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第41回日本眼薬理学会参加報告

濱田 健太郎さん

医学部医学科 2017年入学

2021年11月6日-7日 金沢文化ホール

山梨大学 医学部 薬理学講座 濱田健太郎

今回はコロナウイルスの感染の落ち着きもあり久しぶりに現地で学会参加をさせていただいた。大変大きな会場での発表でとても緊張したが有意義なフィードバックも得られた上に他の研究者の方と交流できたこともよかった。

会場である金沢までの交通費や宿泊等の雑費も含めてサポートしていただいたライフサイエンスコースおよび山梨大学薬理学講座の小泉先生を始めとして皆様に支えられてこのような素晴らしい機会を得られたことにこの場を持って感謝を伝えさせていただければと思う。以下に今回の発表の抄録を示す。

 

P2Y1 受容体作動薬の新規緑内障治療薬候補としての可能性
○濱田健太郎 1)、篠崎 陽一 1,2)、行方 和彦 3)、大野 伸彦 4,5)、原田 高幸 3)、柏木 賢治 6)、小泉 修一 1,2)

 

1)山梨大学大学院総合研究部医学域薬理、2)山梨大・GLIA センター、3)東京都医学研・視覚病態、 4)生理研・超微形態、5)自治医大・医・解剖、6)山梨大学 眼科

 

【目的】緑内障は本邦における中途失明原因第一位の疾患であり、網膜神経節細胞の変性を特徴とする。眼 圧上昇が緑内障の最大の危険因子の1つであるため、眼圧降下薬による治療が第一選択である。現行の眼圧降 下薬は、薬剤耐性、単剤での効果の低さ、副作用などの理由で、十分な治療効果が得られない事例がある。そ のため、眼圧を降下させる新たな分子標的が求められている。本発表では、P2Y1 受容体の眼圧降下作用につ いて報告する。

 

【方法】または【対象】P2Y1 受容体作動薬として MRS2365 を用いた。リバウンド式眼圧計 (TonoLab) を 用いて、C57BL/6J(野生型 /WT)および P2Y1 受容体欠損 (P2Y1KO) マウスに対する眼圧降下作用を評価 した。眼組織における P2Y1 受容体の発現は免疫組織化学染色により解析した。P2Y1 受容体の機能的な発現 は急性摘出眼球組織標本の細胞内 Ca2+ イメージング([Ca2+]i)により評価した。

 

【結果】MRS2365 を点眼したところ、WT マウスでは眼圧を有意に下げたが、P2Y1KO マウスでは下げな かった。MRS2365 の眼圧降下作用は濃度依存的であり、最大効果は 300 nM で得られた。時間依存性を検討 したところ、MRS2365 の作用は一過性でありまた投与後 1.5 時間で最大効果が得られた。次に P2Y1 受容体 の分布を検討したところ、毛様体の無色素上皮並びに繊維柱体に発現する事が明らかとなった。それぞれの部 位でアクアポリン 4(AQP4)及び内皮型 NOS(eNOS) と共局在していた。

 

【考按】AQP4 と eNOS いずれも P2Y1 受容体シグナル経路の下流に位置して眼房水ダイナミクスや眼圧制 御に関わる事が明らかとなった。

 

【結論】P2Y1 受容体は毛様体突起や線維柱帯に発現して眼房水排出、産生の両方を制御する事によって眼圧 を下げる事が明らかとなった。また、P2Y1 受容体が異なる部位で異なる作用を示すメカニズムとして、下流 シグナルの違いが起因する事を発見した。以上より、P2Y1 受容体は眼圧降下作用を有する新規緑内障治療薬 候補であると考えられた。

 


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