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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2022.9.14

2022年9月14日    担当:吉井

Foot Core Training to Prevent Running-Related Injuries-A Survival Analysis of a Single-Blind,
Randomized Controlled Trial-
ランニング関連損傷予防のためのフットコアトレーニング-単盲検的生存分析、無作為化比較試験-
出典: American Journal of Sports Medicine.2020;48(14):3610-3619
著者: Ulisses T. Taddei, Alessandra B. Mtias, Marcos Duarte, Isabel C.N. Sacco
<論文の要約>

【背景・目的】
ランニング関連傷害(RRI)は、この健康的な身体活動へのレクリエーションランナーの参加を中断または終了させ得る広範な脅威である。今日まで、RRIの予防するための満足のいく治療法は開発されていない。本研究の目的は、一年のフォローアップ期間におけるレクリエーション長距離ランナーのRRI発生率を減らすための基礎的アプローチに基づく新たなフットコア筋力強化プロトコルの有効性を調査することである。研究デザインは無作為化比較試験にて行った。
【方法】
参加者(118人のランナー)を、ベースラインで評価し、介入群(n=57)またはコントロール群(n=61)のいずれかに無作為に割り付けた。介入群は足・足関節周囲筋群に焦点を当てた8週間のトレーニングコースを受け、その後、遠隔にて監督されたトレーニングを受けた。評価は、足の筋力や足の姿勢に関する3つの個別の生態力学的評価と、12ヵ月間における各参加者の走行距離、ペース、および傷害発生率についての週ごとの報告で構成されていた。

【結果】
コントロール群の参加者は、12ヵ月の調査期間内で介入群の2.42倍(95%CI, 1.98-3.62)RRIを経験する可能性が高かった(p= .035)。損傷までの時間は、足の姿勢指数(p= .031; r=0.41)および足の筋力増大(p= .044; r=0.45)のスコアと有意な相関があった。このフットエクササイズプログラムは4-8ヵ月のトレーニングでレクリエーションランナーの効果的なRRIリスク低下の証拠を示した。

【結論】
新しいフットコア強化プロトコルに無作為割付けされたレクリエーションランナーは、コントロール群に比べて2.42倍RRIの割合が低かった。損傷の根底にある生態力学的なメカニズム、損傷のタイプ、および最大限に利益を得る可能性のあるランナーのサブグループをよりよく理解するために、更なる研究が推奨される。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■本研究はベテラン長距離レクリエーションランナーの足・足関節機能の改善に焦点を当てた、特定のフットトレーニング予防プロトコルに関連するRRIを評価した最初の研究である。
    ■足の姿勢指数(FPI)を-7≦x≦1, 1
    ■研究の限界にて述べられている「グループセッション中の情報交換」によって、コントロール群が介入群の影響を受けた可能性があるが、それをどのように制御しているのかは不明である。臨床への示唆をより大きく示すために、採用されているIntension-to-treatの方法論まで言及されるとよかった。
    ■リハビリテーションの分野において運動療法のRCTは、2アームの並列性を保つことが難しいため希少である。その中でも本研究は、RRI発生率の正確な把握やトレーニング遵守率向上を目指したソフトウェアの開発から行っていること、また多くのスタッフおよび時間を割くことで結果を出した、当該領域に新たな知見をもたらす貴重な報告となっている。


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