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2011年10月「プライマリー助産ケア講座」が開講します

小林 康江

成育看護学 (2011年9月)

「看護の『看』という字は、『手をあてて、目で見る。良く見る』ということです」。これは私が聖路加看護大学に入学した最初の授業で教わったことです。大学の4年生に進級するとき、助産学の選考希望調査がありました。当時の私は将来どの分野で働くのか迷っておりました。しかし、希望調査提出まで残りわずかという時、母性看護学実習の指導担当をして下さっていた大川章子先生が「希望調査を出しておけば」とアドバイスをして下さいました。その大川先生の一言で希望調査表を提出し、私は助産学について学んできました。助産実習では、10例の分娩介助が課せられています。私が学生時代、先生方は3交代のシフトを組んで学生の実習指導にあたって下さっていました。このような指導体制のもと、本当に偶然ですが、私はほとんどの分娩介助実習を大川先生に指導して頂きました。あのときの大川先生の一言が無ければ、今の私は助産師という職業に就いていないと思います。大川先生は、私の人生に大きな影響を与えてくださいましたが、残念ながら私が助産師として3年目の4月、30代という若さで病気のために急逝されました。
 今、産婦人科医の不足、出産施設の集約化が社会的問題となっています。そしてお産をする場所が無い妊婦さんたちを「お産難民」と称して、マスコミ等でも大きく取り上げています。このような現状で、助産師の役割が大きくクローズアップされています。助産師は、保健師看護師助産師法3条に、「助産師とは厚生労働大臣の免許を受けて、助産又は妊婦、じょく婦若しくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子」と規定されています。日本では分娩介助・臍帯切断という助産行為を行うことができるのは、医師と助産師だけです。そして、助産師は、自身の責任において正常な経過の妊娠分娩に関しての助産行為を独立して行う「助産所(助産院)」を開業できます。つまり、本来助産師は、一次医療(プライマリーケア)の中で妊娠・分娩・産褥・子育てと継続ケアを提供する役割を担い、そしてそれは法的にも示されているのです。そしてこの考え方の基に、助産師教育がなされているのです。
 就業助産師数は、年々増加しています。日本の出生場所別出生数を見ると、半数が二・三次医療を担う病院、残り半数が一次医療施設の診療所です。そして、助産師の就業場所をみると病院が6~7割、診療所は2割程度と病院に偏在傾向にあります。山梨県の場合、年間出生件数は7000件をやや下回る程度で、出生場所は病院と診療所とで半数ずつです。しかしながら助産師の就業場所は病院9割に対し、診療所が1割で、助産師の偏在が国内平均より進んでいる状況です。
 なぜ助産師の病院への偏在が生じるのでしょうか。助産学生は、卒業時と実臨床で求められる能力の違いが大きいと感じているのだと思います。そして卒後に今まで以上に勉強しなければならないと考えているのだと思います。そのため診療所に比べて病院の方が、卒後教育体制が整っていると考え、新卒助産師は病院に就職します。そして、助産師はそのまま病院で働き続けるため、結果的に偏在することになるのです。しかし、多くの病院では、助産師に特化した卒後教育のプログラムは十分といえず、自律した妊婦管理から分娩管理、産後の母子の管理能力を向上させる教育がなされていない実情があるのではないかと考えられます。私は助産師教育と卒後教育が同様の考え方で進められれば、助産師はプライマリーケアの場で、継続的に妊産褥婦・新生児のケアにあたる本来の役割を果たすことができると考えます。
 山梨大学医学部看護学科に、2011年10月「プライマリー助産ケア講座」が開講します。これは県内の産婦人科医である中村雄二先生が周産期医療の中における助産師教育に期待し、寄附講座として開講することになりました。そこで私たち助産師教育に携わる教員は、「助産師は、プライマリーケアの場で、妊娠初期から産後の母子の健診までを縦断的・継続的にケアを提供する」という考え方を基盤に、助産師教育と卒後教育を連動させた教育のプログラムを作り上げる事に取り組んでいきます。まずは、新卒助産師が重きを置く、卒後教育の体制を周産期医療の中で整えることで、助産師の偏在を解決する糸口が見えるのではないかと考えています。

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