この度は群馬県伊香保温泉にて行なわれた「東日本研究医養成コンソーシアム 第14回夏のリトリート」に参加させていただきました。「チューブリンアセチル化による細胞質性微小管の安定性制御」というテーマで口頭発表させていただきました。
研究成果を発表することは初めてだったため緊張しましたが、自分の研究を他の学生や先生方に紹介することができて嬉しかったです。研究に熱意を持った学生の皆様から刺激を受け、非常に有意義な時間でした。
今回の発表に際してご指導、ご支援いただきました小田教授、久保先生はじめ解剖学講座構造生物学教室、ライフサイエンスコース事務局の皆様に感謝申し上げます。
以下は発表の抄録です。
真核生物の鞭毛、繊毛を構成する主要な蛋白質、a、bチューブリンは、アセチル化、グルタミン酸化、グリシル化、メチル化、リン酸化など様々な翻訳後修飾を受ける。チューブリン翻訳後修飾は、鞭毛の運動性や構築に関わっていると考えられているが、まだ多くのことが分かっていない。鞭毛の異常は、繊毛病と総称される様々な疾患を引き起こす。したがって、鞭毛の機能を理解することは基礎医学的に重要である。本研究は、クラミドモナスという二本の鞭毛を持つ単細胞緑藻類を用いて、チューブリンアセチル化の重要性を追究するものである。アセチル化は、微小管の安定性に寄与していると考えられているが、例えば、微小管の動的不安定性を具体的にどのようにして調節しているのか、など謎が残されている。本研究では、aチューブリンのアセチル化を担う修飾酵素、a-tubulin acetyltransferase 1 (aTAT1)をコードする遺伝子をノックアウトしたatat1(ex3)株、およびaTAT1に3xHAが付加された産物を発現するaTAT1-3xHA株を作製することに初めて成功した。細胞体および単離した鞭毛の生化学的な解析を行ったところ、atat1(ex3)は、アセチル化チューブリンを完全に欠損していた。この結果は、aTAT1が単独でチューブリンのアセチル化を担っていることを示唆する。aTAT1-3xHA株の免疫染色を行ったところ、aTAT1-3xHAは鞭毛の先端付近に局在していることが分かった。アセチル化は鞭毛先端部で特に盛んに行なわれていると考えられる。また、atat1(ex3)は、鞭毛の長さはおおむね正常であるが、興味深いことに、細胞質性微小管の本数が増え、長くなっていることが分かった。この結果は、チューブリンアセチル化がとりわけ細胞質性微小管の安定性を調節していることを示唆するものである。