山梨大学医学部免疫学講座
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(その1)休日に大学のそばのお風呂家さんに行ったら湯船で見ず知らずのおじさんから「先生、あの新病院はいつできるし?」と尋ねられたので「建物は来年の夏頃にはできるけど引っ越しとかあるから稼働するのは早くて来年末ですかね。」と答えた。「外来、待たんですむようになるんか?」とさらに聞かれたので「たぶん。あと医学は日進月歩なので最新の病院が一番いい病院だからできたら日本一の病院ですよ。」と答えておいた。でもいったい誰なんだあの人(笑)。
(その2)寝坊してスタバに行くのが遅れたら薬理のK先生(こちらも常連)が注文カウンターにちょうど居た。一緒に並んだら「今日は二人でお待ち合わせですか?(笑)」と店長さんに言われたので「ええ、昨日の夜から一緒でした。」と答えておいた。
いつも最大2日くらいしか学会には参加しないので今回3日間福岡に滞在できたことは、「研究」について色々な考えをまとめる時間ができて良かった。時計研究も1個の細胞ベースで考えるのが基本であり、分子時計は細胞が参照あるいは利用するプログラムの1つと思った方が概日時計の本質に迫れると改めて思えた。
常に細胞の目的を中心に考えることを忘れないようにしたい。今年度は腰を抜かすような研究はなかったと思うけど(それはそれで安心したが)いくつか気になったことを以下にあげると
(1)シアノバクテリア研究などから推測すると概日時計のしくみは、転写翻訳ループの他にもう1つ周期が安定した時計があるのだろう。ほ乳類の細胞でこの役割を果たしている分子時計の発見が早晩あるかもしれない。
(2)レタスの成長を早めるためには概日時計と環境(光)を同期させることが必ずしも最善の手段ではなくて(もちろんある程度同調しないと成長は阻害されるのだが)少しくらいストレス(光同調がずれる、あるいは光以外のストレス刺激を与える)ほうが良いかもしれない、という考え方はヒトでもあてはまりそうでとても興味深かった。レタスの場合ストレスは糖代謝に反映されるらしい。人間も同じである。何か新しい研究ができそうな気がする。
(3)時計遺伝子mRNAのメチル化はどの細胞(マスト細胞)でも起きているなら新しいアレルギーの治療標的になるかもしれない。
(4)時々は研究の歴史(時計研究の歴史やアレルギー研究の歴史)に思いを巡らせて自分達の研究の位置づけをしたほうがよい。欧米の研究者は当該研究のコンテキストを常に意識している。CNS系の雑誌に投稿するとうんざりするほど指摘される“conceptual
advance”というものについて考える基盤にもなる。
(5)ヒトは本来一日2回眠っていた生き物らしい。このことは知っておいたら何かの役にたちそう。
(6)やっぱり(思ってた通り)TGF-β(の発現)も時計Clockの制御を受けるらしい。
(7)慢性腎不全など臓器障害がひどいとClock発現も変化する(時計が変調?する)。多臓器連関は流行なので、腎臓と肝臓を一緒に調べていくようにアレルギー疾患でも鼻粘膜と肝臓とか、肺と腎臓とか脂肪組織とか関連づけて調べると面白いかもしれない。
(8)副腎皮質ホルモンが痛み感受性をあげる理由(メリット)は何だろう?すべての痛みに共通なのだろうか?
(9)喘息は薬(吸入ステロイドとβアゴニストの配合剤)が良すぎて時間治療もくそもなくなっているのは研究者としては困ったことだ(笑)。
(10)三日間、昼ラーメン夜もつ鍋の生活は確実に体重を増加させる。
概日リズムと睡眠と代謝の研究者が集まったシンポジウムに参加した。ジェネティクス、神経回路、製薬、生化学、システムバイオロジー等々あえて異なるアプローチの研究者を集めていたところがとても現代的だった。
(1)膵臓のインシュリン分泌はBMAL1変異でダメになるらしい。インシュリンの貯蔵過程までは正常なので開口分泌の障害とのことだった。マスト細胞の脱顆粒もチェックしたい。
(2)細胞内の糖、アミノ酸、脂質代謝制御に関わる遺伝子群はほぼすべてE-box配列を持っていて、CLOCK/BMAL1の標的遺伝子である。つまり細胞内の概日時計の主要な機能は細胞内代謝系の時間的制御に他ならない。Chip-SeqでみるとCLOCK,
BMAL1, PER, Cryはすべて標的遺伝子群にくっついたり離れたりしているし、(on/off)、RNA polymeraseの結合やヒストンのメチル化(H3K3me3とか)も概日リズムを示していることが証明された(BMAL1は日中CT6でピーク)。とくに概日リズム性の発現を示す遺伝子群は転写にかかるエネルギーコストが高い(発現レベルが高い)遺伝子群らしい。なので高濃度グルコース下で細胞培養するとそれらの遺伝子群の振幅が大きくなる(平均値は変わらない)。細胞の見事な知恵の1つだ。あとPerやCryはClock/Bmal1とindependentにくっついている標的遺伝子がかなりある。特にCryに著明。Cry独自に核内受容体とかの転写因子に結合するケースが多いと思われる。
(3)Per2のC末端部分でCryとFBXL3が競合的に結合する。なのでCryがないとPerの発現は不安定。
(4)Per1k/oマウス、Per2k/oマウスはともにLD,DDで行動の概日リズムにはあまり変化なく、LL条件で著明に変化を受ける。光による位相変化と概日リズムの維持に重要な役割をしている。
(5)時計遺伝子欠損細胞やマウスを時計遺伝子の正常体、変異体とかレスキューする実験が多かった。どれもすごく上手く機能しているのがびっくりだったが、そんなデータがあれば論文に説得力が増す。
(6)「Chronobiology Meets Big Data: Human“in the Wild”」っていうタイトルのポスター提示があったけどレトリックが素晴らしい。あと“Next
generation”の多用も多かった。かなり使い古されてるかもだが、僕らもできたらそのうちどこかで使いたい(笑)
追記:
同じ日に別の場所で東大医科研の田中教授のセミナーを聴いた。グルココルチコイドレセプター(GR)の生理的役割は生体にストレス(高血圧、食事不足、感染等々)がかかったときにいろんな細胞や組織で様々な代償機能を発現させて恒常性を維持することのように見えた。なので本当の意味でストレスフリーなら要らないのかもしれない。ただし生きていればなにかしらストレスはかかるものだ。あとGRαのホモダイマーがメインに働きGRβはあまりよくわかってないらしい。さらにステロイド抵抗性についてもどうやら今までのモデルは間違っているらしい。概日時計との関係等まだまだわからないことだらけ。ただGRは奇跡的にすごい分子の1つであることは間違いない。
あまりにも疲れて眠かったので仕事早く切り上げお風呂屋さんによって寄って帰宅しワイン飲みながらご飯食べて8時頃に寝てしまった。朝までスウェーデンに二度目の留学をしている夢を断続なしにみていた。
旧知の研究所長に再会したのでハグして「long time no see」とか言うと「ほんとだねえ」と日本語で返ってきた。「Do you master Japanese?」とか聞くと「いやいや」と返事。なんでこちらが英語で、むこうが日本語なのかまったくわからなかった。
所属することになっていた研究室の外人のボスは僕が来ることを知らず、会ったその場で“中尾篤人”と入れてグーグルサーチした。宿泊する所がなく研究所のソファに寝ていると掃除のおばちゃんに朝方起こされてそのまま目が覚めた。最近、休みがないからかなり疲れてる?
