研究グループ

川村グループ

“性行為HIV感染におけるToll-like receptorの役割”

  1. HIV感染のリスクは性感染症(STD) により上昇することが知られている。STDは細菌、ウイルス、真菌などの感染であり、これら病原体の生体への侵入は樹状細胞(DC)上に存在するToll-like receptor(TLR)により感知されている。
  2. 近年、HIVの感染ターゲット細胞は樹状細胞の亜型である皮膚・粘膜ランゲルハンス細胞(LC)であることが証明された。

以上2つの背景より、STDの原因病原体は皮膚・粘膜内LC上に発現されるTLRを刺激し、HIV感染LCのウイルス産生を増加させることで宿主のHIV感染を促進させる、と仮説を立て研究を進めている。

我々は、ヒト皮膚LCのキャラクターをもち、広く用いられているヒト単球由来LC-like DC、あるいは当科手術で患者同意のもと得られた不要・余剰な皮膚よりepidermal LCを単離し、以下のことを証明した。

  • FACSを用い、LCはTLR1, TLR2, TLR3, TLR6を発現していること; 皮膚・粘膜LCはSTDの原因病原体のうち、グラム陽性球菌あるいは何らかのウイルスを認識する 可能性を示唆する
  • LCに発現するTLR1-3, 6は機能的であること;TLR ligands kit (TLR1~9 ligands、Invivogen®)をLCに添加し、
    24時間後に活性化マーカーであるCD83/CD86の発現誘導能あるいはサイトカインの 産生能を検討した
  • STDのHIV易感染性 (entry)あるいはHIV複製量(replication)への関与、機序; LC-like DC, epidermal LCをHIVBa-L (R5HIV)に感染させる前後で、TLR ligands kitにて処理した。前処理したものはentry, 後処理したものはreplicationを反映することになる。1週間培養後、HIV感染LC数をHIV p24に対するモノクローナル抗体を用いてFACSで定量した。TLR2 ligandであるListeria monocytogenes (グラム陽性菌)、また同様にグラム陽性菌の菌体構成成分である、lipoprotein, LTA, PGNで処理した際に、無処理群に比べ有意にLCのHIV entry, replicationが増加することを確認した。

    そのメカニズムとして、

  • TLR2 ligandはLC-like DCのCD4をup-regulationする (FACS)
  • TLR2 ligandは、レトロウイルス複製阻害因子であるAPOBEC3G/3Fの発現を低下させる (real-time PCR)