“スーパーサイエンスハイスクール(SSH)高校生オムニバス講義”(平成27年8月12日)

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“AHR 2016: The aryl hydrocarbon receptor as a central mediator of health and disease” at University of Rochester.(Aug 3-6th, 2016)(平成28年8月10日)

“Laboratory (実験室)の意味”(平成28年7月20日)

 現代社会は10年前よりイノベーションの重要性がずっと強調されてきていて、このトレンドは学術雑誌の論文採択にも影響を与えている。トップジャーナルに掲載されるためにはサプライズを伴う新しいアイデアが、近年特に強く求められている。つい先日も論文リジェクトされたし本当に面倒くさい時代になった(笑)。ただ本来、“Laboratory (実験室)”という言葉に象徴されるように、サイエンスがイノベーションを牽引するエンジンである。僕らは忙しすぎて研究の原点をすぐ忘れてしまいがちだけど、リジェクト論文も、自分たちの研究の根源的な価値をより深く考えるきっかけと思わないと(笑)。また、いま行っている研究活動も“Laboratory”にふさわしいことをしているか良く考えないといけない。

“息子が医学部を再受験した友人(研究者)とその息子との会話”(平成28年2月26日)

私大の医学部にとりあえず受かったのでその初年度分を保険として国立大医学部の受験前に払ったとき。
 息子「お金振り込むの?お父さんの車3台分だよ。」
 父 「何言ってるんだ。お父さんの車はマーチだけど特別製なんだ。2台しか買えない。」
再受験することにした時、
 奥さん「お父さんみたいに、研究者になるの?」
 息子 「そんな闇に向かって行くようなことは出来ないよ。」
 我々は闇に向かっていたのでした(笑)。

“クリスマスの約束”(平成27年12月24日)

 クリスマスイブに毎年TBSで放送される「クリスマスの約束 by小田和正」を見ていたら小田さん以外の出演者が異様に緊張しているのがテレビ越しにも伝わってきた。「中途半端なものを出してそれが評価されていくのは自分には耐えられない(からリハーサルを何度も繰り返して本番にのぞむ)」という小田さんのプロフェッショナルな姿勢が強い緊張感を生み出しているのだろう。コーラスの音程はずしたりギター間違えたらえらいことになりそうだし。ノーベル賞学者の前でセミナーするような若い研究者の境遇に似ている。でも小田さんに出演依頼されてあの場に出られる人たちは幸せだしきっといろいろ勉強になると思う。論文も中途半端なものを出して評価されるより完璧にして出す方が聴衆(?)に喜ばれるし自分も満足できるはず。

 SSHに指定された高校の生徒へ生命・医学研究について紹介するオムニバス講義が行われた。この講義は毎年恒例で、僕はいつも「生命の維持における免疫の不可欠な役割」について「抗体」を中心に話しているので今回もそれについて説明した。質問もありそれなりに関心を持ってもらえたとは思うけど、話したあと自分がいま興味をもってやっている研究を紹介したほうが良かったかな、と思った(多分受けが例年より悪い気がしたため?)。
 「世の中にはこんな面白い研究をしている人がいるんだ」という風に感じてもらう方が「世の中にはこんな面白いことがある」と紹介するより高校生(あるいは高校生でない聴衆でも)の心により直接的に刺さるのではないかと思う。やっぱりオリジナルほど強いものはない。来年はパワポの構成をすべて変えたい。

“新学期にあたって”(平成27年4月1日)

“年度末”(平成27年3月23日)

 大学の年度末は異常に忙しい。既に4日連続で卒業祝い、送別会、祝賀会等をしている。ここ10日間に限れば7日間飲み会している。絶対何かがおかしい(笑)。でも例えば昨日は某N先生主催の某S先生の祝賀焼き肉パーティーで出ないわけにはいかない。全員僕より年長でしかもみな元気でよく飲み食いするので、肉焼いてビールの注文取って空いたお皿さげてと大忙しだった。それらの仕事が忙しくてあまり酔っていないつもりだったが帰りにN先生のコートを間違えて着ておこられた。他の会もこの時期は一期一会のものばかりだからしょうがない。ワイン飲む量をセーブしながらあと少しだけ乗り切りたい。

“研究に退屈している人はラボに必要ない”(平成27年3月21日)

 サッカー日本代表のハリルホジッチ新監督が決まって選手が発表された。“競争”のモチベーションを高める選手選考で今後がとても楽しみ。アギーレ前監督は残念だったけど「国を代表する選手に選ばれてそのことに退屈している選手は必要ない」という彼の言葉は胸に刺さった。「研究に退屈している人はラボに必要ない」と言い換えると、研究者はいつも自分の研究にエキサイトしていないとダメということ。自戒も込めていつまでも何かに興奮し続ける気持ちを持ち続けたいと思う。

教授からもひとこと(平成27年~29年)