あるいは留学時代みたいにTGF-βの研究をまたやりなさいって言う事なのか。よくわからないけどなんか懐かしかった。
最近は、毎回ラボのミーティングでサイエンスの目的とか進め方を何度も一から説明している。でもよく考えるとそれは本当は馬鹿らしいことなのである。ここは小学校でなくて大学なのだからそんなことは本来自明であって欲しい。このレベルでとまっていると論文採択の最近の厳しいハードルをクリアできる気がしない(つまり研究の足跡すら残せなくなる)。
まず各自が自分が知りたい(やりたい)ことをしっかりと明確にすること、そしてあとは教授をあてにせず(しょっちゅう間違えるし)各自が自分の頭で新しく、オリジナリティにあふれていて、社会にインパクトを与えるような研究に自分のテーマをより進化させられるか、よく考えて進めて欲しい。コントロールがしっかり取れていてかつ斬新なデータをときどきは(3−4ヶ月に1回くらい)ミーティングでみせて皆を驚かせてやる、くらいに意識を変えよう。そうしないと僕もパフュームのDVD見る以外、生きる楽しみがなくなる(笑)。
今年度のアレルギー学会で印象に残ったことを忘れないよう以下にいくつか記しておきたい。
1)アレルゲン祖抗原ではなくてアレルゲンコンポーネントタンパク質に対するIgE抗体検査が臨床で実践されはじめた。食物アレルギーの感作機構の解明や交差反応性の解析などに役立ちつつある。マウスを使った研究とアレルゲンコンポーネントIgE抗体検出を組み合わせると何か面白いことができそう。
2)経口免疫寛容の破綻が食物アレルギーにつながるのは自明だがなぜ破綻するのかは未だに誰もわからない。マウスモデルではコレラトキシンなどのアジュバントを使って無理やりにトレランスを破綻させている。同様の機序がヒトで起きているのかどうか?その候補として、食事成分(脂肪酸等)、特定の腸内細菌叢(またはその代謝物)、添加物などの化学物質等々がアジュバントになっているのかを研究するのはとても大切。DHNAとかは逆に破綻を止めたらいいと思う。
3)Local allergic rhinitisっていう概念はアレルギー性鼻炎だけでなく喘息や食物アレルギーでも使えると思うが、粘膜局所におけるリンバ球の集積構造の意義(特異的IgE抗体産生の場?)を解明するともっと説得力がある。
4)アレルゲン免疫療法でTregが増えるメカニズムが知りたい。Bee Keeperではハチにさされる季節だけT細胞のハチ毒反応性が減少し、その季節が終わると(ハチにさされなくなると)またもとに戻るらしい。やっぱりある程度慢性的な刺激がトレランスの維持に必要なのではないだろうか。そのあたりがわかるとアレルゲン免疫療法のやり方について飛躍的に情報が得られる。
5)ヒスタミンは、Th2反応の抑制、Th1反応の増強などいろんなところに効いてる。ヒスタミン止めないほうが長い目でみると良いのかも。マスト細胞。好塩基球だけでなくマクロファージとか他の細胞もヒスタミン産生できるところはややこしい。
6)プロテアーゼ活性をもつアレルゲンの作用機構(アレルギー誘導機構)はかなり進んでいる。プロテアーゼ活性をもたないアレルゲンともつアレルゲン(たぶん寄生虫防御と鏡像関係)はアレルギーをおこすしくみがかなり違うのではないかと思う。
7)CRTHっていう分子が臨床試験のトピックになっているのは初めて知った。勉強しないと。
8)Follicular Thは今後アレルギーの診断や治療にかなり重要になると思う。
9)マウスで得られた免疫学的概念はヒトではあてはまらないことがかなり多い。現在の免疫学の教科書はマウスの知見をもとにほぼ作られているから信じてはいけない。TNF-alfaとIL-1beta,
IL-12の意義などマウスとヒトでは正反対のようだからバイアスをなくす必要がある。
10)網膜色素上皮細胞はTGF-beta2を産生してTregを局所で生成しT細胞応答を抑制しているらしい。TGF-betaが免疫抑制に大事なことが再確認された。アレルゲン免疫療法の機序の解明とも関連し、もう一回TGF-betaとアレルギーとの関係の研究をアップツーデートな視点でやり直す必要がある。
11)スギ花粉に感作されているが発症しない人でも花粉の飛散時には特異的IgEが上がるらしい。もちろん発症している人も上がっている。人間の体は案外、アレルゲンを簡単に体内に入れているのではないのだろうか。
12)学会中に二日酔い状態は避けたいと思っているのだが、今回もやってしまった。反省。あと先斗町で美味しいお店がいくつか発掘できたが、たぶんすぐに忘れちゃうだろう。
助教のO女史が幸運にも小保方さんのセミナーを聞く機会があって興奮して話していたので、「うちでも割烹着を採用しようか?」と言ったら「形だけ真似してもだめでしょう。」と至極まともな返事がかえってきた(笑)。これも同じような会話が日本中の研究室でなされたに違いない。
某臨床系教授との会話
iPS細胞やSTAP細胞の発見で世界中が興奮した。僕らの(その他大勢の)研究ではそうならないのは何故だろう?この問いかけは研究におけるかなり大事なことを含んでいると思う。疑問を解明したときの一般社会や生物学・医学へのインパクトの大きさ、解明した(と思った)ときのその解答に対する研究者や世間が抱く信用度、などなどが大きな差がつく原因である。
iPS細胞やSTAP細胞は、「細胞の初期化」の発見によってこれまでの生物学の常識を変え、それを文句のつけようのないデータで証明した。特に重要なのは細胞やキメラマウスを作って見せたことだと思う。「作ってみせる」に勝る証明はない。僕らの研究で言えば、「アレルギーを治せた(治せる)」、とちゃんと言えるのは、基礎研究にもとづいた薬を開発してその効果が臨床試験で証明されたときだけなので、動物実験でいくら上手くいっても世界は興奮しない。
研究テーマの選択が研究のアウトプットに決定的に影響するので、数十年後ではなく、たった今新聞の一面に載るような研究がしたい人は、研究テーマをしっかり時間をかけて真剣に吟味して選ばなくてはいけないと思う。
某臨床系教授との会話
某教授「結局、人間ストレスかければ、性格も意欲もリセットされて生まれ変わるってことだろう。俺の医局員に対する教育方針はまったく正しいってことだな」
私「いやいや先生、先生の医局員にかけるストレスはSublethal(死ぬ一歩手前)でなくてLethal(死ぬ)ですから。全員アポトーシス起こして死んでますよ。」
同じような会話が日本中の会社や学校でなされたに違いない。
5位 4月から医学科長になった。「医学部長ならわかるけど医学科長って何すかそれ?」と学生の認知度も低く、「僕もよくわからない」と当初言っていたが、その後、仕事が山ほど舞い込み、「2年たったら(任期)辞めてやる」と教授会の忘年会で酔って叫んでいた。
4位 出張で、鹿児島、島根、佐賀、新潟と今まで一度も行ったことがない場所に行った。ほぼホテルと会場の往復だけだったが、メインの繁華街で買物が少し出来て次回?に備えて土地勘ができたのは良かった。「新潟がこんなに大都市で住みやすそうなところとは思わなかった」とタクシーの運転手さんに言ったら大変喜んでくれて少し料金をまけてくれたが某Y県に住む僕としては素直な感想だったのである。
3位 台北で行われたAPCAACI (Asia Pacific Congress of Allergy, Asthma, and Clinical
Immunology) 2013で台湾大学の知り合いの教授と再会できた。彼が順天堂大学に来たとき東京駅近くのポケモンセンターに連れていって(彼の子供へのお土産買うため)、その後Big
echoで「雪の華」を一緒に歌って以来の友人である。今はすっかり偉くなってしまい今回のAPCAACIの副会長だったが、10数年前とほとんど変わらず優しかった。
