【結論】
Abx投与は、腸内で特定の真菌種を過剰増殖させ、遠隔部位でM2マクロファージの活性化を促進し、アレルギー性炎症を含む全身反応に影響を及ぼす可能性がある。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■真菌の腸内における検出頻度について、ジャーナルクラブでは正常な成人の腸内で真菌が検出される頻度は非常に低いという指摘もあったが、本論文でもおり、腸内微生物叢の99%以上は細菌で構成されているものの、健康なヒト成人の約70%の消化管切片からは真菌(そのほとんどはカンジダ属)も検出される(Cohen et al、1969年)としており、腸内細菌に占める真菌の割合は非常に低いと思われる。一方、本研究では、「抗生物質投与は腸内真菌の過剰増殖を促進し、PGE2レベルの上昇を介して、M2マクロファージの極性とアレルギー性気道炎症細胞浸潤の増加に寄与する。」としているが、実際には、Abx投与マウスの肺や口腔内では真菌の過剰増殖は観察されなかったと報告している。Abx投与によってアレルギー性起動炎症細胞診順は称しているが、それが本当に真菌増殖を介しているのかは検討が必要である。


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