 AHR2016に参加した。主なトピックは
 (1)AHRの進化:5億年前に無脊椎動物と脊椎動物に枝分かれしたときに現在のAhRの形・機能が出来たらしい。無顎魚(jawless fish)はちょうどその中間でAhRの進化について多くの示唆を与えてくれる。AhR1, AhR2は遺伝子の重複進化で生まれたようだ。AhRは特に眼の発生・発達に重要らしいからAhRが視覚による劇的な進化の源?あとARNTはAhRと別々に進化したらしい。
 (2)マウスとヒトのAhRの違い:ヒトAhRではマウスAhR381番目のアラニンがバリンに変わっている。違いはその1つだけ。ちょうとPAS-Bドメインのリガンド結合部位。この変異がxenobioticsに対する感受性を弱めたらしい。その理由は“たき火”文化の誕生?たき火の煙は多くのPAHを生むからそれに耐性である必要があった?ちなみに料理はヒトの脳を発達させた要因の1つらしい。
 (3)AhRと核タンパク質のシトルリン化:AhRが核内でむちゃくちゃ多くのタンパク質のシトルリン化を促すデータが出てた。Th17・リウマチとかに関係ある?KLFG, CSP-1分子もAhRで動く。
 (4)AhRリガンドの多様性と多彩な作用:その分子メカニズムは不明。リガンドの量、親和性、代謝、AhR非依存性の作用等々の差が生む?Good ligandsとBad ligands。NaturalかArtificialか、EndogenousかExogenousか。リガンドはいろいろ。
 (5)強力なAhRリガンド:FICZとI3C (胃酸で変化してICZ)。食事摂取でAhR量の低下による機能をレスキューできるデータがいっぱい出ていた。FICZ-AhR-CYP1A1はループを作っている。新しい概日時計になる?FICZは紫外線照射による皮膚産生だけでなく他の臓器でも作られているらしい。生理的リガンドは生体内での量や動態はまったくわかってない。
 (6)AhRと脂質代謝:TCDDで肝臓に脂肪が溜る。脂質代謝の変化。鉄も過剰になる。REVERBαの抑制が関係する。TCDDとRorαは同じ遺伝子発現プロファイルになって親戚同士。Th17を増やすのと同じ?
 (7)AhRと腸内細菌:TCDD or TCDFは腸管フローラを変化させる。腸内細菌もAhRに影響をうける。たぶんIL-22とか抗菌ペプチドを介したindirectな変化。
 (8)AhRとNFκβ:AhRはRelBと相互作用する。
 (9)AhRリガンドがTh17とTreg誘導能を持つものに分かれる進化的理由:全く不明。AhR-ILC3-IL22-antimicrobial peptideの系はほぼ確立。
 (10)AhRとstemness:AhRはOCT4やNanogと結合して邪魔する?一般的にAhRの活性化でES細胞の分化が進んでStemnessはなくなる。概日時計の発生と関連?TGF-βは阻害? TCDDはSIRT1を阻害。老化を促進?
 (11)ARNTisoforms:ARNT1, 2, 3とあるらしい。しかもリン酸化もされる。研究はこれから。
 (12)AhRについてのBASIC QUESTIONS:
  1)Why do we have an AhR?
  2)Where it is important in our body?
  3)When it is activated?
 (13)AhRとミトコンドリア:これは結構大事な気がする。調べたい。AhRシグナルの可視化実験とか重要。
 (14)遺伝子と環境:TCDDのシグナル経路分子欠損マウスへの投与で見られるフェノタイプとか。
 (15)IDO1/2、TDO:内因性のリガンド形成にかなり大事。常に調べておくべき酵素群。LPSやPGE2, IFN-gはIDO1の発現上昇させる。それでkynurenineが上がる。IL10 receptorも腸管上皮細胞で上がる。
 (16)皮膚バリアとAhR:コールタールはAhRリガンド。AHR活性化は皮膚バリア機能強化する。腸管と同じ感じ。フィラグリンも上げるらしい。AhR欠損マウスでは黄色ブドウ球菌増える。
 (17)老化とAhR:年寄りマウスの皮膚のAhR発現量は若者マウスに比べてかなり圧倒的に高い。P16とか誘導する?(うろ覚え)。CTLA4も誘導するらしい。その結果、免疫系も老化、疲弊、低反応になる。
 (18)ニューロンとAhR:AhR活性化で樹状突起が劇的に減る。ミエリン構造も変化する。
 (19)AhR研究の今後:次から次へと新しい発見がある。
 なので従来のcanonical pathwayにこだわらない。常に新しいアイデアを探す姿勢が(当たり前だけど)AhR研究でも大事。優秀な研究者は現状をちゃんと認識した上でその分野に常に新しいアイデアを求めている。Dr. Birnbaumはそのような研究(論文)を“New Pearls”と表現してた。

 自分の哲学と斬新で刺激的なアイデア、そしてそれを裏づけするデータがちゃんとあればこの世界(研究者)は、とても自由で新鮮でかつ楽しい。それがないとほぼ死ぬ(笑)。オシム前日本代表監督(ハリル新監督も?)はサッカーでそれをやろうとしたのだからやっぱりすごい。世の中にはアレルギーで困っている人がまだ山のようにいる。とにかく、みんなで山梨から世界中の度肝をぬかせられるように頑張ろう。