2位 事務の大沼さんが甲府キャンパスに異動になり公募で選ばれた東野さんが4月から新しく事務担当になった。大沼さんも新しい職場でチャレンジしているし、東野さんも優秀で本当に助かっている。「この用事はスルーする」って僕が言うと「またですか」と言われるのも以前と同じである(笑)。
1位 中村くんの論文がJACIにアクセプトされた。中村くんとその家族に感謝。アレルギーと時間の関係はまだまだネタがいっぱいあってしばらく研究には困らない。この先にアレルギーの予防・治療の創出があるのかどうかが問題で現在取り組んでいる。いずれにせよ、来年も、誰も見たことのない新しいアレルギー研究を多くの人に認めてもらえるように頑張りたい。
食品系の研究者や会社関係者が多数集まる面白い学会に参加させてもらった。
主なトピックは
(1)乳酸菌(プロバイオティクス)が腸管免疫系を(菌種によって)刺激あるいは抑制するのは既に当たり前で、現在の問題は生体内でのメカニズムは何か?ということになる。東大の長谷先生の講演では、腸内細菌(クロストリジウム属菌)が産生する発酵代謝物(特に酪酸、プロピオン酸、酢酸等の脂肪酸)が1つのカギ(少なくとも大腸のiTreg誘導には)のようだ。このような方向性(腸内細菌叢のメタボローム解析)で今後の研究は発展するのかもしれない。
(2)上記に関連して、では発酵代謝物(あるいは腸内細菌由来の別の物質)の標的細胞は何か?ということも重要である。腸管上皮細胞、樹状細胞(cDCやpDC)、自然リンパ球等々における研究は始まったばかり。もちろんT細胞やB細胞への直接的作用の可能性もある。
(3)プロバイオティクスの腸管内での作用が、いったいどのようにして全身的な影響を及ぼすのか?全身に共通する粘膜免疫系への影響や全身的なメタボリック効果を追求するような研究が今後盛んになると思われる。
さてこれらを踏まえて僕らはどこに進むべきなのだろうか?いま行っているTGF-β、Resveratrol、AhR、体内時計の研究を、それらの研究の流れに上手くつなげてアレルギーとの関連の中で新しい概念を見つけて行きたい。
レスベラトロールに特化した国際学会が今年は東京で行われた。
主な進展は
(1)レスベラトロールを経口摂取したときにヒトでもマウスでも血中濃度が効果を期待できる濃度までちゃんと上昇する。ついでにレスベラトロールの代謝物(硫酸化物とか)もかなりの濃度まで上昇する。ただしいずれも3−4時間がピーク。さらに腸管での濃度は血中の10倍くらいになるとのこと。やっぱりレスベラトロールの最初の標的は腸管?さらに作用を起こすのに重要なのは細胞内に取り込まれたレスベラトロール(代謝物ではない)らしい。
(2)レスベラトロールの摂取量は低用量(自然に食事で取れる量)がより疾患予防効果を示す可能性がある。高用量では逆にあまり良くないかもしれないらしい。このあたりの分子メカニズム的な説明はまだよくできない。
(3)レスベラトロールの分子標的はたぶんいっぱいある。Sirt1が大事な標的の1つであることも間違いないみたいだが、他にも直接の標的分子(phosphor di-esterasなど)がある。またそれらへの作用を介して間接的にAMPKやNF-kBなどに影響する(AMPKは直接の標的かどうかはまだよくわからない)。
(4)レスベラトロールは決して抗炎症作用だけの物質ではなく、炎症作用も山ほどある。その作用は、生物学的コンテキストに依存していて単純な区分けは理解を難しくする。TGF-βと同じようなもの。
以上の知見を頭に入れて、レスベラトロールの作用(特に腸管粘膜免疫系)をさらに深く掘り下げたい。来年はハワイでやるらしいのでぜひ来年も参加したい(笑)。
週末、小学校の同窓会が六本木であり、時間があったので国立新美術館でアメリカンポップアート展/アンドレアス・グルスキー展を見てきた。いずれも「アートとは視点をズラすことだ」というお手本みたいな展覧会で興奮できた。サイエンスもアートもやってることはまったく同じ。この感動を忘れないように、キャンベルスープの缶(by Andy Warhol)を買って机の上に置いておくことにする。そのうちただのゴミになるとは思うが、、、。一方、同窓会は、視点をズラすというより目を凝らして昔の面影を必死に探すという感じだった(笑)。
皆と会話するうちに小学生のときのことを徐々に思い出していくのが不思議かつとても心地良かった。人間の脳はスゴい。免疫の記憶も同じようなことが起きてたら楽しい。
甲府南高校の生徒に対して、医学・生命科学についてオムニバス形式の講義をする機会が医学部で設けられた。自分の番は一番最初だったので終わったあと、一番後ろの席で他の人の講義を聞いて、どういう講義をすれば高校生にウケるのかを探ってみた。結論から言えば、どの講義もまずウケてるのかウケてないのかがさっぱりわからなかった。高校生、もうちょっと反応しようよ(笑)。
でも教官のほうは、どの人が普通の人に話すことに馴れていてだれが馴れてないかよくわかった。医学部の先生は総じてみな話しが上手いんだけど、レベル設定が一般大学生向けという感じが多かった。僕らくらいの年齢の人間には、現代の高校生の知識教養レベルがもうよくわからなくなってるんだと思う。結果として、言いたいことを高校生に届く表現に変換することが僕らにはとても難しい。
中村君の論文(JACI in press)では、全身に存在するマスト細胞は、副腎皮質ホルモンによる時間情報によって個々の時計を毎日リセットしていて、その結果、一兆個とも言われるマスト細胞の時計が同調し、アレルゲン刺激に対してある一定の時間依存的な反応をおこしている、と結論した。なので、個々のマスト細胞の時計がバラバラになったときは、全体の反応が均一化されるため時間依存的なアレルギー反応は見られなくなる。
それはスッキリした説明なのだけど、実際のところ、個々のマスト細胞の時計を壊した時のアレルギー反応は、正常なときに示す反応レベルのちょうど平均レベルではなく、最も強い反応レベルにシフトした一定の反応を示す。このような現象は時計依存的な他の生命現象でも多々見られるが、どうしてそうなるのかはよくわからない。免疫反応は生体防御反応として大事なので時計が壊れた時はデフォルトで強く反応するようになっているんだと質問者には答えるがメカニズムは未だ謎である。
もしかしたら生物時計の本質的な何かを内包しているかもしれない問題と思う。まだまだわからないことは山のようにある。
中村君の論文がようやく受理されホッとした。途中、欲を出して某N誌やI誌に出したりしたので、研究を始めてから受理まで結局2年以上の時間がかかってしまった。でもアレルギーと時間の関係を解明した自信作なので、アレルギー分野の医者や研究者が一番読んでるJACIで結果的には十分と思う。中村君の苦労に敬意を表してオーパスワンでお祝いしたい。もっとも中村君は飲めないから僕が1人で飲むのだけど(笑)。
小学生の時以来、何十年か振りに歯痛に悩まされて一週間過ごした。
いくつか思ったのは、
(1)歯医者さんは意外に歯の痛みの訴えに共感しない(歯科にとって痛みは日常茶飯事だからだろう)。なので、もっと大げさに痛みをアピールすべきだった(笑)。あと歯茎の炎症による痛み(歯肉炎?)はとりあえず洗浄で経過観察が王道だということを学んだ。ただ痛みは強いストレス(免疫も弱める?)だから、内科的に痛みが主訴の患者さんを自分が見たときはちゃんと話をよく聞いてどんな痛みでも速くとりたいと思った。
(2)歯茎が腫れて(炎症が起きて)、顎下リンパ節が腫れて、それから熱が出て、約1週間で沈静化する、という免疫応答の過程を改めて実感した(笑)。痛いときはATPが神経に働いているところを想起し、熱が出たときはIL-1が放出された(白血球が活性化された)と冷静に想像する一方「ヤバい死ぬかも」と焦った。
