研究グループ

岡本

“自然免疫が関与する乾癬の研究”

乾癬は慢性の炎症性角化症である。難治性であり、広範囲に皮疹が及んだり、関節炎を合併したりする場合もあり、その際には患者の生活の質(QOL)が著しく低下することがある。原因不明であるものの、様々な薬剤(シクロスポリン、TNF-α阻害薬、IL-12/23阻害薬、IL-17阻害薬など)の治療効果からここ数年で病態の理解は大きく進んだ。表皮における角化細胞の異常増殖と真皮での免疫細胞の活性化が密接に関与し、乾癬の病態を形成していると考えられており、つまり、自然免疫系と獲得免疫系の両者の異常が関与することが示唆されている。

「ケブネル現象」は乾癬患者の健常な皮膚に摩擦、伸展、搔破などの外的な刺激を与えると乾癬の皮疹が誘発される現象であり、正常皮膚に乾癬病巣が誘発されるという点で乾癬の発症に大きく関与していると推測される。その機序は1)皮膚に外的な刺激が加わり、表皮細胞から様々な物質(Danger signal、各種サイトカイン/ケモカイン、抗菌ペプチドなど)が放出される。2)放出された物質が乾癬の病態を誘発する、と考えられているが、いまのところコンセンサスの得られる機序の解明はなされていない。

私たちのグループではこのケブネル現象に着目し、自然免疫系の乾癬への関与に関する研究を行っている。細胞に伸展刺激を加えるというケブネル現象の実験室モデルを作成し、それらがどのように乾癬の病態を誘発するのかについて検討し、ケブネル現象の詳細な機序を明らかにすることを目標としている。