VEGF

VEGF[血管内皮細胞増殖因子]

VEGFはおよそ20年前に発見され、当初はVEGF(vascular endothelial growth factor)だけでなく、血管透過性作用を有する因子(vascular permeability factor, VPF)とも呼ばれていました。VEGFは低酸素刺激により発現が誘導され、血管新生を起こすことがよく知られており、発生初期の血管形成のみならず、病的な血管新生(がんなどの)にも関与しています。その一方で、VEGFは、血管腫や貧血、リウマチ関節炎や動脈硬化といった疾患との関連性についても報告があり、それらについては、疾患発症との因果関係は明らかにされていませんでした。


VEGFトランスジェニックウサギ

肝臓特異的にVEGFを過剰発現させることにより
 (1)肝臓局所における血管形成に異常が見られるかどうかを明らかにしうる
 (2)肝臓から分泌されることにより、血中のVEGFが上昇すれば、動脈硬化をはじめとする血
    管病変の形成に対する影響が観察しうる
という目的で、肝臓特異的なVEGFトランスジェニック(Tg)ウサギを開発しました。
また、導入するVEGFはヒトのものを用いることで、ヒトVEGFの作用を明らかにしうるだけでなく、内因性のウサギVEGFと区別できるために、導入遺伝子の影響を明確に判断できると考えました。またVEGFサブタイプの中で、生体内に最も多く存在し平均的な特徴を持つとされるVEGF165を用いました。
その結果、Tgウサギの肝臓においてヒトVEGF165が過剰発現されていることが確認されました。しかしながら、ヒトVEGFを検出できるELISAキットによって血中のVEGF濃度を計測したところ、驚くことに、Tgウサギ血中のヒトVEGF濃度は、キットの検出閾値以下であり、ほとんど血中には放出されていないことが明らかになりました。免疫染色の結果、肝臓にVEGFが存在していることが確認できたため、肝臓の細胞外基質に結合しているために血中に放出できないものと結論付けました。このウサギの肝臓と脾臓は、正常ウサギの2倍程度に増加しており、肝臓内では類洞の拡張や血管腫の形成が見られました。さらにTgウサギでは、赤血球や血小板の減少が観察され、骨髄の実質部の増大と、脾臓での髄外造血が見られ、走査型電子顕微鏡による観察によって赤血球の変形も見られました。したがって、Tgウサギにおいて、溶血性貧血が起こっていることが明らかになりました。著明な血管腫と貧血の症状は、ヒトの小児で見られるKasabach-Merritt症候群と非常に酷似しているために、このVEGF Tgウサギは、Kasabach-Merritt症候群のモデル動物として活用しうることが明らかになり、また、血管新生の抑制剤の開発においても有用であることが示唆されました (Kitajima et al. Laboratory Investigation 85:1517-1527, 2005) 。