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山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2023.1.18

2023年1月18日    担当:岡

Effect of a Home-Based Exercise Program on Subsequent Falls Among Community-Dwelling
High-Risk Older Adults After a Fall
地域在住の高リスク高齢者における転倒後の転倒に対する在宅エクササイズ・プログラムの効果
出典: JAMA. 2019;321(21):2092-2100. doi:10.1001/jama.2019.5795
著者: Teresa Liu-Ambrose ; Jennifer C. Davis ; John R. Best; et al
<論文の要約>

【重要性】
すでに転倒を経験している高リスクの高齢者において、運動がその後の転倒を減らすかどうかは不明である。

【目的】
転倒を指標として転倒予防クリニックに紹介された高齢者において、転倒予防策としての家庭用運動プログラムの効果を評価すること。

【デザイン・設定・参加者】
過去12ヶ月以内に転倒した70歳以上の成人で、転倒予防クリニックから募集した人を対象に、2009年4月22日から2018年6月5日まで実施した12 ヶ月間の単盲検無作為化臨床試験である。

【介入方法】
介入(介入群:n=173)または、老年専門医による転倒予防ケアからなる通常ケア(通常ケア群:n=172)に無作為に割り付けた。いずれも12ヵ月間実施した。

【主要アウトカムと測定】
主要アウトカムは、12ヵ月間の自己報告による転倒回数とした。有害事象データは運動群のみ収集され、運動介入に関連する転倒、傷害、または筋肉痛から構成された。

【結果】
無作為化された345例(平均年齢81.6[SD 6.1]歳、女性67%)中、296例(86%) が試験を完了した。平均追跡期間338(SD 81)日において、介入群172名で合計236件の転倒が発生したのに対し、通常ケア群172名で366件の転倒が発生した。1人年当たりの転倒の推定発生率は、1.4(95%CI, 0.1-2.0)vs 2.1(95% CI, 0.1-3.2)であった。転倒発生率の絶対差は1人年当たり0.74(95% CI, 0.04-1.78;P = 0.006)転倒で、発生率比は0.64(95%CI, 0.46-0.90;P = 0.009)で あった。介入に関連する有害事象は報告されなかった。

【結論・関連性】
転倒後に転倒予防クリニックでケアを受ける高齢者において、在宅での筋力およびバランス再教育の運動プログラムは、老年専門医による通常のケアと比較して、その後の転倒率を有意に減少させた。これらの知見は、二次的な転倒予防のためのこの在宅運動プログラムの使用を支持するが、他の臨床環境での再現が必要である。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■介入群と通常ケア群で分けて研究しているが通常ケア群の具体的な通常ケア内容がガイドラインに沿ってということしか記載されてないため、両群の具体的な介入の差が分かりづらいように感じた。
    ■介入群で転倒の件数の減少が認められたが、副次的アウトカムである身体機能や認知機能などの変化は両群での有意差がない。また転倒減少のメカニズムなどの考察もされていないため、なぜ転倒件数が軽減したかが気になる。
    ■介入群のみで有害事象の評価をしており、有害事象の評価をすることで介入群の被験者に転倒に対しての意識を通常ケア群よりも持たせるため、意識によるバイアスが生まれやすいのではないかと考える。


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