(3)そもそも歯茎に細菌が炎症を起こすということは口腔内での平衡状態が崩れて細菌が増殖するニッチがあった(余地を与えた)、ということなのだろうか。これってクローン病とかでも同じ原理で良いのではないか、と思った。歯肉炎や歯周病について勉強したい。あと、痛みは痛風の場合と同じ原理か。なんであんなに痛いのか、ちゃんと解明したら面白いと思う。
(4)歯痛は食事がとれなくてダイエットになる。肉を切らせて骨を断つ歯痛ダイエット。いや骨を切らせて肉を断つか。ただし辛すぎて薦められない。
(5)歯が痛いと仕事ができない。締め切り迫った依頼原稿や論文リバイス等々は頭がもうろうとしてまったく書けなかった(仕事しなかった言い訳ではありません)。
そんなこんなで、皆が10周年記念にケーキを買ってくれたのに、食べられなくてすいません。今度何かでお詫びします。
新年度がまた始まるけど、この7月で山梨に来てちょうど10年目になる。
「アレルギーを治す」というゴールにはまだまだ微々たる貢献しかできていなくてまったく納得できないので、あと10年でなんとか自分自身が納得行くような結果を残したい。というか、結果が出ないとフラストレーションが溜まりまくって“草野球”とか“ワイン”とか“温泉”とか“きゃりーぱみゅぱみゅ(またはパフィーム)”とかで気分転換しなくてはいけない割合がどんどん高まり、ただでさえ娘に怪しい眼鏡をかけた人、と言われているのに、ますます変なおじさんになってしまう。社会活動の時間も増やしたいと思うけど、実はこれも、楽しいけど辛い「研究」からの逃げなのかもしれない。いずれにせよ、オリジナルなアイデアでアレルギーを治したい、と半分本気でまだ思っているで、この気持ちがずっと続くならまだあと10年頑張れると思う。
薬理学会のシンポジウムに招待されたので初めて薬理学会に参加した。ほとんどの演題が(当たり前だけど)病気の治療のデータまで出していたのが新鮮だった。免疫学会とかはメカニズムばっかりである意味面白くないのかもしれないと逆に思ってしまった。自分の発表が終わった夜は、本学の薬理学講座の宴会に参加させてもらった。高級水炊き料理店で行われたのだが、僕とK教授は1時間早く着いてしまい、二人で飲んでるうちに、宴会が始まったらすぐK先生は寝てしまい、僕は酔っぱらってお酒ばかり飲んでいて水炊き食べるの忘れていた。後日、K先生から「いっぱいお金支払ってくれてありがとうございます。」というメールが来たけど、自分がいったいいくらその場で払ったのかも覚えていないのだった。
論文の査読の依頼が来たら断らないのが研究者の務めなのだけど時間がかかって面倒臭いし、その割に本人にはメリットがほとんどないので困ることが多い。なのでできるだけ簡単に済ませたい。そこで最近、僕は次のような個人的基準を採用して他人の論文をreviewしている。その要点を一言で言ってしまえば「読後感」。論文を最初に読んだとき、「あー、時間の無駄だった」と思えば即Reject、なんか「面白くない」と思った場合、リバイスして面白くなりそうならAccept with major revision、無理そうならやっぱりreject、「面白い」と思ったときはacceptにする。この基準は、あれこれ迷うことなくすぐ自分の中で結論を出せるのですごく便利(あっと言う間にreviewが終わる)。ただし、この方法の問題は「面白い」の基準が極めてパーソナルでうまく言語化できないことにある。「面白い」って何なんでしょう、、、(もちろん実際はその雑誌のreview基準に照らして何回も読んでいることを念のため付け加えておきます。)
修士課程に在籍したOさんの論文が公表されたら、「アレルギー」、「赤ワイン」、「レスベラトロール」といった社会的に関心の高いキーワードに満ちていたのでメディアにいっぱい取り上げられた。それはそれで良かったけど家内にメールしたら「Natureじゃないんだ」と一蹴された(笑)。
レッドソックスの松坂投手が先頃メジャー通算50勝をあげた。それをうけてマリナーズの岩隈投手が、「本当にすごい。メジャーで1勝することがどれだけ大変か」とコメントした。この言葉は、そのまま「インパクトファクターの高い雑誌に論文を掲載させることがどれだけ大変か」と言い直して、リアリティの全くない学生や大学院生に伝えておきたい。
群馬の伊香保温泉で今年の四大学(医学部)リトリート(各大学で研究をしている医学部学生が集まった合宿形式のセミナー)が行われたので参加した。参加していた他大学の何人かの学生は、既に下手なポスドクや教官よりはるかに優れていて、自分の地位も早晩危ういな、と思った。彼らの共通点は、向上心が高い、勉強量が多い、性格が素直、といったところかと思う。これまでイマイチな学生は、この3点を意識的に変えていくことで絶対優秀になれるのでぜひ試してほしい(特に山梨の学生)。
今年も県内の高校生に、大学からの出前授業として、「免疫学入門」的な授業を行ったけど、生物系は、希望者が少なくて、人文系、理工学系の先生の授業のほうが人気が高かったみたいだった。自分が高校生のときもまったく生物に興味はなかったので偉そうに言う資格はないけど、高校生(たぶん中学生も)の多くが、生物学に興味を持てないとしたら理由は明白で、教材(したがってそれを使った授業)が面白くないからだと思う。現在の生物学や医学における革命的な進歩(ゲノムプロジェクトやiPS細胞や老化や脳科学研究等々)をまったくスルーして、細胞の一般的な構造とか未だに教えているようでは面白くないに決まってる。将来に自分がなりやすい病気が予言できたり、腎臓が作れたり、寿命も延ばせたり、記憶を増強する薬ができたり、といった話から生物学の授業は絶対入るべきだと思う。細胞の詳細などは後回しで、その結果、むしろ細胞の詳細が知りたくなったら授業は成功なのではないだろうか。でもこの時代に生物学に興味をもつ学生を増やせない初等・中等教育ってやっぱりちょっと問題のような気がする。
最近、“スイカの臭い”が僕にはするらしい(笑)。外勤している病院の看護婦さんに、何か外来でスイカの臭いがすると言われ、さらに別の病院で医局にいたら、入ってきた女医さんにこの部屋はスイカの臭いがすると言われ、ゴミ箱まで調べられた(笑)。他にも何人かに言われたが、なぜか家内は何も言っていない。これって加齢臭なのかな、、、。でも“スイカの臭い”がするって生物学的にどういうこと?。
国内外における免疫学におけるスター研究者達が集まったシンポジウムが横浜で2日間にわたって開かれた。21名の演者のうち半分以上の14名が海外からで、これだけの人たちを呼べるパワーと魅力と人脈が日本(の免疫学)にはあるということを再認識した。
2日間勉強して思ったことは、
1)Rorαがinnate lymphoid cell(ILC)のサブセットのいくつかの分化や機能に関与しているという複数の発表があった。Rorαは体内時計に制御されているので、たぶんILCの機能や分化にも体内時計が関係しているに違いない。
2)IL-33を産生する機構は細胞が死んで放出されるだけではない気がする。喘息モデルで産生されることなどは上手く説明できない。この点は、アレルギーの発症にとって重要なので、できれば研究したい。
3)ヌクレオチド(ATP)や核酸が免疫やアレルギーに与える影響はまだまだ宝の山かもしれない。核酸は競争激しいけど、ATPはまだまだ小さい研究室でも何かやれそうな気がする。特にマクロファージとATPの研究はもう終わってるのかと思ってたら、まだまだこれからだったのには元気がでた。
4)東大の谷口先生の講演は特に良かった。自分のラボのデータをもとに、免疫学の歴史や流行といった文脈を踏まえて、現在の考え方について再考や発展を迫るような話は、やっぱり研究の醍醐味を感じさせてくれる。オリジナルな新しい大きな考え方を世の中に提示して、研究分野に影響(インパクト)を与えるのが真の研究者なので、セミナーのときは、皆できるだけなんでもいいからデカイ話をしよう(笑)。
