【発表の要旨】
この度、精神神経医学講座の先生方のご指導のもと、第37回日本生物学的精神医学会にて「うつ病患者におけるアルツハイマー病関連バイオマーカーの検討-ECTの血漿Aβへの影響-」という演題で口演発表をさせていただきました。
高齢化が急速に進行している我が国において認知症患者の増加は大きな問題となっており、最近では、認知症の危険因子あるいは前駆状態としてうつ病が注目されています。また、動物実験より、うつ病と認知症に共通する病態生理と考えられている神経栄養因子シグナル伝達不全や神経新生の減少を、抗うつ薬投与や脳の電気刺激などの抗うつ療法が改善させることが知られています。以上のことから、有効な抗うつ療法を行うことによって、認知症への進展を防止することが期待されています。本研究では、アルツハイマー病治療に早期介入するための手がかりを得ることを目的に、うつ病患者におけるアルツハイマー病関連バイオマーカーの治療前後の変化や、各種臨床尺度との相関を検討しました。
【学会発表を通じて】
学会に参加すること自体が今回初めてだったうえ、初めての口演発表を行うということで慣れない作業に戸惑いながらの準備でしたが、先生方の親切なご指導のおかげでなんとか発表までこぎつけることができました。具体的には、研究内容を分かりやすい視覚情報にまとめて発表資料を作成し、その資料をもとに制限時間内に効率的に説明するための原稿を作成し、何度もリハーサルを行いました。また、発表後の質疑応答についても質問を予想して回答を用意しておきました。その成果があり、落ち着いて発表および質疑応答を行えたと思います。
しかし、臨床内容に関する質問に対しては十分に回答できなかったという反省点もあります。これは、本研究が実験室内で確認可能なデータのみを考慮した研究にすぎなかったことに起因します。この経験は、実際の臨床現場で扱われる広範な要素を考慮して、複雑な関連性を紐解こうとしなければ、医学における研究とはいえないのではないか、という疑問を私に投げかけました。
【今後の抱負】
今回の経験を通じて、研究の計画・実験・考察・発表という一連のプロセスを学び、さらに、実験結果をさまざまな角度から統計をとることから見えてくる仮説に気づくこともできました。今後は別の角度からもアルツハイマー病を研究していきたいと思っております。
最後になりますが、学会での口演発表という貴重な機会をくださいました本橋伸高教授、日頃から丁寧なご指導をしてくださいます布村准教授、実験手技や統計手法についてご教授いただきました玉置先生、いつも優しく対応してくださる精神神経医学講座の先生方、スタッフの方々にこの場を借りて感謝申し上げます。ありがとうございました。