LPL(リポ蛋白リパーゼ)
リポ蛋白リパーゼとは、中性脂肪を分解する脂質分解酵素です。中性脂肪は、体内では脂肪細胞の中に溜め込まれていますが、血中ではリポ蛋白(脂質と蛋白質の複合体)の中に詰め込まれ、全身に運ばれています。このLPLという酵素は、主に筋肉や脂肪組織で作られて、血管壁の表面に存在し、そこで血中を流れてくるリポ蛋白(内の中性脂肪)を分解します。その分解によって、リポ蛋白の組成を変え、リポ蛋白の粒を小さくするために、リポ蛋白代謝に関わっていることが知られていますが、中性脂肪を分解することによって脂肪酸が生成されて、この脂肪酸が筋肉や脂肪組織に取り込まれてエネルギー源として消費、もしくは貯蔵されることから、エネルギー代謝にも関係していると考えられています。
LPLと高脂血症、動脈硬化
私たちは遺伝子改変技術により、ウサギ体内のLPLの活性を増加させ、高脂血症や動脈硬化の予防、治療ができるかどうかを調べました。その結果、LPLの直接の基質である中性脂肪の血中レベルが著しく減少しただけでなく、リポ蛋白代謝を促進したために、コレステロールも大きく減少しました。それによって動脈硬化の発生を抑制することができました (J Biol Chem 276:40071-9, 2001) 。
LPLと肥満、インスリン抵抗性
また、このウサギモデルを使って、エネルギー代謝へのLPLの作用についても調べました。すると、驚くことに、LPLの活性が高くなったウサギでは、体脂肪が大きく減少していることがわかりました。さらに脂肪細胞ひとつひとつを走査型電子顕微鏡で観察しますと、脂肪細胞が小さくなっていることがわかりました。このウサギに西洋風の脂質を多く含んだ食事を与えたところ、ふつうのウサギでは体重が増えて、2型糖尿病の初期症状とも言えるインスリン抵抗性(インスリンが効きにくくなってしまうこと)が起こってしまいましたが、LPLの活性が高いウサギでは体重もそれほど増えず、インスリン抵抗性も起こりませんでした (Diabetologia (2004) 47:1202-9, J Biol Chem 2004 279:7521-9, Metabolism 54:132-8, 2005)。
脂肪細胞
(走査型電子顕微鏡写真)
- Tgウサギ