暖かくなってきたので、今朝から野球の朝練が再開された。快晴ではあったが、気温はまだ4度だった(笑)。7時からのスタートなのに、気合いが入りすぎて6時半にグランドに着いてしまった。入念なストレッチやジョッギングで時間を潰していたが、だんだん飽きてきたところ、長老のN先生や僕より数歳上のK先生が、練習開始10分前に同じように現れた(笑)。若者達が7時過ぎに集まり出したときには、我々はキャッチボールしすぎて既に疲れていた。あと午後の時間も眠くてしょうがなかった。まあ、でも今年度もまた野球ができて嬉しい。
秋入学など、大学の国際化の議論が盛り上がっていて、山梨大学医学部も教育カリキュラムを変えようとしているが、一番簡単なのは、外国人を医学部教授にすること、学生のある一定数を留学生にすること(どちらも最低30%くらい)だと思う。あとは勝手に変わるのでは。
特進コース第一期生が無事卒業した。僕らの講座のH君もその1人である。H君や分子情報伝達学講座のT君は、英文雑誌に論文も出してすごく頑張ってくれたけど、周囲の大人達が彼らにかけた研究(あるいは生活?)指導という多くのエネルギーと、研究費(税金)というリアルな投資が、本当に、例えば東日本大震災で両親を失った子供たちに援助するより良かったかどうかは、彼らが今後、どれだけ頑張って社会や医学分野で貢献するかにかかっているのである。学生時代にちょっと論文出したくらいで満足していてはいけない(Natureに論文出したら許すが)。まあ、これは、決して少なくない研究費をもらって仕事をしている自分にいつも問いかけていることでもある。
今年のアレルギー学会は基礎医学者である日大の羅先生が会頭だったので研究色の強い演題が多くて面白かった。羅先生の専門であるマスト細胞が、演題の中心としてフィーチャーされ、マスト細胞にも多様性や可塑性があり、アレルギーの最終段階だけでなく発症初期や制御にもかかわっていることが、いっぱい示されていた。これからはT細胞だけでなく、他の免疫系細胞もすべて調節性の機能をもつことが示され、免疫学(アレルギー学)はますますわけがわからなくなるのだろう(笑)。ただ、マウスの実験系では、(示そうと思えば)何でも示せるのかもしれないが、そのようなマウスでの知見が、本当にヒトのアレルギー性の病気の本質なのかを見極める目を持つことが、このような混沌の中では、さらに大事になってくる。もっと患者さんを具体的にイメージして研究の方向性を間違えないように気をつけたいと思う。
山梨大学GCOEプロジェクトの一環として工学部の人達と一緒にGW連休中ネパールに行き、現地の大学や病院を訪れ、共同研究の遂行および提案をしてきた。昨年に続いて二回目の訪問だったが、相変わらず、道路の車線や信号なんてないも同然だったし、バスの中だけでは人が乗りきれずに屋根の上に多くの人が振り落とされないようにしがみついていたし、何気ない道ばたに人が倒れていたし、トヨタのカムリに10人くらいの家族がすし詰め状態で乗っていて車が動かなかったりしていたし、その自由奔放さ(?)や日本とのギャップに、アドレナリン持続放出状態であった。しかし、現地の病院関係者や学生とふれあうと、昔ながらの(多分日本人が忘れてしまったような)笑顔や性格に癒されるのであった。
滞在中、いつものように、メンバーの間に(僕も)、旅行者下痢症が蔓延し、もっていった抗生物質は足りなくなった。帰ってから、その話を大学の廊下で、環境遺伝学講座のH女史にしたら、とたんに“じゃあ”と言って去られてしまった(笑)。
雑誌ナンバー(Number)の最近号で、本田圭祐のインタビュー記事を読んでたら、インタビュアーが、研究者の世界では「365日のうち楽しいのは1日しかない」という言葉があるそうなんですけど(そう簡単に新しい発見などできないから)本田さんは幸せと感じる日は何日ありますか?とか質問してた。そんな言葉初めて聞いたけど、なかなか良いので今度から使わせてもらおう。ところで、最近、楽しかったベスト3は、サッカーのアジアカップのテレビ観戦、娘が山梨に遊びに来て鳥モツ煮を一緒に食べたこと、ヨーカドーで安くて美味しいワインを見つけたこと、、、かな。まったく研究と関係ない(汗)。時計とアレルギーの論文がアクセプトされたのはもちろん嬉しかったけど、楽しいというよりホッとした感のほうが強いのはなんか複雑な気持ちだ。次、大発見がんばろう。365日のうち、と言うより一生のうちに研究で本当に楽しいのは、2、3回と言い換えたほうがいいかもしれない。
今朝は秋晴れのさわやかな空気で格好の朝練日和だった。
青空と白いウロコ雲の下、グラウンドの緑と木々の葉の間から射し込む光がまぶしくて快適だった。しかし、参加者は3人で、ピッチャー、バッター、“守備”、にわかれたら、“守備”(参加者の年齢順で私)は、内野から外野、左翼から右翼までフルカバーで走らなくてはならず、バテバテだった。頼むから1塁側にファール打たないでくれー(笑)。それでも今朝は気持ち良かった。
体内時計がアレルギー反応を制御している、ことを証明した中村君の論文が無事にJACIにアクセプトされた。この論文は、体内時計とアレルギーとの関係を明らかにした最初の論文としてエポックメイキングだと思っている(僕だけかもだが、、、)。脳や内分泌系の時計と免疫系の時計の時間がかみ合わないと適切な免疫反応が起らない、という仮説をこれからもっと追求して行きたい。時間にルーズなやつは免疫細胞レベルでもたぶんダメなのである。
「アレルギー」研究の醍醐味は、発症機構の解明と、症状や重症度(病態生理)に個人差がある理由を知ることと、予防や治療の新しいアイデアを生み出すことの3つかと思う。「アレルギー」は環境因子と免疫系との相互作用を基盤としたユニークな病気なので、この3つの中では、発症プロセス(アレルゲン暴露から特異的IgE抗体産生までの過程)の解明がもっともアレルギー研究らしい。
最近の僕らのデータからすると、「体内時計」は、驚くことに、この3つのすべてに関係しているみたいである。この結果は、「体内時計」は、生命現象(細胞)における基本的オペレーションシステム(OS)という考えを裏付けている。現代の社会環境に適応した体内時計のOSのあり方が、アレルギー疾患を増やしているのだろう。
では、アレルギーを予防/治療するために、この生命のOSを変える(バージョンアップまたはダウンする)ことは可能なのだろうか?たぶん可能である。縄文時代には戻れないので、OSをドラスティックには変えることはできないが、日々のライフスタイルや食事の内容や仕事の仕方や周囲の微生物環境などを細かく調整すれば、時間はかかっても、現状の体内時計OSを修正し、アレルギーの症状を軽減させることができると思う。患者さんの生活すべてに介入してアレルギーを予防したり治す時代が近づいている。昔のお医者さんと違う点は、レッキとした科学的根拠が示されている点である。
本田のフリーキックによるゴールには本当にびっくりした。1人でテレビを見ていて思わず、何が起ったか一瞬わからなくなった。最後の岡崎へのパスも凄かった。息子がHONDAのユニホームを毎日着て学校行ってるのもわかる気がする。ただし、1万5千円もするのがばれて彼は家内にひどく怒られていたが。でも、実は、僕も同じ物をしっかり買って持っているのである(汗)。
和歌山までとんぼ返りで行って来た。飛行機が遅れて予定の特急に乗れないアクシデントはあったが、なんとかセミナーの時間には間に合った。慌ただしかったけど鈍行列車に揺られて眺める和歌山市は暖かく海や山がきれいな風向明媚なところだった。機会があったらプライベートでもまた訪れたいと思った。
年初にあたって、もう一度確認しておきたいことは、
1自分の研究がチャレンジングかどうか?
