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日本血液学会第80回学術集会に参加して

梅谷 徳彦さん

医学部医学科 2012年入学

2018年10月12-14日 大阪国際会議場

 10月12日~14日に大阪で開催された日本血液学会第80回学術集会に参加してまいりました。私は将来の進路として血液学領域の臨床と研究に興味があります。そのため、本学術集会に参加できたことは幸運でした。血液学では基礎研究と臨床の距離がとても近く、大変興味深い学問です。例えば、造血器腫瘍 (白血病やMDSなど) において染色体異常は予後を左右する重要な因子ですが、これは高校の生物学で勉強するような知識で理解できます。この距離の近さに私は魅力を感じています。

 現在の血液学においては分子標的薬 (化合物 or 抗体医薬) の使用が劇的に増加しています。本学術集会でも治療のターゲットととなるさまざまな分子 (タンパク) が取り上げられていました。こういった分子の中では慢性骨髄性白血病 (CML) の BCR-ABL がとくに有名ですが、多発性骨髄腫 (SLAMF7, CD38) や急性リンパ性白血病 (CD22) を標的とした治療薬も登場しています。これらの薬剤は従来の治療法に比べて効果が高いですが、適正使用のために分子生物学の知識が必要になります。基礎研究の発展とともに治療法も開発されるということです。

 また、この数年で急速に実用化が進んだものとして遺伝子改変技術を用いた治療が挙げられます。その中心は CAR-T cell でしょう。これは造血器腫瘍患者のT細胞を遺伝子改変して殺腫瘍効果を付与するというものです。難治性ALLに対してその効果が報告されており、日本でも治験が始まっています。今後は他の造血器腫瘍に対しても開発が進んでいくでしょう。これとは別に、サラセミアや血友病といった非腫瘍性血液疾患に対しても遺伝子治療が開発されています。こちらは患者の造血幹細胞に正常遺伝子を人工的に導入するというもので、The American Society of Hematology Special Lecture で語られました。

 今回の血液学会学術集会に参加することで血液学への見識を深めることができ、同時に基礎研究の重要性を改めて実感しました。基礎研究と臨床のいずれにも関与できるような医師を目指したいと思います。


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