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掲載日:2019.10.25 お知らせ

「食事の時間がアレルギーに強く影響する」 ―食事の時間を見直すことによりアレルギー症状の改善が期待―

研究のポイント                  

 花粉症や喘息、蕁麻疹などのアレルギー疾患で、「普段の生活を見直して症状を良くする」という考えは、アレルゲンを回避すること以外はありませんでした。ましてや「食事摂取のタイミング」がアレルギー症状に影響するとは誰も想像していませんでした。

 本学の医学部免疫学講座 中尾篤人教授、中村勇規准教授らは食事摂取のタイミングがアレルギー反応の強さに大きく影響することをマウス実験によって明らかにしました(日本アレルギー学会英文誌に10月14日にオンライン掲載)。

この結果から、アレルギー患者を適切に診療し症状をコントロールするためには、食事摂取のタイミング(食事の時間や夜食の有無など)を念頭に置く必要があることが示唆されました。薬を増やさなくても、食事の時間を変えるだけで、ひどかったアレルギー症状を良く出来るかもしれません(添付のまとめ図)。

 この成果は日常生活(食事)への介入によってアレルギー疾患を予防・治療するという新しい戦略を提唱するとともに食事の思いがけない側面(アレルギー調整作用)も提示しました。

 

研究の背景(体内時計はアレルギー反応を調節している)

 花粉症や喘息、蕁麻疹などのアレルギー疾患は、ある特定の時間帯(特に夜間から明け方)に症状が出現しやすいという特徴があります。例えば花粉症では、朝方にくしゃみ、鼻水などがおこりやすく「モーニングアタック」と呼ばれています。

 中尾教授、中村准教授らは、以前の研究で、生理活動の24時間性のリズム(睡眠や覚醒、ホルモン分泌など)を司る体内時計がこのようなアレルギー症状の時間による変化に関係していることを発見しました。アレルギー反応の大部分はマスト細胞と呼ばれる免疫細胞が、スギなどのアレルギー物質(アレルゲン)に反応してヒスタミンなどのくしゃみや鼻水、咳、蕁麻疹などを誘発する化学物質を放出することによって起こります。体内時計は、マスト細胞のアレルゲンに対する感受性を、活動期は鈍く休息期は敏感にしていて、その結果、休息期にアレルゲンに曝露されるとマスト細胞が放出するヒスタミン(アレルギーを引き起こす物質)の量が活動期よりはるかに高くなり、くしゃみや鼻水、咳、蕁麻疹などの反応も休息期(ヒトでは夜間、夜行性のマウスでは日中)に強くなると考えられました(図1)。

 

今回の研究成果(食事のタイミングがアレルギー反応の強さに影響する)

 体内時計は、不眠やストレス、運動、食事の時間によって影響を受けることが知られています。例えば、夜食など不規則な時間帯での食事摂取は体内時計のリズムを乱し肥満などを誘発させやすいことがわかっています。

 アレルギー反応と体内時計との密接な関係から、中尾教授らは、不規則な食事のタイミングは、肥満だけでなくアレルギーにも影響するのではないか、と考えました

そこで、この仮説を確かめるために、マウスを以下の3群に分けて実験を行ないました(図2)。

1)餌を24時間自由に与える(マウスは夜行性なので主に夜間に餌を摂取するが昼間にも少し摂取する)。
2)餌を活動期(夜行性マウスでは夜間)の4時間だけ与える。
3)餌を休息期(夜行性マウスでは日中)に4時間だけ与える。

 

 これらの食事条件でマウスを2週間飼育したあと、ヒトにおける蕁麻疹反応のモデル(PCA反応)を、それぞれの群で、日中(午前10時)と夜間(午後10時)に引き起こしてみました。なおマウスが摂取した餌の量は3群間でほとんど変わらず体重変化も3群間でほぼ同じでした。

 PCA反応の強さは、1)と2)の群では、休息期に強く活動期に弱い反応を示しました。これは以前に中尾教授らが見出した結果と同じです。一方、興味深いことに3)の群では、休息期も活動期も強い反応が見られました。またマスト細胞の体内時計のリズムを調べると3)の群では1)2)の群が示す本来見られる(正常な)リズムとは異なるリズムが刻まれていました。

 これらの結果から、不規則な食事のタイミングは、体内時計のリズムを変えてしまい、その結果、規則的な食事のタイミングをしている時とはアレルギー反応の出方を変えることがわかりました。具体的には、本来アレルギー症状が出にくい活動期でも、症状が強くなってしまいました。

 

研究の意義

 本結果から食事摂取のタイミングは、アレルギー反応の強さや出やすい時間帯を変化させる因子の1つであることが明らかになりました。これは従来のアレルギー診療においては全く考慮されていなかったことです。したがって、花粉症や喘息、蕁麻疹などのアレルギー患者を適切に診療し症状をコントロールするためには、食事摂取のタイミング(食事の時間や夜食の有無など)を念頭に置く必要があることが示唆されました。食事の時間を変えるだけひどかったアレルギー症状を良くすることが出来るかもしれません。

 本研究成果は「食事摂取のタイミング」という患者さんの日常生活に介入することでアレルギー症状の改善や治療薬の減量、発作の予防を目指すというアレルギー診療における新しいアイデアを提示します。また何時に食事を取るかということがアレルギー反応に影響するという「食事」の思いがけない側面も提示しました。

 中尾教授らは、食事のタイミングを見直すだけでアレルギー症状が緩和できる患者が全体の2割程度はいるのではないかと臨床的な経験から推測しています。現在、患者さんの日常生活情報を臨床に活かす試みは“Apple Watch”に代表される健康デバイスやビッグデータと相性が良く将来発展が期待される医療分野の1つです。中尾教授らは、甲府市や企業と協力して、食事のタイミングとアレルギー(花粉症など)症状との関係を、スマフォアプリなどを用いて、解析する研究を計画中です。今後このような研究を更に進めることでアレルギー診療の新しい大きな進歩が期待されます。

 

発表論文:

Nakamura Y, Ishimaru K, Nakao A.

Time-restricted feeding in rest phase alters IgE/mast cell-mediated allergic reaction in mice.

Allergology International. 2019 Oct 14. pii: S1323-8930(19)30160-1.

 

画像

 

 

 

問合せ先

<研究について>
国立大学法人山梨大学大学医学部免疫学講座 中尾

TEL: 055-273-9542 e-mail:anakao@yamanashi.ac.jp 

<広報について>

国立大学法人山梨大学総務部総務課広報企画室

TEL: 055-220-8005  e-mail:koho@yamanashi.ac.jp

 


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