2自分の研究がユニークかどうか?
3自分の研究が本当に社会にインパクトを与える(医学研究の場合は、病気の予防や治療に将来結びつく)かどうか?
である。これらの問いに即答で簡潔に答えられるように、大学院生もスタッフも(僕も)、世の中の動きを常に把握して、いつも自問自答していなくてはならない。もっと根底には、自分自身が何をやりたいか(知りたいか)、どう生きたいか、っていう大事なことがあるんだけど。
今年度の市民講座の担当に当たっていたので「食と免疫」(今年度の統一テーマが“食”なので)というテーマで90分間甲府に行って話して来た。力が入りすぎて1枚のスライドを説明し過ぎ、何年ぶりかで時間超過するまで話してしまった。聞かれた方達は、きっと飽きてきて迷惑な話だったと思う。内容も、看護学生を対象とした講義のパワポをメインで使ったのだが、それでも一般の方には難しく、かつどうでもいいことが多かったかもしれない。自己嫌悪と反省の多い講演だった。次回、同様のことをする機会がもしあったら、もう少しましに話せたらと思う。“みのもんた”がスゴいことがよくわかった。ところで、今回の参加者の平均年齢は60代くらいのような気がしたが、その人達があれほど市民講座を熱心に受講する光景をみると日本経済の発展を支えて来た人達のパワーに頭が下がる。日本の若者と中年層は(高校生はいたけど)、いったい何をしてるんだろうか、、、。
自信を持って投稿した論文がリジェクトされるくらい憂鬱なことはない。本当にやる気がそがれるし、何回も繰り返されるとどんどん元気が失われてくる。でも、こういう状況を簡単に回避する方法はないので、たとえ、2nd, 3rd ratingのジャーナルに載ることになっても、この研究は絶対に重要で面白くてインパクトがあると思って、ひたすら挫けないことしか、自分のモチベーションを保つ方法はない。まだまだ他人を説得する力が不足していると割り切り、野球でリリーフに失敗したクローザーみたいに、一晩寝たら次の試合に向かってさっさと気持ちを切り替えるしかない。
学会の準備のため、自分が7年前に書いた論文を見直したら、「なんていい論文なんだろう。これはほんとに俺が書いたのか?」と思ってしまった。7−8年前(40代前半)がピークだったのかもしれない(笑)。先日も、山中先生が50歳でノーベル賞を受賞したので、娘から「お父さんもう駄目じゃん」と言われ、家内からも「洗濯機が故障しても直すのは、うちではお母さんだもんね」と、追い打ちをかけられた。とにかく昔の自分を越えるもっといい論文を書かなくてはいけない。
分子情報伝達学講座のK先生が講座のホームページで「カーナビは嫌いだ。道に迷いつつその途中の景色も楽しみ、自力で目的地まで到達するのが楽しいのだ。カーナビ(マニュアルの比喩?)に頼って実験して自分で考えない学生はもっと嫌いだ。」とおっしゃっていた。以下、それを読んだ友人と僕とのメールでのやり取り。
友人「K先生は、先生とまったく逆説だよね」
僕「あっ確かに。カーナビつけて迷わないほうが僕は好きです(笑)。目的(地)まで最短で行くのがベスト。今まで車で迷ったときはろくな事ないし、K先生は精神的に余裕があるか、運転が好きなのではないでしょうか(笑)。」
友人「先生は“ちい散歩”や”ぶらり途中下車の旅“は出来ないですもんね。運転じゃなくて目的以外のものにも興味がわくってことじゃないんでしょうか(笑)」
僕「僕は空いている高速をパフィーム聞きながら飛ばすのは好きだけど、それ以外は運転自体が苦痛なんだよ。」
友人「あとK先生は道に迷って、奥さんとかに”まったくなんで迷うのよ!なんでこっちの道選ぶの?素直に行けばいいでしょう?あ〜いらいらする”なんて言われることないでしょうからね(まぁそういう人をK先生は選ばないだろうが)」
僕「奥さんの差かよ(笑)」
でも実際は、僕の車はカーナビなくてしょっちゅう道に迷っているのである。
医学部特進コースの学生の年に1回の発表会を聞いて以下のように思った。
1)低学年になればなるほど自分のやっている研究を理解していない。
2)っていうか、なんのためにやっているか、自分の意思が感じられない。
でもたぶんこれはしょうがないことなのである。そもそも医学研究をやるにあたって最も重要な、多くの(難治性の)患者さんとの接触やさまざまな病気についての知識がまだまだ全然足りないので、曖昧なモチベーションにならざるを得ない。ヘルペスウイルス感染症への実感がなくてヘルベスウイルス研究ができるだろうか?この低学年問題の解決には、“病気”よりざっくりした“生命現象”の不思議さにもっとインスピレーションを与えるようにするのが良さそうな気がする。
山梨県からの派遣要請により、平成23年3月18日から山梨大学は医療救護活動を開始していて、医療支援チームを派遣している。その第9班として、宮城県南三陸町を3泊4日で訪れた。今回は、医師1名(僕),看護師2名,理学療法師1名、事務職員2名のチームだった。とにかく、様々な経験をして、すごく色々なことを考えさせられた濃密な4日間だった。自分の脳の使ってなかった部分が10%くらい活性化されたと思う。変な話だけど、週末、東京/山梨を車で往復するとき、周りの景色がよく見えて、まったく事故をおこす気がしなかった。
今年の日本免疫学会でもアレルギー学会でも、体内時計とアレルギー(や生体防御)との関係について演題を発表しているのは僕らだけだった(ある意味浮いていた)(汗)。アレルギー関係のメインの演題は、好塩基球、innate
immune cells、Th17、IL-33やIL-25などのサイトカイン、あと(徐々にだけど)腸内フローラ/腸管粘膜免疫だった。みな流行を追っている。なので、いまのうちにもっと論文出して、このテーマでは(できることなら)独走したいものだ。
体内時計とアレルギーとの関係は、決して僕らのオリジナルのアイデアではなく昔から知られていることではあるが、その関係をしっかり証明したのは僕らが今年初めてである。この先に、大きな金鉱が眠っているのか、あるいは体内時計はアレルギー(免疫系)のただの微調整機構の1つなのか、前者であって欲しい、と願って来年も研究したい。
昨日の社会医学、環境遺伝医学との合同忘年会で、ブドウジュースのようなワインの飲み過ぎて疲れてしまい、今年は、もう気分的にほとんど終わってしまった。来年は(も?)、しっかり重厚で、こくがあって、でもなぜか飲みやすい良質のワインのような論文を1つでも書けるといいな、と思う。
某看護学校に授業に行ったときの会話;
某先生「私は最近スランプで授業のやる気があまりでないんですよ。先生は楽しそうだからお仕事に行き詰まるなんてことないんでしょうね?」
僕「毎日行き詰まってます。楽しいときなんて年に1回あるかないかですよ。」
某先生「…..」
僕「いつも山のように仕事あるし、休みとか5年くらいないです。」
某先生「…..」
