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第86回日本薬理学会年会

林 英明さん

医学部医学科 2008年入学

2013年3月21-23日 福岡

「やっぱり、サイエンスには興味ないわ。」

学会会場のトイレにて、製薬会社社員の2人による雑談が聞こえた。思わず笑ってしまった。つい先日、それと正反対の言葉を基礎研究者の方から聞いたばかりだったから。

科学と医薬、この2つの関係は切り離せるものではない。しかし、それぞれの立場において、それぞれの考え方があるのは当然である。医療においては、基礎研究者、臨床研究者、医療従事者(医師など)という3者の立場が存在するという印象を私は持っている。医学部では医師となる知識を身につけるが、その他の2つについてはほとんど触れられない。しかし、自分が知らない考え方を知るのはとても勉強になる。今回、学会に参加した目的の1つは、臨床研究者それも製薬会社というバリバリの資本主義の方たちは、基礎研究のどのような点に着目するのかを知ることであった。

近年、医薬品開発はパラダイムシフトを迎えたと言われている。低分子医薬から抗体医薬へ新薬開発の舞台は移っているらしい(注1)。1901年にノーベル賞を受賞したベーリングらの血清療法に始まった抗体医薬、約100年たって臨床現場へと登場してきた。スピードの速い現代では、次へと進むのにそれほど時間はかからないだろう。核酸医薬?再生医療?次の主役は何になるのだろう。

今回参加した薬理学会では、製薬会社によるシンポジウムが企画されていた。そのため、探索研究など創薬研究を行っている研究者が多く参加していたと思う(よく知らない)。現在どのような分野に注目しているのか、何処かで聞く機会があれば良いなと考えながら参加した。

学会当日、中枢神経系の基礎研究の発表の場において、製薬会社の方がどの様な質問をするのかを私は注意して聞いた。また、製薬会社の方の発表を主に聞いて回った。発表の内容は、疾患における標的分子の同定や、モデル動物の開発などであった。戦略を示すという趣旨の発表が多く、臨床に応用可能な技術開発などの内容はなかった。それは当然なのかもしれない

私のポスター発表は1日目であった。大まかな内容は、①ある疾患において、あるタンパク質が増加する。②それをin vivoでノックダウンすると、③症状が抑制されるというものである。10人の方に質問された。9人は、内容の確認や方法についての質問であった。1人だけ内容に興味を示されたようだった。引用論文3つを見た後、私達の仮説を聞いて、面白いと頷いていた。

今回の1番の収穫は、医薬について考える機会を得たことであった。貴重な機会を与えて頂いた小泉教授や薬理学講座の先生方、リエゾンアカデミーに感謝いたします。

【参考URL】 (注1)ミクスOnline(2013/3アクセス)


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