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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2023.2.8

2023年2月8日    担当:向山

Impact of social restrictions during the COVID-19 pandemic on the physical activity levels of adults aged 50–92 years: a baseline survey of the CHARIOT COVID-19 Rapid Response prospective cohort study
COVID-19 パンデミック時の社会的制限が 50 ~ 92 歳の成人の身体活動レベルに与える影響:CHARIOT COVID-19 Rapid Response 前向きコホート研究のベースライン調査
出典: BMJ Open: first published as 10.1136/bmjopen-2021-050680 on 25 August 2021.
著者: David Salman,Thomas Beaney, Catherine E Robb, Celeste A de Jager Loots, Parthenia Giannakopoulou,
Chinedu T Udeh-Momoh, Sara Ahmadi-Abhari, Azeem Majeed, Lefkos T Middleton, Alison H McGregor
<論文の要約>

【目的】
身体活動不足は高齢者でより一般的であり、社会的孤立と孤独感に関連し、疾病率と死亡率の増加に寄与している。UKでのCOVID-19の感染防止のための社会的制限 (ロックダウン) が、高齢者の身体活動 (PA)レベルへの影響と、それらの変化への社会的予測因子を調査した。

【デザイン】
前向きコホート研究のベースライン分析

【セッティング】
2020年4月から7月にかけて、ロンドン北西部の一般開業医の診療所からCognitive Health in Ageing Register for
Investigational and Observational Trials(CHARIOT)コホートに登録された成人に参加を呼びかけた。

【参加者】
50~92歳の認知的に健康な成人 6,219 人が調査に回答した。

【主要アウトカム指標】
ロックダウン導入前後の自己申告によるPAを、MET(Metabolic equivalent of task)指数で測定したもの。 PAと人口統計学的な関連、ライフスタイル、社会的因子、気分、フレイルとの関連性。

【結果】
平均 PA は、ロックダウンの導入後、3519 MET 分/週から 3185 MET 分/週に有意に低下した (p<0.001)。交絡因子とロックダウン前のPAを調整した結果、ロックダウン導入後のPAレベルは、85歳以上 (640 (95% CI 246~1034) MET分/週未満)、離婚または独身(240 (95% CI 120~360)MET分/週未満); 一人暮らし (277(95%CI 152~402) MET分/週未満); しばしば孤独を感じる (306 (95% CI 60~552) MET分/週未満); うつ病の症状を示した(1007 (95% CI 612~1401) MET 分/週未満)で、 50-64歳、既婚、同棲、孤独感やうつ病を報告していない人に比べ、それぞれで低いことが分かった。

【結論】
社会的孤立、孤独、うつ病のマーカーは、UKでロックダウンが導入された後の PAの低下と関連していた。これらのグループのPAを増加させるため重点的な介入を検討する必要がある。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■限界にも書かれているが、参加者は一般の人々よりも活動量の多い群だったことが考えられ、自己選択バイアスが生じている可能性がある。また、PAの算出方法がアンケート調査による想起法であるため、ロックダウン中の身体活動について過大評価または過小評価している想起バイアスも生じている可能性がある。
    ■共変量として用いられている「世帯収入」「母親の収入の必要性」「予期せぬ出費や生活費への対応力」といった変数は、多重共線性の可能性が考えられる。
    ■本研究の「仕事のストレス」には、職場での人間関係に関する検討がなかった。一方で、日本の仕事のストレス尺度ではあまりみられない仕事での身体的なストレスについての検討が充実しており、違いを感じた。職場での人間関係も仕事をしていくうえでのストレスに大いに関係してくると考えられるため、人間関係に関する情報もあるとよかったのではないかと考えた。


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