僕「ここ3日間毎日夜はホットモットの唐揚げ弁当食べてるし。」
某先生「今度飲みに行きましょう(笑)」
アレルギーは様々な外的および内的要素が複雑に絡み合って起こる。したがってアレルギー疾患の予防や治療には、薬だけでなく、衣食住といった環境要因のコントロールやストレスや睡眠といった内因的な要素の管理も大切である。「職業喘息」があるように仕事の内容ですら問題になることもある。これくらい多くのことを考えなくてはいけない病気は他にあまりない気がする。あらゆるパラメーターを総合して患者さんに向かいあわなくてはいけない点でアレルギー専門医は、真面目にやるならば、かなり面白いと思う。患者数も多く、難治性であり、現代の社会や生物学的環境も反映していて時代性もあり、研究すること(アレルギーの謎)もまだたくさん残っている。
例年通り、教授会の忘年会がFホテルで行われた。去年から幹事(2年間)の1人で今年は会計担当だったので、酔っぱらわないうちにせっせとお金を集めるのが大事な仕事であった。しかし、本人は気づいていなかったが会の途中からはけっこう酔っていたようだ。極めつけは、二次会で某脳外科教授と某生理学教授にのせられ、会計担当としてやってはいけないことをやってしまったことだ。勢いにまかせ某フランスボルドー地方の某有名5大シャトーの1つの某ムートンOOOOOOを注文してしまったのである。酔っぱらって飲むムートンOOOOOOは、たいして美味しく感じなかった(泣)。あのテーブルには6人はいたからまあ皆共犯です。翌日は久しぶりにひどい二日酔いに苦しめられた。
大学の同窓会が先日千葉で開かれた。卒後23年もたつと、当時の同級生は、(1)まったく変わってなくてすぐわかる人 (2)それなりに老けて来たけど5秒くらい考えれば誰だかわかる人 (3)ずっと見ててもまったくわからない人、の3つに分類された。(2)(3)はネガティブな感じかもしれないが、よく考えるとふつうで(1)がおかしいとも言える。ちなみに僕は皆に言わせると(1)らしい。成長がないのかもしれない。いずれにせよ医学部6年間をともに過ごした仲間との再会は楽しい。会話していると学生時代に戻ってしまっている脳の働きはものすごく不思議でぜひ誰か解明して欲しい。
ドラクロアという女性の苦労話を紹介するNHKの番組で、先週は、児童養護施設で育って水商売などの職業を点々としたあと美容師として成功した女性、今週は、シングルマザーで子育てしながら司法試験を23回受け続けやっと合格した女性の話をやっていた。前者の女性は、いま、児童養護施設の子供たちの髪をボランティアで定期的に切ってあげていて、後者は、いま弁護士として、弁護士のいない地域で離婚や借金などの相談をうける仕事をしていた。いずれも自分のいままでの境遇を踏まえて、社会にしっかり恩返ししていて本当に心にしみた。ちゃんと苦労した経験がない自分はまだまだ甘いし、自分は、どうやったら身の丈にあった本当の社会貢献ができるのだろうか、と考えさせられた。
自分が喘息なので、どうして深夜から明け方に発作で苦しくなるのか知りたい、というモチベーションで体内時計とアレルギーの研究を今年からはじめ、ようやくデータが出そろって来た。その結果は、思ったより斬新なコンセプトではなかったけれども、やはりとても面白い。体内時計は、液生因子や神経性因子を介して免疫系を制御している。神経/内分泌/免疫系は体内時計を介してつながっているのである。おそらく、免疫の老化や癌免疫などにも関係あるに違いない。まだ論文だしてないけど妄想だけはどんどん膨らむ。これから投稿するので、ちゃんと論文通るかどうかが一番の不安だが、、、
以下、グラントを審査する側から見た申請書書きのポイントについてのきわめて個人的な意見。
(大前提)申請書全体のレイアウト、フォントの選択、図、空白のスペース配分など、一目見たときに、きれいで読み易そうな印象を与えることがかなり重要、というかこれがすべてのような気もする。大事な研究のポイントが、すぐに目につくように、頭にひっかかるように書かれていると、斜め読みしても頭に入るから、さらに好印象。読むべき場所と読みとばしても良い場所のメリハリがついている申請書は素晴らしい。もっとも逆に言うと、ほとんどの申請書は(たぶん3分くらいで)斜め読みされるということでもある。実際、見た瞬間、読む気をなくす申請書が圧倒的に多いし、見栄えのよい申請書と研究内容は明らかに相関している。
(1)研究の背景と意義:その研究が必要であることの具体的な説得性があると受け入れ易い。例えば、過去の研究との継続性や予備実験データがあると印象がよい。一般的な考え方からの演繹だけだと弱くてインパクトに欠ける。
(2)目的:すぐ頭に入るシンプルな目的が好ましい。言い回しも重要。新聞記者的な才能があると望ましい。同じ事を言っていても抽象的な言葉で書かれると印象悪い。基礎研究の場合は、アイデアの新規性と独自性は、もっとも重要な最低限の大前提。これがダメだと評価低い(僕の場合は)。実験系を変えただけの研究申請も、基礎研究でもまだ意外に多い。
(3)計画:ごちゃごちゃ細かく書いても、分野が違うとほとんど理解できない。なので、普通の知識で理解出来るくらいの(でもちょっと具体性のある)簡潔な言い回しが必要。マイクロアレーを使って標的遺伝子を同定するとかの曖昧な計画は、もはや、使い古されていて、逆に評価を落とす。
(4)実績:論文業績があるかないか、よいジャーナルに論文があるかどうか、見るだけなので、これはごまかしようがない。でもタイトルまでチェックする気力はないことが多いから、申請した研究と関係なくてもいっぱい載せておくとよいのかもしれない(ただし、かえって墓穴を掘る場合もあるとは思う。)
(5)その他:臨床応用のし易さ(既にある薬の違う使い方とか)は医学研究の場合は、好印象。
(6)最後に:結局、マニュアルでなくて、自分の研究内容をどれだけ相手(第三者)に伝えたいと思っているかがすべてである。あと、どんなに頑張って申請書を書いても、相対評価なので落ちるときは落ちる(競争相手がNature出してたら落ちる)、という世の中の不条理に免疫にならないと研究者として生きていけない(やれやれ)。
毎年誕生日を教室で祝ってもらってとてもありがたい(本人はあまり覚えてないんだけど)。当日は平日だったので家族からきたメールは以下のようだった。
家内「お誕生日おめでとう。早くインフルエンザ治してうつさないでね。」
僕(やれやれ)
娘「誕生日おめでとう。ところで、新学期の教科書代11300円かかるのでよろしくお願いします。」
僕(かわいい娘なので全然OKです。)
息子「誕生日おめでとう。仕事がんばってください。」
僕(ふつうだ。)
以下が(とりあえず現時点での)来年の研究目標である。
(1)「免疫系の発達」と「食物アレルギー」
