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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2022.11.16

2022年11月16日    担当:原田

Leisure-time physical activity before pregnancy and risk of hyperemesis gravidarum: a population-based cohort study
妊娠前の余暇身体活動と妊娠悪阻のリスク:集団ベースのコホート研究
出典: Preventive Medicine Volume 125, August 2019, Pages 49-54
著者: Katrine M. Owe, Nathalie Støer, Borgny H. Wold, Maria C. Magnusf, Wenche Nystad, Åse V. Vikanes
<論文の要約>

【目的】
妊娠前の余暇時間での身体活動(LTPA)が妊娠悪阻(HG) のリスクと関連するかどうかを調査する

【デザイン】
前向きコホート研究

【セッティング】
ノルウェーで年間100件以上の出産を扱う病院・クリニックにて妊娠中の超音波検査を予約した女性

【参加者】
単胎児を出産し、妊娠17 週と30 週に実施した質問紙調査に回答したThe Norwegian Mother and Child Cohort
Study(MoBa)参加者の初産婦 37,442名

【曝露】
LTPA(妊娠前3カ月間の自己申告による頻度を妊娠17週目に回答)

【アウトカム】
HG(妊娠25 週目までに起きた、入院が必要な長期の吐き気・嘔吐と定義し、妊娠30週目にその有無を自己申告にて回答)

【共変量】
出産時の母親の年齢、妊娠前の喫煙習慣、教育年数、妊娠前のBMI

【結果】
合計398名(1.1%)の女性がHGを発症した。妊娠前について、56.7%が少なくとも週3回LTPAを実施した。一方、18.4%の女性は週に1回以下しかLTPAを行っていなかった。LTPAを週3回から週5回行っている女性と比較して、妊娠前にLTPAを行わなかった女性では、HGのオッズが増加した(調整オッズ比:1.69、95%信頼区間:1.20-2.37)。LTPAとHGとの関連は妊娠前のBMIによって違いがみられたが、妊娠前の喫煙の有無については変わらなかった。

【結論】
妊娠前のLTPAの不足は、HGの発生確率の上昇と関連していた。HGの症例が少なく統計的検出力が低いため、本研究の結果の解釈には注意が必要である。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■本研究におけるLTPAの質問紙調査では、各運動の実施の有無を聞いているだけであった。運動の強度や頻度、継続時間の違いによる影響もあるのではないかと考えられることから、例えばMETsのような運動の強度、時間含んで評価できる指標を用いるとよかったのではないかと考える。
    ■共変量は母親の妊娠時の年齢、妊娠前のBMI、教育年数、喫煙習慣の4つとしているが、経済状況も交絡因子として共変量に含めてもよかったのではないか。経済的な余裕があまりない場合、LTPAができる時間的・経済的余裕もないことが考えられる。
    ■“HGに関する回答が欠損している群はLTPAの頻度が比較的に低いため、低頻度のLTPAがHGと関連しているとしたら、この群を今回の統計解析に含めるとLTPAとHGの関連性は強化されたことが考えられる“とDiscussionにある。しかし、LTPAとHGの関連の仮定は適さないため、ランダムに除外されていると述べたほうが有意な関連の説明につながるのではないか。


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