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山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2023.1.25

2023年1月25日    担当:宮内

Night shift work surrounding pregnancy and offspring risk of atopic disease
出典: Plos One April 16, 2020
著者: Samantha Rada et al.
<論文の要約>

【背景】
夜勤勤務は複数の慢性疾患の新たな危険因子と考えられており、概日リズムの乱れから生じるストレスにより炎症が増加する可能性が高いとされている。以前の研究では夜勤勤務する人のエピジェネティックな変化が報告されており、世代を超えて影響を与える可能性が示唆されている。

【方法】
NHSIIの母親4044人の妊娠前及び妊娠中の夜勤勤務とGUTSに登録された子供4813人のアトピー性皮膚炎、喘息、花粉症リスクの関連を検討した。一般化推定方程式回帰モデルを用いて多変量調整オッズ比及び95%信頼区間を推定した。

【結果】
妊娠前の母親の夜勤勤務と、子供のアトピー性皮膚炎、喘息、花粉症リスクとの間に有意な関連は見られなかった。妊娠中の夜勤勤務に関する情報を持つ母親545人においても、夜勤勤務は子供のアトピー性皮膚炎、喘息、花粉症とは相関がなかった。親のアトピー歴別と母親のクロノタイプ(生まれつきの睡眠パターン)別による各層別解析では、夜勤勤務歴(「<3年未満」、「3-5年」、「≧6」)の一部で、子供のアトピーと統計学的に有意な結果が見られたが一貫性はなかった。また、夜勤勤務歴を連続変数とした傾向分析においても有意な関連は見られなかった。

【結論】
妊娠前及び妊娠中の夜勤勤務は子供のアトピー性皮膚炎、喘息、花粉症発症のリスクを増加させないことが分かった。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■夜勤勤務の対象が看護師に限定されていることから標本集団に偏りが生じている可能性がある。また、対象者の選定で非満期妊娠(妊娠37週未満、母親1001人、子供1183人)が除外された。早産とアトピー性疾患の発症が関連していることを考慮すると、除外することが妥当かどうかや、別途の分析といった検討が必要だったのではないか。
    ■曝露因子の設定について、夜勤の継続年数が扱われている。夜勤の仕事内容や夜勤の時間(2交代制または3交代制で夜勤時間が12時間または8時間と異なる)、母親本人のストレスの感じやすさ、ストレスに対するサポート体制も考慮が必要と考えられた。
    ■調整変数について、研究の強みとして複数の潜在的な交絡変数を考慮できたとある。本論文のディスカッションで述べられているように子供の生後の環境要因(家におけるカビの繁殖や、子供の保湿など)の影響も考慮したほうが良いと考えられる。
    ■研究の限界がアトピー性疾患の自己報告に依存していることを挙げている。これに対し、母親からの報告と子供からの報告を整合させたことで補足したとある。信頼性を担保するにあたり医師の診断を用いたほうが良いのかもしれない。


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