乳児期の腸管粘膜免疫系の発達と食物アレルギーとの関係について新しいinsightを得たい。免疫系が食物などの環境因子と相互作用しつつ、どのように発達していくかは、まだブラックボックスが多い魅力的なテーマの1つだと思う。母乳や食事中のタンパク質/ビタミンやあるいはTGF-βがどこに効くか?もっと広く、脳の発達とのアナロジーやストレスとの関係等も、とても興味深い。
(2)「時計」と「免疫系」
体内時計と免疫反応との間の関係をより明確にしたい。特に、いま投稿している論文のメッセージを、より深化かつ発展させていきたい。
(3)「ワインポリフェノール」による「アレルギー予防」
ほとんど自分の趣味だが、レスベラトロールとサーチュイン分子と免疫細胞との間にあるはずの関係を見出したい。
“ワインを飲めばあまりアレルギーにならない”
という妄想はたぶんホントだと信じている。
これらをシンプルでキャッチーな形にして “究極のわかり易さ”を目指した論文作成や学会発表をしたいものだ。
教室のみんながんばりましょう(笑)。
大学院生の送別会で男6人でカラオケに行った。このパターンは初めてだったので、カラオケ屋に行く途中不安がよぎっていたが、やってみると盛り上がった(笑)。僕は運転手だったのでしらふだったけれど、意外にアイスウーロン茶でもスピードの「ホワイトラブ」を歌って踊れることが判明した。次からは、このパターンもありだった。定番だが最後は尾崎豊の「卒業」を皆で合唱して終わった。“この支配からの卒業”ってストレートな歌詞だが人間何かに支配されてるよなあっとあらためて思い出させてくれた。研究でも、もっとも大事なことは自由な発想である。
山梨に赴任してこの6月で8年間が過ぎる。7月から9年目に突入するとこれは僕のキャリアの中でも、1カ所にいた最長年になることになる。実際、去年から、住民票も移して、税金も甲府税務署に確定申告して、すっかり山梨県人となってしまった。特に後悔はないが、週末、山梨ナンバーの車で赤坂とかを走ると、なんとなくちょっと恥ずかしい。まあ、徐々になれるだろう。
さて、この8年を振り返って、ちゃんと仕事したかというと全然である。まだまったくピークは来てないから、(教授の任期はとりあえず10年単位なので)、あと2年間のうちで、自分のなかで、一区切りをつけられるような納得できる論文や総説をなんとか発表できるように努力したい。
医師会で講演するため、八戸まで行ってきた。夜7時からの講演のため、午前中に山梨を出て6時頃到着、講演/懇親会やって11時にホテルの部屋に戻り、翌日の朝7時の新幹線に乗って、山梨に戻った。到着時および帰徒時は、薄暗くて、八戸の街の景色はほとんど見れず、青森まで行ってきた気分はまったくなかった。まあ、これは学会のときとかしょっちゅうではあるが、、、。
ただ医師会の人達には暖かく迎えられ、よんでいただいて本当に感謝です。
「先に実施されました職員定期健康診断の血液検査の結果、あなたは精密検査が必要と判定されました。つきましては、、、」という知らせを受け取った。だが、その検査結果が同封されていなかったので、本人に見せられないほど相当ヤバいのか、と焦った。年末に不吉な話である。慌ててネットから検査結果を調べると異常値なのはコレステロールだった。なんだ、コレステロールかと安心したが、よく見ると正常値から40くらい1年で上昇してる(汗)。たぶん年齢のせいと思うけど狭心症で胸が痛くなるのはとても辛そうなので、今日から、ラーメンに味玉トッピングは止めようと決意した。
アレルギー学会で大阪に出張。初日の夜に到着。さっそく久しぶりに会ったJ大学の人とN君と、お好み焼き屋にでかけた。軽く飲むつもりが、気づいたらワイン1本以上空けていた。翌日の講演はろれつがうまく回らなかった。
アレルギー学会2
そうは言っても参加したからには出来るだけ色々な人の話を聞くようにした。自分が知らなかった新しい世界を知るのはとても楽しい。逆に言えば、自分がだいたい知ってること、教科書や論文を読めばいいことを学会で聞くのは苦痛である。今回は
“免疫療法”がトピックの1つだった。免疫療法は謎が多いので、多くの発表は興味深く聞けた。ブロッキング抗体やTregの誘導が免疫療法の作用機構ならTGF-βを減感作のときに使えばいい、と思ったが、どうやって使うかが課題。
アレルギー学会3
環境化学物質がどういうメカニズムで免疫系に干渉するのか、とても興味深い。AhRはこの点にどのくらい関与するのだろうか。マンパワーがあったら追求したいけれど、、、あとペリオスチンとTGF-βは深い関係がありそうだけどその辺はどうなっているんだろう、、、
アレルギー学会4
まったく時間がなかったので新大阪駅で、行列ができていた“豚まん”をお土産に買った。でも、たこ焼きが良かったと、家族に言われた(泣)。
品川のJ苑でN君、Oさん、Hさんと発表をねぎらい会食。出された焼き肉を全部食べられなかった事がショックだった。完全な肉食系の僕には、かつてなかった事態である。やばい、年か。もっとも、肉の前にだされたキムチやらナムルやらをむさぼり食って、ワインを、がぶ飲みしてたせいという話もある。
特許申請に対する当局からのcriticismに対応するために、1997年にAnnu Rev Immunolに掲載されたTGF-βと免疫に関するRobertsによるReview(総説)を読まなくてはいけなくなり、日曜日の朝の静かなスタバで精読した。
おそらく以前に、このReviewは読んだことがあるはずであるが、10年以上前に書かれたTGF-βと免疫系に関する当時最先端の知見のまとめは、今読み返しても、妙に新鮮だった。Smadも、TregもTh17もない時代に書かれた総説は、ところどころで現在では間違いと判明していることも書かれているが、TGF-βが免疫系において果たす役割の全体像に関する洞察は、驚いたことに、まったく現在の考え方と変わりなかった。幅広く知識を吸収して、それらを総合し、深く物事を考えて、本質を的確に把握し表現できるRobertsは、とっても頭がいいと思った。結局、良い科学者っていうのは、卓越した予言者あるいは優れた小説家に近い、ということかもしれない。
「体内時計」は、アレルギー反応の時間依存的な制御に関与している(僕らが世界で初めて証明した)。「体内時計」が日中に花粉症や蕁麻疹を起りにくくしている仕組み(夜間は逆に起り易くしているのだが、、、)を解明すれば、アレルギー疾患の予防/治療のための新しいアイデアを生むだろう。このアイデアから生みだされる薬は、免疫系、神経系、内分泌系といった多くの生体システム間の協調作用を加味したものであり、従来の免疫系だけに介入する薬より、個体レベルで、はるかに良く効く可能性がある。
小栗旬と山田優の電撃結婚のため、某フジテレビの番組から受けた花粉症関連のテレビ取材が今日カットされたので、ここに要約を書いておきます。あと、山田優はファンでした(笑)。